飲酒運転
飲酒運転(いんしゅうんてん)とは、飲酒などで体内にアルコールを保有した状態で運転する行為である。アルコールは人間の認知・判断機能に影響を与えるため、その危険性から飲酒した状態で運転することは法律で禁じられている。飲酒運転は自動車以外にも自転車や公道上での乗馬も取り締まりの対象となる。
概要[編集]
体内に取り込まれたアルコールは中枢神経系に作用し、認知機能や判断力が低下するのみならず、集中力や運動機能の低下も引き起こす。また、そのような状態でありながら気が大きくなり、「運転しても大丈夫」などという自制心の低下も生じるとされている。さらに、飲酒直後の運転はもってのほかであるが、飲酒量によっては翌日までアルコールが体内に残る場合もある。中には「一晩寝たから大丈夫」という人もいるが、実際には就寝中の方がアルコールの分解速度が低下するため、むしろ逆効果である。
JAFが実施したユーザテスト(シミュレーターによる)によると、飲酒前に比べ、飲酒直後の判断・操作ミスが4倍近く、翌朝になっても3倍近く増えており、視野も一点に集中しやすくなるなど多方面にわたって悪影響を及ぼしていることが判明している[1]。
日本では飲酒運転における凄惨な事故と共に行政処分や刑事処分の厳罰化が進んでいるほか、懲戒解雇や免職などの社会的制裁を受けることが多くなっている。また、従業員が飲酒運転で事故を起こした場合、その使用者に対して使用者責任を問われることも多く、たとえ業務時間外の私用中であっても追及されることもあるなど、世間の飲酒運転に対する目も厳しくなっている。
日本における規制[編集]
日本においては道路交通法により取締りの対象となっている。取締りの基準と罰則は以下の通り。
- 酒酔い運転
正常な歩行や受け答えが出来なかったり、呂律が回らないなど酩酊状態にある状態。
- 5年以下の懲役または100万円以下の罰金/35点(免許取消し+欠格期間3年)
- 酒気帯び運転(0.25mg以上)
呼気1Lに含まれるアルコール量が0.25mg以上の場合。
- 3年以下の懲役または50万円以下の罰金/25点(免許取消し+欠格期間2年)
- 酒気帯び運転(0.25mg未満)
呼気1Lに含まれるアルコール量が0.15mg以上0.25mg未満の場合。
- 3年以下の懲役または50万円以下の罰金/13点(免許停止90日)
飲酒運転は交通反則通告制度の対象外となり、反則金ではなく原則として罰金刑の対象となる。
このほか、警察官による呼気検査を拒んだ場合も飲酒検知拒否として処罰の対象(3ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金)[2]となる。また、飲酒運転の虞のあるものに対して車両を提供する車両提供罪や酒類を提供する酒類提供罪、飲酒運転の車に同乗する同乗罪が「飲酒運転周辺三罪」として処罰の対象となっている。これらの罰則は飲酒運転したものと同等の処分が下されるため、たとえ自分が飲酒していなくとも飲酒運転の車に同乗すれば免許取り消しなどの処分が下されることになる。
日本においては1960年に道路交通法が制定された際に初めて飲酒運転が規制され、呼気1Lあたりに含まれるアルコール量が0.25mg以上かつ酩酊状態の場合のみ取締りの対象であった。また、罰則も刑事罰が6ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金であり、行政罰は免許停止となっていた。その後、法改正が進むたびに厳罰化が進み、1969年には酩酊状態でなくとも酒気帯び運転として検挙が可能になったほか、1978年には酒酔い運転が免許取り消しに、1987年には刑事罰も引き上げられ、酒酔い運転が2年以下の懲役または10万円以下の罰金に、酒気帯び運転は3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金となった。
1987年の改正後、しばらく飲酒運転に係る罰則の改定はなされなかったものの、1999年に発生した東名高速飲酒運転追突事故を契機に厳罰化を求める世論が高まり、2002年には酒気帯び運転の基準値引き下げや行政罰・刑事罰の引き上げなど多岐にわたって厳罰化がなされることとなった。この改正により酒気帯び運転は呼気1Lに含まれるアルコール量が0.15mg以上で検挙対象となった。
その後、2006年に福岡県で発生した福岡海の中道大橋飲酒運転事故により飲酒運転のさらなる厳罰化が求められるようになり、飲酒運転に係る刑事罰が引き上げられたほか、新たに飲酒運転する可能性のあるものに対して車両を提供する「車両提供」、酒類を提供する「酒類提供」、飲酒運転の車に同乗する「同乗」の三行為が飲酒運転周辺三罪として処分されるようになった。なお、酒類提供に関しては1970年の改正時からすでに禁止行為とされていたが罰則がなかったものである。
2021年に千葉県で発生した八街児童5人死傷事故を受け、翌年に道路交通法施行規則が改正された。飲酒運転に関する厳罰化ではないものの、事業用自動車を持たない事業所のうち、5台以上の社有車を持つ事業所に対して出庫前と出庫後のアルコール検査及び安全運転管理者の選任が義務付けられた。
事故を起こした場合、危険運転致死傷罪にて負傷の場合15年以下の懲役、死亡させた場合は1年以上の有期刑となる。さらに事故を起こした際にアルコールの影響があったことを隠そうとした場合は12年以下の懲役に処される。(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱)
なお、道路交通法とは別に都道府県条例で飲酒運転の根絶を目指す条例を制定することがある。その中でも福岡県については前述の事故の影響もあり、罰則付きの条例を制定している[3]。
その他、余談[編集]
馬は軽車両であるため、酒に酔った状態で公道で乗馬する行為が飲酒運転に該当するのは明白である。しかし、馬が飲酒した場合の法規制については定めがない。一般的には整備不良が該当するのではないかとささやかれているが、実際のところは不明である。なんにせよ危険な行為であることに変わりはないため、馬のためにもお勧めしない行為である。
飲酒して公道を歩行する行為もその程度によっては道路交通法違反となる場合がある。道路交通法第76条(禁止行為)第4項第1号において「道路において、酒に酔つて交通の妨害となるような程度にふらつくこと。」と定められており、同法120条第1項第10号により5万円以下の罰金に処すと規定されている。これは酒に酔って往来のある車道に飛び出たり、歩道をふらついて他の歩行者の妨げになったりする場合などが該当する。そのため、飲酒して歩行することが直ちに道路交通法違反となることはないが、お酒はほどほどに。
また、自動車学校によっては飲酒による運転への影響を体験する講習を開催していることがある。とある教習所では「飲酒状態ゴーグル」というものを装着し、酩酊状態を疑似体験することで運転への支障を体験することができ[4]、また別の教習所では実際に飲酒し、教習所内を走行する体験会を開催している例もある[5][6]。また、実車ではなく運転シミュレーターを使って、飲酒前と飲酒後の運転時の違いを体験する場合もある。具体的には、60km/hで走って、交差点から突然車が飛び出す様子を見てから、ブレーキを踏むまでの時間を測定している。
飲酒検知拒否について、たとえ飲酒をしていなくとも検知を拒否した場合は逮捕・立件される可能性があるとされている[7]。
自転車の飲酒運転の禁止については、飲酒後に自転車を別の場所に動かすとき、自転車に乗らないで、人間の手の力で自転車を押して移動する。
外部リンク[編集]
関連項目[編集]
- 酒
- 運転代行
- 自動車
- 奈良漬け - 飲酒運転の釈明に良く使用される漬物。奈良漬けにはアルコールが3.5%含まれており[注 1]、相当量を一度に摂取すれば基準値に達して酒気帯び運転が成立する可能性がある[注 2]。
脚注[編集]
- ↑ https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/drunk-driving/drinking-influence
- ↑ https://www.police.pref.chiba.jp/kotsusomuka/traffic-safety_revision-enforce01.html
- ↑ https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/insyuuntenbokumetsu-jourei.html
- ↑ https://www.da-tochigi.jp/Plan/drunkdriving.html
- ↑ https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tys/2223279?display=1
- ↑ https://news.ntv.co.jp/n/fbs/category/life/fs31b2cd17bf9248f489d5a50bb7910538
- ↑ https://xn--3kqs9fnyhbwgcspiqer37d.com/column/inshu-kenchi-taiho/