方向指示器

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ハザードランプを点灯した車

方向指示器(ほうこうしじき)とは、自動車等の車両を運転する際、自車の進路変更や右左折などの意思を周囲に伝えるために備えられる装置(灯火類)である。

概要[編集]

日本においては「ウインカー(ウィンカー)」と表記されるほか、すべてのウインカーが同時点滅するものは「ハザードランプ(非常点滅灯)」と呼ばれる。また、ウインカーを動作させるスイッチはウインカーレバーや方向指示器レバーなどと呼ばれ、ハザードランプを動作させるスイッチはハザードスイッチなどと呼ばれる。

ウインカーは自分の意思を周囲に伝えることで安全な交通を実現するものである。仮にウインカーを出さないで交差点を曲がる場合、歩行者や自転車などが進路を予測できず、接触や転倒の危険性が高まる。また、複数車線道路において車線変更を行う際には、あらかじめウインカーを操作することで後続車に意図を伝え、円滑な交通の維持にも寄与する。このため、方向指示を行わずに進路を変更する行為は「合図不履行」として道路交通法により禁止されている。

自動車におけるウインカーは原則として車体前部、側面、後部に左右対称に装備されている。大型車の中にはさらに車体中央の側面に一対追加していたり、タクシーの場合はルーフに追加しているものもある。また、オートバイの場合は側面のウインカーを持たず、前後のウインカーのみであることも一般的である。なお、平時において日本国内を走る戦車(特車)にもウインカーが装備されており、戦時はウインカーを隠すか外すとのこと。

ドアミラーにウインカーの機能を内蔵したウインカーミラーも広く普及を見せたものの、ドアミラーの大型化や修理コストの増大を懸念し採用を見送るメーカーや標準装備でなくオプション装備とするメーカーも存在している。

保安基準においては橙色(オレンジ色)のみが認められており、昼間に100m先からウインカーの点滅が確認できることなどが定められている。なお、この場合の色は「光った色」が橙色であれば認められており、ウインカーレンズの色まで定めているわけではない。また、昭和37年までの国産車であればブレーキランプ兼用の後部ウインカーが認められており、その場合は赤色のウインカーとなる。点滅速度についても1分間に60~120回以下の一定の周期で点滅しなければならないと定められている。なお、機械式ICを用いたものは点滅感覚に若干の揺らぎが生じることもあるが、おおむね一定の周期で点滅していると認められれば問題はない。

ウインカーを点灯させている場合はコンビネーションメーターに作動状況を知らせるインジケータが点灯する。日本車においては左右独立のインジケーターが装備されるが、ドイツ車などでは左右で一つのランプを共有して点灯するものもある[注 1]。なお、オートバイでは一灯式のインジケータが主流である。

ウインカー作動時の「カチカチ」という音はウインカーリレーの作動音であり、電子化によって機械式リレーを使用しない場合は鳴らないはずであった。しかし、ICリレーが主流になった現在でもドライバビリティのためにあえて作動音を残しているタイプが多く残されている[注 2]。なお、ICリレー搭載車種の場合は後退時のブザー(ATやCVTに限る)とウインカーの作動音は同時にならないようになっている。

一般的な日本車においてはハンドルコラムの右側にウインカーレバーが設置されているが、国際標準化機構の規格ではハンドルの左右にかかわらずハンドルコラムの左側と指示されている。そのため、輸入車などでは右ハンドル車でもハンドルコラムの左側に設置されており、日本車に慣れたドライバーが間違えてワイパーを作動させてしまうこともしばしば見られる。なお、イギリスでは左側通行なため右ハンドルではあるが、ISOに準じてウインカーはコラムの左側である。また、日本車でも一部の車種[注 3]は生産地の関係からウインカーがハンドルコラム左側に設置されている。

ハザードランプ[編集]

左右同時に、つまりすべてのウインカー、メーター内にある方向指示表示灯が点滅することをハザードランプ(非常点滅灯[注 4]または非常点滅表示灯[注 5])といい、停車中であることや非常であることなどを示すために使用されるものである。ハザードランプは1960年代のアメリカで生まれたといわれており、現在ではほとんどの四輪自動車や一部のオートバイにまで普及しているものである。

ハザードランプのスイッチはウインカーレバーとは別に備え付けられていることがほとんどである。一例をあげればメーターパネル横[注 6]やフロントパネル[注 7]、センターコンソール[注 8]やステアリングホイール[注 9]、ステアリングコラム上[注 10]など、様々な場所に設置されている。一部タクシー車両についてはウインカーレバーの先端に装着されることもある[注 11]

ハザードランプは夜間の非常停車時などを除き、その用法が厳格に定められているわけではない。よく使用されているものが高速道路での渋滞発生時[注 12]や駐車場などに停車する際のハザード点滅などが挙げられるが、これらは法的に指定されているわけではない[注 13]。最も賛否が分かれているのは「サンキューハザード」と呼ばれるものであり、たびたび議論に上がるものである。

法的にハザードランプを点滅させる必要があるのは「夜間に5.5m以上の道路に駐停車するとき(赤信号などによる停止を除く。また、高速道路以外で街灯の下であったり、三角停止板などを利用している場合はこの限りではない)[注 14]」や「スクールバス(主に幼稚園~中学校)において小学生や園児が乗降するために停車している間[注 15]」などが挙げられる。これらの状況下では法令により点滅が義務化されている。

ハイフラッシャー[編集]

ウインカーどれかの電球が切れた場合、高速点滅で球切れをドライバーに教えるような機構になっている。この現象を俗にハイフラッシャーと言い、略してハイフラなどということもある。なお、この現象は従来の電球式のバルブをLEDに交換した場合にも発生するため[注 16]、ウインカー用のLEDバルブは抵抗を追加しているものが多い。また、ICリレーを噛ませることでハイフラを抑えることも可能になる。純正でLEDウインカーとICリレーを採用している場合はハイフラせずにメーターパネルにウインカーの異常を知らせる警告を表示させることもある。

歴史[編集]

黎明期においては自動車も自転車のように手信号による意思表示が用いられていた。当時はオープンボディの自動車が多く、運転手が外部から視認しやすかったことや絶対的な交通量が少なかったことからそれで事足りていたものである。

一方、交通量の増加や現在のようなクローズドボディの自動車が増え、手信号だけでは意思表示が伝わりにくくなったことから「文字盤式」や「矢羽式」のように外部から視認しやすいタイプの方向指示器が発明されるようになる。矢羽式はその後電球の普及に伴い、矢羽に電球を装備して夜間でも視認しやすい方向指示器として改良される。このころは点滅しておらず、点灯タイプの物であったらしい。

1935年には現在のような点滅式のウインカーが自動車に採用され始めており、戦後の日本においても1950年代には現在のようなウインカーが主流となり始めたものである。

外部リンク[編集]

脚注[編集]

  1. フォルクスワーゲン・ジェッタなど
  2. ブザーなどを別途設置している
  3. トヨタ・スープラ(DB系)やスバル・トラヴィックなど
  4. メーカーによる表記
  5. 法令等による表記
  6. 初代スバル・インプレッサ前期型
  7. 初代スバル・インプレッサ後期型
  8. 日産・フェアレディZ(Z33)
  9. トヨタ・ジャパンタクシー
  10. スズキ・Kei
  11. トヨタ・クラウンコンフォート
  12. 前方が渋滞していることを発見した場合に使用
  13. もっとも、渋滞の最後尾はNEXCOJAFも推奨している
  14. 道路交通法施行令第18条2項
  15. 道路交通法施行令第26条3の2項
  16. 消費電力が減り、回路が球切れと判断するため
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