二十世紀 (梨)

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二十世紀(にじっせいき、Nijisseiki)は、和梨の品種名。

概要[編集]

「二十世紀梨」(にじっせいきなし)とも呼ばれる。「二十世紀」は「にじゅうせいき」とも読むことがあるが、梨の場合は古くからある「にじっせいき」の読みである[1]

名前に反して、発見されたのは20世紀ではなく19世紀である[2]。果実が市場に出荷されるようになったのは20世紀に入ってからではある[2]が、21世紀入っても栽培は継続されており、梨に限らず、他の農作物を見渡しても、100年を超えて高い評価をもち続けている品種は稀少である[3]

二十世紀の産地としては鳥取県が日本1位となっている[4]

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二十世紀の花は「鳥取県の花」に指定されている[4]

1つの花芽には8個から10個のに似た花が咲く[4]。鳥取県の場合は、4月上旬から中旬に満開となる[4]

二十世紀は、ほとんど自然交配をしないのが特徴であり、しかも二十世紀の花粉では実を結ばない[4]。そのため、二十世紀の果樹園では、長十郎新興といった異なる品種の和梨の花粉を準備しておき、花粉を二十世紀の花ひとつひとつに筆や耳かき棒のようなもので人工授粉させる必要がある[4]

日本国外への輸出[編集]

鳥取県産の二十世紀は、1933年に日本国外への輸出を開始している[4]

特に1968年に始まったハワイへの輸出は、ホノルル市の市長から11月を「鳥取二十世紀梨の月」とする宣言を受けるなど、国際親善にも役立っている[4]

歴史[編集]

1888年(明治21年)、千葉県八柱村(現・松戸市)に住む当時13歳の松戸覚之助がゴミ捨て場脇に生えていた見慣れる苗木を見つけた[2][3][5]。覚之助はこの苗木を持ち帰り、父親が運営するナシ園に植樹し、育てた[2][3]。松戸地方は江戸時代からの梨の産地であったが、覚之助の家が梨の栽培を始めたのは、1886年からであった[3]。10年後の1898年に果実を実らせる[2]のだが、この時代の梨は、黒斑病などの病気に弱いため、この間の覚之助の苦労は想像に難くない[3]。実った果実は、甘く果汁に富んでおり、「新太白」と名付けられて出荷された[3]1904年、当時広く読まれていた東京興農園刊行の雑誌『興農雑誌』では「驚くべき優等新梨(新大白)の紹介」という記事が掲載されており、そこでは「其味の優等甘味にして漿液最も多く恰も甘き西洋梨の如く且つ少しも口中は渣滓を止めず実に完全の梨果と称するを得べし……」と新太白を絶賛している[3]。翌1904年(日露戦争が勃発した年でもある)、農学士の渡瀬寅次郎(1859年 - 1926年)によって「20世紀には王座をなす梨になるだろう」と「二十世紀」と名付けられることになる[2][3]。同年、鳥取市桂見の北脇永治が、二十世紀の苗木を10本購入し、これが鳥取における二十世紀栽培の始まりとなる[4]

その後、二十世紀は日本全国に栽培地を広げていくことになる[3]

発祥の地である千葉県は降雨が多いため、上述のように黒斑病などの病気に弱い二十世紀の栽培は廃れて行き、鳥取県長野県での栽培が盛んとなっている[3]

最盛期には日本全国での二十世紀の栽培面積は6000ヘクタールを上回っており、昭和47年から昭和63年の間は全栽培品種のトップに君臨していた[3]

20世紀末の1996年時点では、二十世紀の生産量は、幸水豊水に次ぐ3位であるが、幸水も豊水も品種としては二十世紀の血統にあたる[3]

発見の地は二十世紀公園(住所は松戸市二十世紀が丘梨元町24)となっている[5]。二十世紀公園には記念碑なども建っている[5]。この記念碑は、空襲によって枯死した二十世紀の原木の跡に建っている[3]

木乃実神社[編集]

鳥取県鳥取市湖山町東5丁目にある木乃実神社は、二十世紀梨の原木が御神体となっている[4]

詳細は「木乃実神社」を参照

脚注[編集]

  1. 呉智英 「六から十まで」『言葉の常備薬 言葉の診察室』3、KKベストセラーズ、2024年。ISBN 9784584126141
  2. a b c d e f 日本博学倶楽部 「「二十世紀梨」は「二十一壱世紀梨」と呼ばれるようになるのか?」『知っているようで知らない 「数字」の雑学 1週間はなぜ7日? 煩悩はなぜ108? 2月はなぜ28日?』 PHP研究所2006年。ISBN 978-4569666976
  3. a b c d e f g h i j k l m 西尾敏彦. “ごみ溜めから生まれた「二十世紀」ナシ”. 公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会. 2025年12月27日確認。
  4. a b c d e f g h i j ”. 全農とっとり. 2025年12月27日確認。
  5. a b c 松戸が二十世紀梨発祥の地です”. 松戸市 (2025年8月1日). 2025年12月27日確認。