百物語 (手塚治虫の漫画)

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百物語』(ひゃくものがたり)は、ゲーテの『ファウスト』を題材にした手塚治虫の漫画。

概要[編集]

ゲーテの『ファウスト』を題材とした漫画化を手塚治虫は生涯で3回行っており、『百物語』は2度めの漫画化となる。1回目は1950年執筆の『ファウスト』。3回目は1987年から連載され絶筆に終わった『ネオ・ファウスト』である。

本作では、舞台を日本戦国時代としている。主人公の一塁半里が不破臼人と変化するのだが、「一塁」は野球の「ファースト」、不和ふわ臼人うすとで、どちらも「ファウスト」と読めるようになっている。

本作の執筆時期の手塚は、いわゆる「冬の時代」であるが、虫プロの社長を辞めた後であり、本作の連載1か月前に「マンガに専念する宣言」を出している。このため、時間的、精神的な余裕があったのか、本作と同様に「主人公の願いをかなえる」系の漫画である『ばるぼら』(1973年)よりはどす黒かったり、陰々滅々としたストーリーにはなっていない。

1984年には本作を原作とした劇場用アニメーション映画の製作発表も行われたが、実現には至らなかった。

掲載[編集]

週刊少年ジャンプ』(集英社)にて、以下のように掲載された。

  1. 放浪編 1971年7月26日号
  2. 恐山編 1971年8月23日号
  3. 黄金編 1971年9月27日号
  4. 下剋上編 1971年10月25日号

あらすじ[編集]

放浪編[編集]

一塁いちるい半里はんりは勘定方を務めるしがない下級武士であったが、上役の汚職に巻き込まれて詰め腹を切らさせられることになった。

助かりたい一心で一塁は屏風の鬼に向かい、助けてくれたら魂を渡すと話していたら、切腹の場面で猫に助けられる。その猫、実は悪魔で名をスダマと言う。スダマは一塁の魂を買い、代わりに3つの願いをかなえるという。一塁は3つの願いとして、もう一度人生をやり直すこと、天下一の美女を得ること、一国一城の主になることを所望した。

スダマに連れられ、一塁は妖術を使う老婆の元に連れて行かれ、老婆からある妙薬を飲まされる。すると一塁は姿形、声までも変わり、見違えるような美青年になった。一塁は不破臼人と名を変えた。ある巻き物の中に描かれていた玉藻前という美女を見た不破は、玉藻前が欲しいとスダマに話す。玉藻前は狐の精であり、みちのくの果ての恐山に住んでいるというので、二人は旅立つことになった。

途中、一塁の家があり、不破は娘の真砂に逢いたいと言い出した。スダマの計らいで不破は真砂と逢うことができたが、真砂は実の父とは知らずに不破に恋心を抱いてしまう。不破と真砂とが海岸で逢瀬しているところへ、真砂を想う武士が現れ、不破と争いになる。真砂の前で不破は武士を切ってしまった。

恐山編[編集]

恐山に到着した不破は、玉藻前と逢い、心を奪われてしまう。玉藻前に精気を全て奪われるそうになったところをスダマに助けられたが、不破は7年間も眠ることになった。

心を入れ替えた不破は、その後3年間を山の上で修業に費やした。ある時、紛れ込んだ夜盗を追い払ったことが縁となって浪岡家に仕官することになった。浪岡家は強大な南部家にいつ潰されるかも分からない小国であった。スダマは心配するのだが、不破は自分の力で小さな浪岡家を大きくするのだ言う。

黄金編[編集]

浪岡家の殿様は全くの無能であった。浪岡家を強くするには、資金が必要と考えた不破は、山の地下に金の鉱脈があることをスダマに教えられる。山に住む安達太良と戦い、金鉱を手に入れた。

ここで発せられた妖気を感じ取った玉藻前が、浪岡家へとやってくる。美人コンテストが開催されることになったが、不破は細工をして玉藻前を殿様から奪い、玉藻前を斬り捨てる。これに逆上した殿様によって、不破は牢へと入れてしまった。不破はスダマの助けを借りて脱走する。

下剋上編[編集]

不破は浪岡家の家老と結託して無能な殿様を追放し、ついに一国一城の主となった。これまでのこともあり、不破はスダマを天下一の女だと欲するようになる。

しかし、スダマが不破のものになると、不破の願いが全てかなったことになり、不破の魂は奪われてしまう。そのことをスダマは嫌がるのだが、不破はもう満足だと語る。

そんなとき、隣国に逃げていた殿様が隣国の力を借りて浪岡家に攻めてきた。不破は破れ、切腹することになったが、新たな人生に満足していた不破は今度は何も言い残さずに腹を切った。不破の魂はスダマが受け取ったが、スダマは魂を解き放してしまうのだった。

ラジオ[編集]

NHK-FMの『FMステレオ劇画シリーズ』として1979年1月5日に「百物語1」が、同年1月6日に「百物語2」が放送されている。各回15分。

キャスト
  • 脚色 - 高田純
  • 効果 - 山本浩
  • 技術 - 佐藤重雄
  • 演出 - 大谷時夫
出演

外部リンク[編集]