セレス問題

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セレス問題とは、小惑星(1)Ceresの日本語表記が、伝統的なラテン語読みルールに従った「ケレス」ではなく、フランス語読みやスペイン語読みの「セレス」と表記されている問題である。

ラテン語読みルール[編集]

17世紀のガリレオ以降、望遠鏡で惑星などが詳しく観測され、月面の地形や新たに発見された衛星などの多くは、当時の神聖ローマ帝国の公用語であるラテン語で命名された。このため、日本語でも、多くの天体名がラテン語読みやその翻訳名で呼ばれるようになった[1]

Ceresはローマ神話の女神で、ギリシャ神話ではないため、もともとラテン語である。このため、ラテン語読みで「ケレス」である。英語では「シリーズ」、イタリア語では「チェレス」、ドイツ語では「ツェレス」、フランス語やスペイン語では「セレス」、中国語では「穀神星」である。英語読みの「シリーズ」という呼び方がされていないのに、なぜフランス語読みの「セレス」という呼び方がされているかについては、かつてフランスに留学した天文学者がフランス語読みをしていたからではないかと推測される。

1801年に発見されたCeresにちなみ、1803年に発見された58番元素にはCeriumと命名され、1909年に東京化学会により、その和名が「セリウム」とされた。

表記の変遷[編集]

年月 表記 書籍名 執筆者 備考
1928 ケレス 「天文年鑑」昭和3年版P.54 天文同好会 新光社
1948.4.15 ケーレス 「天体の話」P.125 野尻抱影 講談社
1968 ケレス 「天文年鑑」1968年版 冨田弘一郎 誠文堂新光社
1977.7.18 ケレス 「天文学」P.26 萩原雄祐 岩波全書
1978.2.15 セレス 「天文・宇宙の辞典」P.335 竹内瑞夫 恒星社
1978.9.25 セレス 「月と小惑星」P.168 古在由秀, 武田弘 恒星社
1980 セレス 「天文年鑑」1980年版 P.94 神田泰 誠文堂新光社
1984 ケレス 「天文年鑑」1984年版 P.92 浦田武 誠文堂新光社
1986.7 ケレス 「天文学辞典」P.195 鈴木敬信 地人書館
1990 ケレス 「天文年鑑」1990年版 P.121 渡辺和郎 誠文堂新光社
2025 ケレス 「天文年鑑」2025年版 P.170 相馬充 誠文堂新光社
2025 ケレス 「藤井旭の天文年鑑」2025年版 相馬充監修 誠文堂新光社

脚注[編集]

関連項目[編集]