中島九五式艦上戦闘機

中島九五式艦上戦闘機（なかじまきゅうごしきかんじょうせんとうき）は、第二次世界大戦前に大日本帝国海軍で採用された最後の複葉機の艦上戦闘機である。記号番号はA4N。

概要[編集]

九〇式艦戦の後継機として、中島飛行機が海軍の要求に応えて開発した機体である。海軍の要求は、九〇式艦戦を上回る速力と運動性、そして頑丈な構造を持つことであった。中島飛行機は、1934年（昭和9年）に試作機であるA4N1を完成させた。

試作機は九〇式艦戦の面影を残しつつも、より洗練された空力特性を持つ設計がなされていた。主翼は、九〇式艦戦と同様の異機種二葉の複葉形式であったが、翼弦長や翼型が見直された。また、主脚はスパッツで覆われ、空力抵抗の低減が図られた。エンジンには、中島製の「寿二型」を搭載した。

審査の結果、本機は九〇式艦戦を上回る性能を示し、特にその堅牢な機体構造と運動性が高く評価された。そして1936年（昭和11年）1月に「九五式艦上戦闘機」として正式採用された。

九五式艦上戦闘機は、当時の日本の技術水準を反映した堅実な設計がなされていた。最大の特色は、その優れた運動性能と頑丈な機体構造である。これは、当時の空母運用において、着艦時の衝撃に耐えうる頑丈さが求められたことに起因する。

武装は7.7mm機関銃2挺と、九〇式艦戦から引き継いだ標準的なものであった。爆装は30kg爆弾2発が可能で、軽爆撃任務もこなすことができた。

エンジンは、採用当初は「寿二型改一」が搭載されたが、後に「寿二型改二」など、改良型が搭載された機体も存在した。これにより、若干ではあるが性能の向上が図られた。

九五式艦上戦闘機は、1936年（昭和11年）から1940年（昭和15年）にかけて合計221機が生産された。空母「赤城」、「加賀」、「龍驤」などに搭載され、艦隊の主力艦上戦闘機として運用された。

日中戦争（支那事変）においては、中国戦線で実戦投入され、中国空軍の戦闘機を相手に活躍した。特に、複葉機ならではの優れた低速運動性を生かし、ホークⅢなどの中国空軍機に対して優位に戦った。しかし、カーチス「P-36」やI-16といった新型単葉戦闘機が投入されると、その性能の限界が露呈し始めた。

太平洋戦争開戦時には、すでに零式艦戦などの新型機に主力の座を譲っていたが、一部の部隊では練習機や連絡機として終戦まで使用された。また、本土防衛の迎撃任務にも投入された記録があるが、実戦で大きな戦果を挙げることはなかった。