量子力学的トンネル効果
量子力学的トンネル効果(りょうしりきがくてきとんねるこうか、英quantum mechanical tunneling)は物体が障壁を通過または克服するために十分なエネルギーを持たないときに、古典力学では通過できないはずの潜在的エネルギー障壁を通過する量子力学的現象である。
概要[編集]
トンネル効果は物質の波動性から生じる現象である。理論的にはハイゼンベルクの不確定性原理で説明できる[1]。そして、トンネル効果はアルファ崩壊、トンネルダイオード、ツェナーダイオード、TFET、走査型トンネル顕微鏡、フラッシュメモリ、熱伝道デバイスなど、多くの自然現象や技術応用に重要な役割を果たしている。
半導体デバイスでは、電子のトンネル効果を利用したものがある。 走査型トンネル顕微鏡はトンネル効果を利用して、物質の表面を原子レベルで観察できる。 フラッシュメモリは絶縁膜のエネルギー障壁を、量子力学的トンネル効果によってすりぬけてデータの記憶と消去を行う。
そのほか量子力学的トンネル効果の発見は超伝導量子コンピュータ研究開発に繋がっている。量子コンピュータ、量子暗号、量子センサーなどの技術開発に応用されつつある。
ノーベル物理学賞[編集]
2025年のノーベル物理学賞は、ジョン・クラーク(米カリフォルニア大学名誉教授)、ミシェル・デボレ(カリフォルニア大学教授)、ジョン・マルティニス(カリフォルニア大学名誉教授)の3名に授与すると発表された[2]。受賞理由は「電気回路における巨視的な量子力学的トンネル効果とエネルギー量子化の発見」であった[3]。マクロな物理系が量子的に振舞うことが可能であることを、トンネル現象やエネルギーの量子化の実現を実験的に実証したことによる。巨視的量子トンネルを最初に発見したのはリチャード・ウェッブであったが、長生きしていれば、授賞した可能性がある。
参考文献・注[編集]
- ↑ 量子力学とトンネル効果東北大学
- ↑ 2025年ノーベル物理学賞日本物理学会、2025年10月7日
- ↑ ノーベル物理学賞に米3氏日本経済新聞、2025年10月7日