シュレーディンガー演算子

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シュレーディンガー演算子とは量子力学系の主要な性質を要約する数学的対象である。厳密には、ヒルベルト空間の一部に対する線形変換である。シュレーディンガー方程式の様々な解とその相互関係は、対応するシュレーディンガー演算子の徹底的な解析から導出される。名前はオーストリアの物理学者のエルヴィン・シュレーディンガーにちなむ。

説明[編集]

静電ポテンシャルV中の荷電粒子に対する時間に依存しない非相対的シュレーディンガー方程式は、次のように表される。

12Δψ+Vψ=Eψ

この方程式の左辺は、すべての解ψのベクトル空間に対する線形変換として解釈することができる。

H(ψ)=12Δψ+Vψ

ψn変数の二次積分可能な複素値関数類のヒルベルト空間=L2(n,)において、まず探される。ヒルベルト空間は、位相ベクトル空間の一例である。位相ベクトル空間間の線形写像の研究は作用素論と呼ばれる。

Hの数学的定義における重要な側面の一つは、その定義域である。定義域によって、Hはヒルベルト空間における随伴作用素として理解される場合とされない場合がある。後者は、Eの解を系の全エネルギーの物理的に可能な値として理解するための要件である。

意味[編集]

シュレーディンガー演算子は、その基本形においての密な部分ベクトル空間D上の随伴作用素Hである。少なくともコンパクトな支持集合を持つ2階微分可能な関数を含めたものであり、Hはそれらの関数に対してラプラス演算子と、与えられた実関数Vとの積の和として表すことができる。

関数Vは連続である必要も有界である必要もないが、局所的に積分可能でなければならない。実際にはVの値が強く正であっても問題ないが、Vが負のなる範囲については条件を課す必要がある。

解釈[編集]

量子力学のシュレーディンガー形式において、系の物理的性質はヒルベルト空間上の随伴作用素に対応する。ラプラス演算子は荷電粒子の運動エネルギーを表し、Vとの積は位置エネルギーを表す。

Hは作用素として考察することで、シュレーディンガー方程式は固有値問題となる。そして、Hによってそれ自身の定数倍に写像されるベクトルψを導出する。これに対応する定数、すなわち固有値は、前述のとおりの系の総エネルギーである。

無制限の演算子[編集]

シュレーディンガー演算子は、ヒルベルト空間の位相に関して連続的な線形写像ではない。しかし、そのグラフが、

{(x,Hx)|x}

ヒルベルト空間とそれ自身の直積×の閉部分集合である。

Hが自己加算的であるという条件は、単にヒルベルト空間の内積に対する対称性という条件よりもはるかに厳しい。

ϕ,ψD:ϕ,Hψ=Hϕ,ψ

随伴作用素H*Hと全く同じ定義域を持たなければならない。Hの定義域が大きいほど、H*の定義域は小さくなる。したがって、技術的なむずかしさは、適切な定義域Dを正確に定義することである。物理的にこれはシュレーディンガー方程式の適切な境界条件を選択することに相当する。

もっとも単純なシュレーディンガー演算子は負のラプラス演算子である。これは、ほとんど至る所で2階微分可能であり、かつ1次および2次の偏導関数が再び2次積分可能である関数系の集合に随伴される。

他のシュレーディンガー演算子の中には、既知の演算子の摂動として考えることで随伴的であることが示すことができるものがある。Tをヒルベルト空間における随伴作用素とする。演算子STのグラフから元のヒルベルト空間へのコンパクト演算子とみなせる場合、Tに関して相対的にコンパクトであると呼ばれる。この場合、T+STの定義域上で再び随伴作用素となる。

シュレーディンガー半群[編集]

シュレーディンガー演算子は、単一パラメータの演算子半群の正制元である。この半群に要素は、虚数時間におけるいわゆる時間依存シュレーディンガー方程式の解を与える。このような半群はシュレーディンガー半群と呼ばれる。

拡張[編集]

シュレーディンガー演算子は、量子力学系のエネルギーを何らかの形のシュレーディンガー方程式で表す、ほかのより一般的なな線形変換に対しても用いられる。例えばスピンを含むシュレーディンガー方程式も存在する。磁気シュレーディンガー演算子には、ベクトルポテンシャルが登場する追加項が含まれている。状態空間nは、より一般的なリーマン多様体と、それに対応するラプラス演算子に置き換えることが可能である。