幽霊名字
幽霊名字、幽霊苗字(ゆうれいみょうじ)とは、日本人の名字として知られているが、実在しない名字のこと[1]。
概要[編集]
芸名、筆名、創作物における架空の人物名などには見出すことができるが、実在する、あるいは実在したという確認が行えない名字のことである[1]。刊行されている「名字事典」に掲載されていることもある(#紹介される事例参照)。
「ある名字が本当に存在する」という事柄の科学的な照明は、1つだけでも事例を示せれば良い[1]。公的な職業に就いている人ならば、本名であることを確認した上で、その人を例として挙げれば証明完了である[1]。しかしながら、名字に限らず一般的に「存在しないこと」の証明は、悪魔の証明、消極的事実の証明のように非常に困難である。「特定の名字が存在しない」ことを証明するには、「日本人全人口の名字をすべて調べたが、1つもなかった」ことを示す必要があり、「過去にも存在しなかった」ならば、歴史を遡って1つもなかったことを示す必要がある[1]。今日では個人情報保護法も制定されているため、個人やいち企業が日本人全員の戸籍を閲覧して確認することは、事実上不可能ともいえる[1]。
このため、「その名字の人を見た」との主張を完全に否定することはできず、状況証拠を積み重ねて「本当は存在しないのではないか」とするのが限界である[1]。このあたりが幽霊の目撃談に似ているため、「名字研究家」として知られる森岡浩が著書である『日本人の名字なるほどオモシロ事典』(1998年、日本実業出版社)で「幽霊名字」という名称を提唱した。 [1]
紹介される事例[編集]
「名字事典」のように珍しい名字を多数収録した書籍はいくつも刊行されている[1]。
こういった書籍は「収録数の多さ」を競う傾向にあり、事典編纂者も実在を吟味して収録数を減らすよりは、実在が危ぶまれても収録数が多いほうが良いと考えがちとなっている[1]。
また、事典に実在の名字が未収録だった場合、その名字の本人や関係者から苦情が届くことになる[1]。しかし、幽霊名字の掲載があっても掲載されていることに苦情を申し立てる当人は存在していない。このため、編纂者としては、苦情を心配することなく掲載できるのである[1]。
幽霊名字の例[編集]
石渡 ()[2]石渡 ()、石渡 ()の読み仮名の書き誤り。
六月一日 ()[1]鮮 ()[2]- 「鯨」の書き誤りと思われる。
近新 ()[2]- 「近 新三郎」を「近新 三郎」と誤ったもの。
十八女 ()[2]十二月一日 ()[2]十 ()[3]西周 ()[2]- 西 周を姓のみと勘違いしたもの。
子子子子 ()[3]遥 ()[2]春夏秋冬 ()[1]深 ()[2]- 「深井」から「井」を書き漏らしたもの。
富士桜 ()[2]- 相撲の四股名。
松ヶ根 ()[2]- 相撲の年寄名。
東西南北 ()[1]兼坂 ()[3]兼坂 ()は実在する。
グレーゾーン[編集]
一 ()[1]- 「一」の名字そのものは「いち」、「かず」、「はじめ」といった読みで実在が確認されている。しかし、これを「にのまえ」と呼ぶ実例は確認が行えていない。
実在するようになった幽霊名字の例[編集]
涼宮 ()- 小説の「涼宮ハルヒシリーズ」の登場人物の姓「涼宮」は幽霊名字であったが、日本国外から日本へ帰化した際に作品にあやかって「涼宮」姓を付ける例が出てきたため、実在する名字になった。
脚注[編集]
関連項目[編集]
- 難読名字の一覧 - こちらは実在する名字のみを掲載している。