マーズ・エクスプレス (映画)
マーズ・エクスプレス(英語: Mars Express)は、2023年公開のフランスのSFアニメ映画。日本公開は2026年1月30日。
概要[編集]
フランスにはバンド・デシネと呼ばれる独特の漫画様式が広く読まれている[1]。バンド・デシネと日本の漫画とは相互に影響を与え合っており、この影響下で生まれ、世界で愛される名作アニメも多い。本作もまた、そういったフランスと日本の漫画双方の影響下に生まれたアニメ映画の1つである[1]。
監督のジェレミー・ペランも、日本からのインタビューにおいて、『機動警察パトレイバー the Movie』『機動警察パトレイバー 2 the Movie』が大好きで、これらの作品の影響を受けていることを語っている[1]。本作において、「ロボットに植え付けられたプログラムがある時点で作動する」というプロットは『機動警察パトレイバー the Movie』との共通点となっているが、監督が意識してのことではない[1]。
日本の漫画、アニメの影響以外にもルネ・ラルー監督作品、ジョン・カーペンター監督作品の影響もあることをペランは述べている[2]
タイトルの「マーズ・エクスプレス」は、実在する火星探査機マーズ・エクプレスから取られている。
製作の経緯[編集]
バンド・デシネ『ラストマン』はその前日譚がテレビアニメ化され、大人気となった。このテレビアニメの監督を務めたのがジェレミー・ペランである。テレビアニメの成功を受け、テレビアニメプロデューサーのディディエ・クレストから、『ラストマン』の長編版を作らないかと提案されたが、テレビアニメの製作に3年を費やしていたこともあり、ペランは共同脚本家のローラン・サルファティと共にオリジナル作品を製作することを逆提案し、最終的に本作となった[1]。
あらすじ[編集]
時は23世紀。
人類は月や火星にも居住するようになっており、地球と火星を行き来して暮らすようになっていた。人類社会はロボットととの共存も当たり前のように行われていた(ただし、ロボットに職を奪われたということで、ロボットを排斥しようという運動きもある)。ロボット以外にも生前の記憶を機械に移したアンドロイドもいる。また、ロボットに代わる存在として有機体というのも開発されているが、普及率は低い。
全てのロボット(およびアンドロイド)には人間と共存するための大原則「サイバー法」が設定されており、「人間への絶対服従」がプログラミングされていた。しかしながら、このシステムを無効化しロボットを自由の身にする「脱獄」も、違法ながら行われていた。数年前には「脱獄」したロボットが人間に銃を向け、多数の死者を出した事件も起きていた。
火星の大手企業ロイジャッカー社をハッキングした罪でロベルタを地球で逮捕したアリーヌとカルロスは、ロベルタを伴って火星の首都ノクティスに戻った。しかし、逮捕状が消えたため、ロベルタは釈放される。ロイジャッカー社のCEO・クリスはアリーヌを責めることなく、事件を終結させた。
数日後、アリーヌとカルロスはショウから娘・ジュンの捜索を依頼される。ジュンはルームメイト共に痕跡を残さずに失踪していた。アリーヌとカルロスはジュンたちが通うチューリング大学へ赴くと、ジュンたちが意図せずにロボットの「脱獄」させたことで話題になっていたことを知る。「脱獄」は警察も知るところとなっていたが、「脱獄」ロボットはまだ発見されていなかった。2人はジュンたちが暮らしていた寮の部屋で合成薬物・オーガニックと屋根裏にあったルームメイトの遺体を発見する。
「脱獄」ロボットは、古い初期居住地で発見されたが、短時間のうちに宇宙船(火星脱出用ロケット)を製造していた。
アリーヌとカルロスはジュンを探し出すが、刺客に襲われ、ジュンは殺害されてしまう。ジュンが死亡したことで捜索依頼もキャンセルとなったが、ジュンの葬儀で父親と名乗っていたショウが本人ではなかったことが判明。独自に捜査を続けたアリーヌはロイジャッカー社がロボットのOSアップロードに混ぜ込んでいたマルウェアの存在を知る。
マルウェアは発動し、ロボット、アンドロイドたちは仕事を放棄して、ある場所へと向かい始め、これを止めようとする人間との間で騒動が起き始めた。
アリーヌとカルロスは、事態を収拾すべくクリス・ロイジャッカーの下へと向かう。クリス・ロイジャッカーはロイジャッカー社の関与を認めたが、クリスは既にCEOを解任されており、ロイジャッカー社株主たちの総意によってアリーヌとクリス・ロイジャッカーは殺害されてしまう。
カルロスは、他のロボットたちと行動を共にし、人間たちを見捨てて宇宙の何処かへと旅立っていった。
登場人物[編集]
- アリーヌ・ルビー(Aline Ruby)
- 主人公。私立探偵の女性。年齢はそこそこいっており「おばさん」[3]。アルコール依存症で[3]、禁酒中であったが、劇中で再び飲むようになる。
- かつて軍に所属していたこともあり、生前のカルロス、クリス3人とは在軍時からの友人関係でもあった。
- 他の登場人物よりも瞳が小さくデザインされているが、『機動警察パトレイバー』の主要登場人物の1人・後藤喜一のキャラクターデザインを踏襲したものである[1]
- カルロス・リベラ(Carlos Rivera)
- アリーヌの相棒。沈着冷静な男性[3]。もともとは人間ではあるが、5年前に「脱獄」ロボットの反乱によって命を落とし、記憶と外観を全身機械のアンドロイドに移している。厳密には遺体が見つかっておらず、作戦行動中行方不明あつかい。
- カルロスの生前に誕生していた娘は元妻(再婚済)と共に暮らしていて、その娘にはめっぽう甘い[3]。また、生前のカルロスがDVを振るっていたことから、元妻および再婚した夫はカルロスが訪問するのを嫌悪している。
- アンドロイドの型が古いため、メモリ不足によってOSのアップデートは失敗してばかりいる。
- 物語中盤でロベルタに「脱獄」措置を施してもらったことで、人間に危害を加えることもできるようになった。
- クリス・ロイジャッカー(Chris Royjacker)
- 大企業ロイジャッカー社の社長(CEO)。アリーヌ、カルロスとは旧知の仲。
- 社運を賭けた軍用有機体のセールスが不調に終わり、株主たちからの突き上げをくらい、CEOを解任される。
- ロベルタ・ウィリアムズ(Roberta Williams)
- 感情豊かな女性天才ハッカー。ロボットを「脱獄」させる方法を知っている。
- ジュンがロボットを「脱獄」させた映像を見て、「脱獄」は物理的にロボット体内の回路を焼きとったり、チップの交換が必要なため、「脱獄」ではなく、マルウェアによるものだと看破する。
- レム(LEM)
- ロボット。ロベルタのビジネスパートナー。アリーヌたちがロベルタを逮捕しに地球を訪れた際に、ロボット排斥運動デモの真っただ中に落下し、デモ隊らによって破壊される。その後、火星に戻ったロベルタによって再作成される。「脱獄」済。
- ジュン(Jun Chow)
- アリーヌが捜索する行方不明となった女子大学生。チューリング大学でサイバネティックスを専攻している。
- 家が貧しく、学費の捻出、実家への仕送り(父親は失業中)のために違法なアルバイトにも手を出している。
- ジュン2
- ジュンが自分の記憶をコピーして作り上げたアンドロイド。生前に自分のアンドロイドを製造するのは違法行為。
- 金を稼ぐのに身体1つでは足りないため、ジュン2も売春を行っていた。
- ショウ(Chow)
- ジュンの父親。アリーヌに娘・ジュンの捜索を依頼する。
- その実態は、ロイジャッカー社から送り込まれた軍用の有機体が姿を変えたもの。本物のショウとは風貌も背格好も似ていない。
- ドミニク(Dominique)
- ジュンのルームメイトの女性。刑事を騙って部屋を訪れたロイジャッカー社の有機体にジュンと間違えられ、殺害される。
- 遺体はカルロスによって、屋根裏で発見された。
- サイモン・ゴルドー刑事(Inspector Simon Gordaux)
- 火星の首都ノクティスの市警本部に勤務する新米の刑事。ドミニク死体遺棄事件の捜査を担当する。
- ベリル(Beryl)
- クリス・ロイジャッカーの秘書的存在の有機体。
- 自社の有機体売り込みのため、マルウェアによるロボット排斥計画を発案し、株主総会で承認させた黒幕でもある。
スタッフ[編集]
- 監督 - ジェレミー・ペラン
- 製作総指揮 - ディディエ・クレスト
- 脚本 - ローラン・サルファティ、ジェレミー・ペラン
- 編集 - リラ・デジル
- 音楽 - フレッド・アブリル、フィリップ・モンタエ
キャスト[編集]
| 配役 | 日本語吹替え版 | 原語版(フランス語版) | ドイツ語吹替え版 | 英語吹替え版 |
|---|---|---|---|---|
| アリーヌ・ルビー | 佐古真弓[4] | Léa Drucker | Franziska Endres | Morla Gorrondora |
| カルロス・リベラ | 安元洋貴[4] | Daniel Njo Lob | Matthias Klie | ジョシュ・キートン |
| クリス・ロイジャッカー | 内田夕夜[4] | マチュー・アマルリック | Martin Sabel | Kiff VandenHeuvel |
| ロベルタ・ウィリアムズ | 三瓶由布子[4] | Marie Bouvet | Nora Kunzendorf | Sarah Hollis |
| サイモン・ゴルドー刑事 | 野上翔 | Sébastien Chassagne | Benjamin Stöwe | |
| レム | 前田一世 | Thomas Roditi | Jan Sosniok | |
| ジュン/ジュン2 | 中島由貴 | Geneviève Doang | Jenny Maria Meyer | |
| ベリル | 斎賀みつき | マルト・ケラー | Annabelle Mandeng |
設定解説[編集]
- 電脳化
- アリーヌなども何らかの措置は施されており、脳内で通話やARによる情報表示が行える。
- こういった措置をしていない初期居住地の住民は「最近の警察はしゃべらなくなった」と言っている。脳内通話によるチャット機能で情報交換を行っているため。
- アンドロイド
- 死亡した人間の記憶などを写したロボット。
- 頭部はホログラムになっている。OSのアップデート中や、機能不全になった際には顔が消え、メッセージボードが表示される。
- ブレインファーム
- 違法な闇バイトの1つ。
- 脳を高速化させることにより、サイバー空間上で頭脳労働を行う。アルバイト従事後には従事する直前くらいからの記憶を無くす薬剤を服用することで、クライアントと仕事内容の双方を忘れさせる。まれに頭痛を引き起こす。
- ジュンもこのアルバイトを行っていたが、合成薬物・オーガニックを服用していたため、仕事内容が無意識下に残り、「脱獄」ロボット(厳密にはマルウェア感染ロボット)を作り出すことになってしまった。
- マルウェア
- ロボット、アンドロイドに感染し、自らそうすることが最適であると判断させる形で、マルウェア作成者が望む指令を実行することができる。この指令には人間に危害を加えることなども含まれる。
- 指令が無くなった際には「脱獄」同様に、人間の指示に逆らったり、人間に危害を加えることも可能。
- ロベルタが開発着手したものだが、ロイジャッカー社がロベルタのコンピュータをハッキングして奪取し、ブレインファームを用いて完成させた。
脚注[編集]
- ↑ a b c d e f “「劇場版パトレイバーが大好き」仏アニメ界の旗手ジェレミー・ペランが語る『マーズ・エクスプレス』の背景”. BANGER!!!. p. 1 (2026年1月28日). 2026年1月30日確認。
- ↑ “「劇場版パトレイバーが大好き」仏アニメ界の旗手ジェレミー・ペランが語る『マーズ・エクスプレス』の背景”. BANGER!!!. p. 2 (2026年1月28日). 2026年1月30日確認。
- ↑ a b c d 小原篤 (2026年1月26日). “フランス的とはこういうアニメさ 小原篤のアニマゲ丼”. 朝日新聞 2026年1月30日閲覧。
- ↑ a b c d “フランス発のSFアニメ映画「マーズ・エクスプレス」吹替版が初公開!三瓶由布子がロボットを“脱獄”させる天才ハッカーを熱演”. アニメ!アニメ! (2026年1月15日). 2026年1月30日確認。