SBDドーントレス
SBD ドーントレス(SBD Dauntless)は、第二次世界大戦においてアメリカ海軍およびアメリカ海兵隊]]が運用した急降下爆撃機である。その堅牢な構造と高い信頼性から、太平洋戦域における重要な海戦で多大な戦果を挙げた。
開発[編集]
SBDドーントレスの開発は、ノースロップ社が開発していたBTシリーズに端を発する。BTシリーズはアメリカ海軍の新型艦上爆撃機として開発が進められていたが、ノースロップ社がダグラス・エアクラフトの傘下に入ったことで、設計はエド・ハイネマンの指揮の下、ダグラス社に移管された。
再設計された機体は、より近代的な装備と性能を持つことを目指し、試作機XBT-2として開発が進められた。しかし、海軍の要求変更や開発中の様々な問題に直面し、開発は難航した。最終的に、改良が重ねられた機体はSBD(Scout Bomber Douglas:ダグラス偵察爆撃機)の制式名称を与えられ、愛称として「ドーントレス」(Dauntless:不敵な、勇敢な)と命名された。
初飛行は1938年5月29日に行われた。初期量産型であるSBD-1はアメリカ海兵隊に、SBD-2はアメリカ海軍にそれぞれ配備された。
特徴[編集]
SBDドーントレスは、その頑丈な構造と優れた急降下爆撃能力で知られる。主要な特徴は以下の通りである。
- 急降下爆撃能力: 機体下部に装備された特徴的なパーフォレーション(穴あき)式のダイブブレーキは、急降下時の速度を効果的に抑制し、正確な爆弾投下を可能にした。これにより、高い命中精度を実現した。
- 搭載能力: 最大1,000ポンド(約454kg)の爆弾を搭載することができ、主翼下にはさらに小型爆弾を搭載することも可能であった。
- 防御武装: 機首には2挺の12.7mm機関銃、後部座席には旋回式の7.62mm連装機関銃が装備され、対空防御能力も有していた。
- 信頼性: シンプルで堅牢な設計により、整備が容易で信頼性が高かった。これは、苛酷な戦場環境において非常に重要な要素であった。
- 航続距離: 艦上機としては十分な航続距離を有し、偵察任務にも投入された。
戦歴[編集]
SBDドーントレスは、第二次世界大戦の太平洋戦争初期において、アメリカ海軍の主力艦上爆撃機として活躍した。特に以下の海戦でその真価を発揮した。
- 珊瑚海海戦 (1942年5月): 日本海軍の空母「祥鳳」を撃沈するなど、重要な役割を果たした。これは史上初の空母同士の海戦であった。
- ミッドウェー海戦 (1942年6月): この海戦において、SBDドーントレスは日本海軍の主力空母「赤城」、「加賀」、「蒼龍」、「飛龍」を壊滅させ、戦局をアメリカ有利に転換させる決定的な役割を果たした。その高い命中精度と果敢な攻撃は、歴史に残る戦果として評価されている。
- ガダルカナル島の戦い (1942年8月 - 1943年2月): ガダルカナル島を巡る激戦においても、SBDドーントレスはヘンダーソン飛行場を拠点に、日本軍の艦船や地上目標への攻撃を続けた。
その後、より新型のSB2C ヘルダイバーが配備されると、SBDドーントレスは第一線から徐々に退いたが、後方任務や訓練機として終戦まで使用された。一部の機体はメキシコ海軍にも供与され、1959年まで運用された。
各型[編集]
- SBD-1: 初期生産型。アメリカ海兵隊に配備。
- SBD-2: SBD-1の改良型。燃料容量が増加し、自己防漏燃料タンクを装備。アメリカ海軍に配備。
- SBD-3: 防御装甲の追加、燃料タンクの自己防漏化、武装強化(機首12.7mm機関銃×2、後部7.62mm連装機関銃)など、実戦型としての改良が施された。生産数も最も多い。
- SBD-4: 無線機、電気系統の改良型。
- SBD-5: エンジンをR-1820-60(1,200馬力)に換装し、性能向上を図った。最も多く生産された型の一つ。
- SBD-6: 最終生産型。エンジンをR-1820-66(1,350馬力)に換装。
豆知識[編集]
SBDドーントレスは、その登場時すでに旧式化が進んでいると見なされていたにもかかわらず、第二次世界大戦の緒戦において驚異的な戦果を挙げた。これは、優秀なパイロットと入念な訓練、そして何よりもその頑丈な機体と信頼性の高さの賜物である。特にミッドウェー海戦での活躍は、アメリカ海軍の勝利に不可欠な要素であったと言える。
関連項目[編集]
参考書籍[編集]
- 『世界の傑作機 No.9 SBD ドーントレス』文林堂、1988年。
- 『第二次世界大戦軍用機事典』光人社、2001年。