東方靈異伝 〜 Highly Responsive to Prayers.
ジャンル | ブロックくずし |
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対応機種 | PC-9800シリーズ |
開発元 | ZUN |
発売元 | Amusement Makers |
人数 | 1人 |
メディア | |
発売日 | 1997年8月15日 (C52)[※ 2] |
その他 | 同人ゲーム |
『東方靈異伝 〜 Highly Responsive to Prayers.』(とうほうれいいでん-)とは、ZUNによって制作されたブロック崩しゲームであり、東方Projectの第1弾にあたる作品である。公称ジャンルは「一画面アクションシューティング(パズル要素あり)」。
タイトル後半の英語部分については、サウンドトラック『幺樂団の歴史5 〜 Akyu's Untouched Score vol.5』などでは記事名のような表記となっているが[※ 3]、ゲームのタイトル画面では「The Highly Responsive to Prayers」と冠詞がついた表記になっている[※ 4]。
本項では、以降は『靈異伝』と称することとする。その他の本項で使用されている東方Project関連の略称については、東方Project#凡例を参照。
概要[編集]
東京電機大学理工学部の文化祭である第20回『鳩山祭』(1996年11月)で展示発表された。頒布されたのはコミックマーケット52(1997年8月)より。ZUNが在学中の第21回以降の『鳩山祭』で配布が行われたほか、2002年9月19日まで「Amusement Makers」で通販を受け付けていた。
現在の弾幕系シューティングゲームとはスタイルが大きく違い、固定画面のブロック崩しゲームとなっている。選択可能な自機は「博麗靈夢(巫女)」のみ。途中で「魔界ルート」と「地獄ルート」に分岐し、両方とも全20ステージ。ルートとコンティニューの有無でエンディングの内容が変わり、バッドエンドも含めて4種類存在している。
なおこの作品は元々、プログラムの練習がてら作った習作のひとつで、ブロック崩しが作りやすそうだった[1]ので1995年に制作したもの[2]であり、鳩山祭には出展したものの頒布するつもりは無かったとの事である[3]。本作以前に制作した習作ゲームの中にはタイトー製ゲームの登場人物を使用したゲームがあり、ZUNにとってゲーム用BGMとしては作曲第一号となった小夜ちゃん(『奇々怪界』に登場する巫女の主人公)のテーマ曲に付けた曲名「東方怪奇談」[4]が、本作を含む『東方○○○』という形式のゲームタイトルと一連の『東方Project』の名称の元になった[5]。
あらすじ[編集]
変な事に巻き込まれる体質を持っている博麗神社の巫女・博麗靈夢は、「人間でない何か」に神社を破壊され、怒っていた。靈夢は「人間でない何か」の棲む世界との接点(ゲート)へ、気まぐれで入っていったのであった。ここの魔に対して有効なのは、博麗神社最大の秘宝「陰陽玉」だけだと後になって気付いたが、楽天家な靈夢は何とかなるだろうと思っていた。
システム[編集]
以降の東方Projectとジャンルが異なる為、本作のシステムは独特の物になっている。システムとしては以下のようなものがある。
- 自機は「博麗 靈夢」のみ。武器選択もない。
- 難易度は後の作品とほぼ同じスタイルで、「Easy」「Normal」「Hard」「Lunatic」の四種類。最低難易度では通常面で定期的に出る弾がない。最高難易度ではパネルをめくった時に大量の返し弾がある。
- 通常面(1-4面、6-9面、11-14面、16-19面)は、画面上のパネルを、陰陽玉を通過させる事で全てめくるとクリアとなる。
- 陰陽玉に当たるか、弾や敵の攻撃にあたると残機を失う。
- タイムカウントがあり、残り時間が0になると、上部から弾幕が降り注ぐ中でプレイすることになる。残機を失うかステージクリアするとカウントはリセットされる。
- 陰陽玉を地面に落とさずパネルをめくる事で、獲得する得点が増加していく。最高25600点。
- パネルをめくったとき、ランダムでアイテムが落ちてくる。ポイントアイテムは取り漏らさずに連続して取得することで、獲得する得点が1000点から65530点まで増加する。
- 各5面ごと(5面、10面、15面、20面)はボス面となっており、ボスが登場する。ボスには陰陽玉を当てることでダメージを与えられる。残機0の時のみ霊撃でもダメージを与えられる。
- Zキーを押す事でお札を投げる事が可能。お札は、陰陽玉を跳ね返したり、敵の白い弾を消す事が出来る。
- Xキーを押す事でお払いが出来る。お払いは、陰陽玉を跳ね返したり、敵弾を弾いたりすることができる。陰陽玉は引き付けた方がよく飛ぶ。
- 左右キーのどちらかを押しながらXキーを押すと、押した方向にスライディングする。移動が速く、自機の当たり判定も小さくなり、陰陽玉を跳ね返せる。弾は跳ね返せない。
- スライディング中にキーを押すと「靈連撃」に繋がる。Zキーを押すと「お札8連乱れ撃ち」。進行方向キーと共にXキーでスライディングに近い性能の「跳び蹴り」。反対方向キーと共にXキーを押すとお払いに近い性能の「昇天蹴」。方向キーを押さずにXキーだけ押すと少し前進しながらの「前進昇天蹴」。「昇天蹴」と「前進昇天蹴」は、更に連続して「靈連撃」に繋げることが可能。なお、「昇天蹴」は『東方萃夢想 〜 Immaterial and Missing Power.』で博麗霊夢が使用する必殺技に同名の物がある。
- 左右両方押し+Zキー、あるいはX+Zを2回押すと霊撃(ボム)を撃てる。一定時間無敵になり、通常面では多くのパネルをめくれる。ボス面では、危機回避以外に、残機0の時に使用するとボスにダメージを与える効果もある。
- EXTENDは、400000点でエブリエクステンド。
登場人物[編集]
「東方Projectの登場人物」、「幻想郷」も参照
ボスキャラクターの名前と二つ名が確認できるのは、エンディング画面のみ。
博麗 靈夢[編集]
詳細は「博麗霊夢」を参照
博麗神社の巫女。最強の武器「陰陽玉」を使用するが、よく振り回される。現在、神社は彼女一人でもっている。
SinGyoku[編集]
名前 | SinGyoku |
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二つ名 | Gatekeeper |
出演作品 | 『靈』5面ボス |
二つ名を直訳すると「門番」。太陰大極図のような姿。女性の姿と、烏帽子をかぶった男性の姿に変わる。
YuugenMagan[編集]
名前 | YuugenMagan |
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二つ名 | EvilEyes |
出演作品 | 『靈』魔界ルート10面ボス |
二つ名を直訳すると「邪眼」、「魔眼」。宙に浮く5つの巨大な眼と、中央の人型の影からなる。
Elis[編集]
名前 | Elis |
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二つ名 | Innocent Devil |
出演作品 | 『靈』魔界ルート15面ボス |
二つ名を直訳すると「無邪気な悪魔」。先端が星形の白い杖を左手に持っている。コウモリのような紫色の翼が生えており、またコウモリに変身できる。
Sariel[編集]
名前 | Sariel |
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二つ名 | Angel of Death |
出演作品 | 『靈』魔界ルート20面(最終面)ボス |
二つ名を直訳すると「死の天使」。背に天使のような翼が6枚ある。装飾の付いた先端が球状の杖を左手に持っている。
魅魔[編集]
名前 | 魅魔 |
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読み | みま |
種族 | 悪霊 |
テーマ曲 |
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二つ名 |
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出演作品 |
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悪霊。延々と「生きて(?)きた」存在で[6]、姿を現さなくとも物凄い邪気を振り撒いており、玄爺曰くその念や力は強大[7]。「永遠に休める世界」からやって来たと自称する[8]。『怪綺談』のボムカットイン時以外は足が無く[9]、人魂の尾のようになっている[10]。
『靈異伝』ではボスキャラクターの一人「Mima」として登場しており、『封魔録』4面登場時点で既に博麗靈夢と面識がある。『封魔録』では、靈魔殿という場所で完全復活のための力を蓄えると共に、神社を襲わせて陰陽玉に博麗の力が蓄えられるように仕向けていた。博麗神社を恨んでいて[11]、博麗の力で満たされた陰陽玉を奪って全人類に復讐しようと企んでいた[12]が、『封魔録』5面時点で既に復讐心を失っていた。『夢時空』時点では長く悪霊である内に邪気が抜け、靈夢をからかうのが日課になっている。博麗神社の神(祟り神)的存在となっているが、性格は人間より人間的[11]。人間界を「私のもの」としている[6][13]。『怪綺談』本編・Extraのエンディングでは神になろうかと考えていた。月が出ていると力が湧くという[14]。
霧雨魔理沙からは「魅魔様」と慕われている[11]。
PC-98版では『東方幻想郷』以外の全作品に登場する。Windows版作品でも、PC-98版の頃と同様に博麗神社の近辺に居る[15]が、直接の登場は無い。『香霖堂』単行本第24話「神社の御利益」では、博麗神社に祀られた神に関する話題で、以前に悪霊が博麗神社に取り憑いていた話が出ている。また、2007年に発売された上海アリス幻樂団制作の音楽CD『幺樂団の歴史4 〜 Akyu's Untouched Score vol.4』のジャケット画にて、約9年ぶりに魅魔が描かれた。
Kikuri[編集]
名前 | Kikuri |
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二つ名 | Hellish Moon |
出演作品 | 『靈』地獄ルート15面ボス |
二つ名を直訳すると「地獄の月」。月のような球体から女性の上半身が生えたような姿。
Konngara[編集]
名前 | Konngara |
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二つ名 | Astral Knight |
出演作品 | 『靈』地獄ルート20面(最終面)ボス |
二つ名を直訳すると「星の騎士」。額に1本の角があり、剣を振るう。外側が黒く内が赤い盃を右手に持っている。
ステージ[編集]
魔界ルート | 地獄ルート | |
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5面ボス | SinGyoku | |
10面ボス | YuugenMagan | Mima |
15面ボス | Elis | Kikuri |
20面ボス | Sariel | Konngara |
備考[編集]
- 魔界ルートと地獄ルート
- 5面をクリアした後、魔界ルートと地獄ルートの選択肢が現れ、どちらかを選んで進む。
曲目リスト[編集]
- A Sacred Lot - タイトル画面テーマ
- 風の神社 - 未使用曲
- 永遠の巫女 - 1〜4面、地獄16〜19面テーマ
- The Positive and Negative - 5面テーマ(SinGyoku)
- Highly Responsive to Prayers - 魔界6〜9面テーマ
- 東方怪奇談 - 地獄6〜9面テーマ
- 天使伝説 - 10面テーマ(YuugenMagan、Mima)
- Oriental Magician - 魔界11〜14面テーマ
- 破邪の小太刀 - 地獄11〜14面テーマ
- 魔鏡 - 15面テーマ(Elis、Kikuri)
- The Legend of KAGE - 魔界16〜19面テーマ
- いざ、倒れ逝くその時まで - 魔界最終面テーマ1(Sariel)
- 死なばもろとも - 魔界最終面テーマ2(Sariel)
- 星幽剣士 - 地獄最終面テーマ(Konngara)
- アイリス - エンディングテーマ
PC-9800シリーズ用の東方Project最終作品となった第5弾の『東方怪綺談 〜 Mystic Square.』は、それまでの4作品の曲を収録しているが、本作使用曲は「風の神社」を除く全97曲はアレンジ版となっており、一部の曲は曲名も異なる。また音楽CD『幺樂団の歴史5 〜 Akyu's Untouched Score vol.5』には、『東方怪綺談 〜 Mystic Square.』に収録されたアレンジ版にさらに手を加えたものが収録されている。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ↑ 展示時は2HDフロッピーディスク2枚組。
- ↑ コミックマーケット52以前にも、1996年鳩山祭で頒布されている。
- ↑ 以下のサイトに掲載されている画像を参照。“『博麗幻想書譜』2007年12月11日「大晦日頒布物」”. 2008年7月7日確認。
- ↑ 以下のサイトに掲載されている画像を参照。“4gamer.net - 「東方」制作者インタビュー「シューティングの方法論」 第1回 ZONE Z”. 2008年7月8日確認。
- ↑ 『怪綺談』のExtraエンディングでは、『靈異伝』から『怪綺談』までの5作品に登場するオールキャストの名前と二つ名が英字で表記されている。ただし『靈異伝』からは靈夢のみ。『封魔録』以降でも、玄爺と名無しのボスキャラクターは表記されていない。
- ↑ 「Mima」名義。
出典[編集]
- ↑ 明治大学大学祭での講演「東方の夜明け」
- ↑ 幻想掲示板 2002年3月14日 - ウェイバックマシン(2002年4月3日アーカイブ分)
- ↑ 「東方」制作者インタビュー「シューティングの方法論」第1回 - ZONE Z(4Gamer.netでのインタビュー)
- ↑ 上海アリス幻樂団の公式サイトで配布されている音楽ファイル入り圧縮ファイル「th1_10.txt」の付属テキスト。
- ↑ 『怪綺談』における「東方怪奇談」の曲コメント、および上海アリス幻樂団の公式サイトで配布されている音楽ファイル入り圧縮ファイル「th1_04pmd.lzh」の付属テキスト。
- ↑ a b 『怪綺談』同梱の「怪綺談.TXT」。
- ↑ 『封魔録』4面。
- ↑ 『怪綺談』魅魔ルートの4面。
- ↑ 『夢時空』カナ使用時・対魅魔戦勝利時の台詞。
- ↑ 『封魔録』5面のドット絵、『幺樂団の歴史4』ジャケット画など。
- ↑ a b c 『夢時空』同梱の「夢時空.TXT」。
- ↑ 引用エラー: 無効な
<ref>
タグです。「th05_stg05
」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません - ↑ 『怪綺談』魅魔ルートの5面。
- ↑ 『怪綺談』魅魔ルートの6面。
- ↑ 「幻想掲示板」2003年8月1日の投稿 (「東方シリーズの動作情報ページ」によるアーカイブ、2010年11月25日閲覧)。