フェレット偵察装甲車
フェレット偵察装甲車(英語: Ferret armoured car)は、イギリスで開発された偵察装甲車である。
概要[編集]
フェレット偵察装甲車は、第二次世界大戦中に開発されたディンゴ偵察車の後継として、デイムラー社によって1950年代初頭に開発された。軽量かつ小型で、高い機動性と汎用性を有しており、偵察任務のほか、連絡、軽警備など多岐にわたる用途で使用された。
開発と生産[編集]
フェレット偵察装甲車の開発は、1949年に開始され、プロトタイプであるFV701が製作された。数度の試験を経て、1952年にイギリス陸軍に制式採用された。生産はデイムラー社で行われ、1952年から1971年までの間に合計で約4,409両が製造された。
設計[編集]
フェレット偵察装甲車は、全溶接構造の鋼鉄製車体を持つ。乗員は通常2名で、車長と操縦士からなる。車体前部にロールスロイス製B.60ガソリンエンジンを搭載し、後部に密閉式の戦闘室が配置されている。
武装[編集]
初期の型では、.30口径ブローニング機関銃やブレン軽機関銃といった機関銃1挺のみを装備していた。一部のバリエーションでは、エリコンFF 20 mm 機関砲や対戦車ミサイルの搭載も試みられたが、基本的な武装は機関銃に限定されていた。
機動性[編集]
四輪駆動(4x4)方式を採用し、路上では最高速度約93km/h、不整地でも優れた機動性を発揮した。軽量なため、輸送機による空輸も可能であった。
派生型[編集]
フェレット偵察装甲車には、その汎用性から多くの派生型が存在する。
- FV701C:初期生産型。
- Mk 1:オープントップの戦闘室を持つ基本型。
- Mk 2:密閉式の砲塔を装備し、より防御力を高めた型。様々な砲塔が試された。
- Mk 2/3:Mk 2の改良型で、より大型の砲塔を搭載。
- Mk 4:広幅のタイヤと強化されたサスペンションを持つ改良型。水陸両用能力も付与された。
- Mk 5:スウィングファイア対戦車ミサイルを搭載した型。
運用国[編集]
フェレット偵察装甲車は、イギリスだけでなく、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、南アフリカ共和国など、イギリス連邦諸国を中心に多数の国々で運用された。また、インドネシア、ナイジェリア、マレーシアなど、非イギリス連邦諸国でも採用された。その堅牢性と信頼性から、一部の国では21世紀初頭まで現役で使用されていた。
実戦[編集]
フェレット偵察装甲車は、フォークランド紛争、アデン危機、ローデシア紛争など、各地の紛争で使用された。特に偵察任務においてその能力を発揮し、多くの実戦経験を積んだ。
豆知識[編集]
- フェレット偵察装甲車の名称である「フェレット」は、イタチ科の肉食動物「フェレット」に由来する。小型で素早く、偵察任務に適した特性を象徴している。
- 後部に設置された戦闘室は非常に狭く、乗員は長時間の搭乗で疲労が蓄積しやすかった。
- 一部のフェレットは、中東地域において現地改造が施され、より強力な武装を搭載されたケースも存在する。
関連項目[編集]
参考書籍[編集]
- 『世界の軍用車両』(グランドパワー別冊、ガリレオ出版)
- 『British Armoured Car FV701 Ferret』(Osprey Publishing、New Vanguardシリーズ)
- 『The Ferret Scout Car』(Profile Publications)