デフロック

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

デフロック(Differential Lock)とは、デファレンシャルギアの差動を固定して停止させ、直結状態とする機構である。自動車において、スタックや脱輪からの脱出のために設けられていることが多い。

概要[編集]

自動車のスムースな旋回のために用いられるデファレンシャルギアであるが、差動制限装置を持たない所謂オープンデフの場合はスタックや脱輪時に適切な動力伝達が行われず、脱出ができないか非常に難しいという欠点がある。これは、デフが抵抗力の少ないほうにより動力を伝達してしまう性質によるものである。そのため、何らかの形で差動を制限する必要があり、その技術としてリミテッド・スリップ・デフ(LSD)やデフロックが存在する。デフロック状態の場合、車輪間の一切の差動を行わなくなるため動力の分配は左右若しくは前後で均等(50:50)となる。脱輪からの脱出などは容易になるものの、一方でタイヤの引きずり(アクスルデフロック)やタイトコーナーブレーキ現象(センターデフロック)が発生し、操作性が悪化するほか、最悪の場合循環トルクが熱となって蓄積し、車両火災につながることもある。

なお、LSDにおいてはデフフリーからデフロック状態まで差動状態を変化させるものもあり、電子制御タイプの物は走行状態に合わせてリニアにロック率を変動させることも可能である。

デフロックは左右輪に係るアクスルデフロックとセンターデフに係るセンターデフロックがある。アクスルデフロックは前輪駆動車や後輪駆動車で搭載される例もあるが、センターデフロックは四輪駆動車のみのデフロックである。

アクスルデフロックとは車軸(アクスル)に設けられるデフの働きを阻害し、左右輪に均等に駆動力を伝えるものである。このデフロックが前輪にあればフロントデフロック、後輪にあればリアデフロックとなる。一般に前輪駆動車のフロントデフにデフロックがかけられることは稀である。なお、VWの一部車種に搭載される電子制御油圧式LSDは電子制御油圧式フロントデファレンシャルロックという名前であるものの、50:50に固定するというよりは左右輪のトルク分配を0~100で変動させるというものであるため、どちらかというとパッシブ式AWDのセンターデフに近い働きである。

センターデフロックとは前後輪に駆動輪を分配または回転差を吸収するセンターデフをの働きを阻害し、前後の車軸に均等に動力を伝達しするものである。前後輪へ動力を分配する都合上、四輪駆動車や六輪駆動車などの多輪駆動車のみに装備される。その中でもフルタイムAWDにのみ特有の機構であり、AWDとRWD(FWD)を切り替えて走行できるパートタイム式AWDにおいてはセンターデフをあえて搭載する必要はない。しかし、三菱の一部には二輪駆動と四輪駆動の切り替えだけでなく、フルタイムとパートタイムの切り替えまで行うものもあり、こういった機構を搭載したモデルにはセンターデフロック機構が設けられていることもある。

現在の日本車の多くはスイッチやレバーなどで必要な場合にデフロックをかける選択式デフロックが主流であるが、アメリカなどではLSDのように自動でデフロックとデフフリーが切り替わる自動式デフロックもあったようだ。しかし、自動式デフロックはその急激な挙動変化に伴う姿勢変化やタイヤへのダメージが強く、ドライバーへの負担もかなり大きいものであったらしい。

オープンデフを溶接し、強制的にデフロック状態に固定することもある。いわゆる溶接デフロックと呼ばれる手法であり、ドリフト用の車両を製作する際に用いられることもある。

関連項目[編集]