石尾芳久

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石尾 芳久(いしお よしひさ、1924年4月27日 - 1992年12月28日)は、法学者。関西大学法学部教授[1]。専攻は日本法制史[2]

経歴[編集]

鳥取市生まれ。1945年高知高等学校卒業。1948年京都大学法学部卒業。1949年関西大学法学部助手、1952年専任講師。1953年京都大学大学院(旧制)退学。1954年関西大学法学部助教授、1960年教授[3]。1967年「海南政典・海南律例の研究」で法学博士(京都大学)[4]。1974年関西大学部落問題研究室員(1978年まで)。1984年日本法制史学会理事[3]。1991年の比較法史学会の設立に尽力[5]

猪熊兼繁の門下[6]マックス・ウェーバーの理論を方法論として日本法史を研究した[5][7]。もともとは古代法を研究していたが、次いで近世法、最後に中世法を研究した[8]。『被差別部落起源論』(木鐸社、1975年)で、被差別部落の成立が中世自治の担い手に対する弾圧と深い関係があったと主張した。同書をきっかけに被差別部落を扱った著書を複数刊行し、被差別部落の成立と一向一揆に密接な関係があると主張した[9]。部落の起源を一向一揆に求める船越昌、石尾芳久、寺木伸明らの学説は「一向一揆起源説」(一向一揆起源論)と呼ばれる。その後の研究により、実証根拠を失ったとされるが、部落と一向一揆の関係自体は重要な論点であるとされる[10][11]

主な著書に『日本古代法の研究』(法律文化社、1959年)、『日本古代の天皇制と太政官制度』(有斐閣、1962年)、『海南政典・海南律例の研究』(法律文化社、1967年)、『マックス・ウェーバーの法社会学』(法律文化社、1971年)、『日本近世法の研究』(木鐸社、1975年)、『被差別部落起源論』(木鐸社、1975年)、『大政奉還と討幕の密勅』(三一書房、1979年)、『一向一揆と部落』(三一新書、1983年)などがある。

著書[編集]

単著[編集]

  • 『法学概説(上・下)』(三和書房、1955-1956年)
  • 『法学概説』(三和書房、1956年、改訂版1957年、改訂3版1958年)
  • 『日本古代法の研究』(法律文化社、1959年、増補版1960年)
  • 『日本古代の天皇制と太政官制度』(有斐閣、1962年)
  • 『日本古代法史』(塙書房[塙選書]、1964年)
  • 『海南政典・海南律例の研究』(法律文化社[学術選書]、1967年)
  • 『日本古代天皇制の研究』(法律文化社[学術選書]、1969年)
  • 『マックス・ウェーバーの法社会学』(法律文化社[学術選書]、1971年)
  • 『日本近世法の研究』(木鐸社、1975年)
  • 『被差別部落起源論』(木鐸社、1975年、増補版1978年)
  • 『古代の法と大王と神話』(木鐸社、1977年)
  • 『大政奉還と討幕の密勅』(三一書房、1979年)
  • 『民衆運動からみた中世の非人』(三一書房、1981年)
  • 『差別戒名と部落の起源』(京都松柏社、1982年)
  • 『一向一揆と部落』(三一書房[三一新書]、1983年)
  • 『続 一向一揆と部落』(三一書房[三一新書]、1985年)
  • 『部落起源論』(三一書房[三一新書]、1986年)
  • 『明治維新と部落解放令』(三一書房[三一新書]、1988年)
  • 『法の歴史と封建制論争』(三一書房、1989年)
  • 『人権思想の源流と部落の歴史』(三一書房[三一新書]、1990年)

共著[編集]

  • 『ウェーバー 支配の社会学』(向井守、筒井清忠、居安正共著、有斐閣[有斐閣新書]、1979年)
  • 『吉本隆明を<読む>』(埴谷雄高、樺山紘一、谷川雁、鮎川信夫、鶴見俊輔、桶谷秀昭、橋川文三、奥野健男、野村精一、磯谷孝、柄谷行人、森山公夫、笠原芳光、荒井献、久米博、川上春雄共著、現代企画室[叢書・知の分水嶺1980's]、1980年)

編著[編集]

  • 『海南政典の研究』(編著、関西大学東西学術研究所[關西大學東西學術研究所研究叢刊]、1969年)
  • 『日本近代法120講』(日本近代法制史研究会編、井ケ田良治、山中永之佑共同編集責任、法律文化社、1992年)

訳書[編集]

  • マックス・ウェーバー『法社会学――経済と法』(法律文化社、1957年、第4刷1966年、改訂版1968年)
  • マックス・ウェーバー『国家社会学――合理的国家と現代の政党および議会の社会学』(法律文化社、1960年、3刷1968年、改訂版1992年)
  • R.H.P.メイソン『日本の第一回総選挙』(武田敏朗共訳、法律文化社、1973年)

出典[編集]

  1. 20世紀日本人名事典 「石尾芳久」の解説 コトバンク
  2. 吉本隆明編『戦後日本思想大系 5 国家の思想』筑摩書房、1969年、執筆者略歴
  3. a b 石尾芳久教授略歴並びに著作目録」『關西大學法學論集』第35巻第3・4・5合併号、1985年12月
  4. 海南政典・海南律例の研究 CiNii Research
  5. a b 池田敏雄「序」『関西大学法学会誌』第39号、1994年2月
  6. 林紀昭「法史的方法について新風」『書評』第103号PDF、関西大学生活協同組合・組織部『書評』編集委員会、1993年12月
  7. 奥村郁三「思い出の中の石尾先生」『関西大学法学会誌』第39号、1994年2月
  8. 吉田徳夫「石尾先生の思い出」『関西大学法学会誌』第39号、1994年2月
  9. 金原淳「一九七五年 被差別部落論の理論的地平」『書評』第103号PDF、関西大学生活協同組合・組織部『書評』編集委員会、1993年12月
  10. 第12回全国部落史研究交流会 (上) 部落解放・人権研究所、2006年10月13日
  11. 芳滝智仁、武田達城編著『親鸞――尊厳・平等の念仏』阿吽社、2023年

関連文献[編集]

  • 上杉聰寺木伸明、中尾健次著、解放新聞社編『部落史を読みなおす――部落の起源と中世被差別民の系譜』(解放出版社、1992年)
  • 市川訓敏「石尾芳久先生を偲ぶ」『関西大学通信』第215号PDF(関西大学広報委員会、1993年2月1日)
  • 柄谷行人坂口安吾中上健次』(太田出版[批評空間叢書]、1996年/講談社[講談社文芸文庫]、2006年)
  • 同和教育振興会編『講座 同朋運動――西本願寺教団と部落差別問題 第三巻』(明石書店、2016年)
  • 印藤和寛『石尾芳久の学問と思想――(付)部落差別起源論の新展開』(遊文舎、2020年、再改訂版2023年)

外部リンク[編集]