タイガー級巡洋艦
タイガー級巡洋艦(タイガーきゅうじゅんようかん、英語: Tiger-class cruiser)は、イギリス海軍が第二次世界大戦から冷戦期にかけて建造、運用した巡洋艦の艦級である。元々は第二次世界大戦中に建造が計画された軽巡洋艦「マイノーター級」(後のスウィフトシュア級)の一部であったが、戦後の情勢変化に伴い設計が大幅に変更され、新型の高速対空巡洋艦として完成した。
概要[編集]
タイガー級巡洋艦の設計は、第二次世界大戦中に計画されたコロッサス級軽巡洋艦の発展型として始まった。終戦後、これらの未完成艦は、ソ連のジェット爆撃機による脅威増大に対応するため、対空能力を大幅に強化した高速対空巡洋艦として改装されることになった。
最初の2隻「タイガー」と「ライオン」は、1941年に起工されたものの、第二次世界大戦の終結により建造が中断された。その後、1950年代に入り、新型の自動装填式15.2cm連装砲と7.6cm連装砲を搭載した近代的な巡洋艦として設計が改められ、建造が再開された。3番艦「ブレーク」は、当初「ディフェンス」として計画されていた艦を改名したものである。
これらの艦は、イギリス海軍が建造した最後の従来型巡洋艦であり、ミサイル時代への過渡期に位置付けられる艦艇であった。強力な対空兵装と高度な射撃管制システムを備えていたものの、急速な技術革新により、就役後まもなくその役割はミサイル搭載艦へと移行していった。
艦艇[編集]
タイガー級巡洋艦は、以下の3隻が建造された。
当初は8隻の建造が計画されていたが、最終的に3隻のみが完成し、残りの5隻はキャンセルされた。
武装[編集]
タイガー級巡洋艦の主要な武装は、以下の通りであった。
- 主砲: QF 6インチ(15.2cm)50口径連装砲 Mark N5 × 4基(前方2基、後方2基)
- この新型砲は完全自動装填式であり、毎分20発の高い発射速度を誇った。対空射撃も可能であった。
- 副砲: QF 3インチ(7.6cm)70口径連装砲 Mark N1 × 6基(各舷3基)
- この砲もまた自動装填式であり、対空防御の主力を担った。
- その他: 各種機関砲
後年には、ヘリコプター運用能力とシー・キャット対空ミサイル発射機が追加されるなどの近代化改装が行われた艦もあった。特に「ブレーク」と「タイガー」は、コマンドー艦への改装が検討され、実際にヘリコプターを運用するための飛行甲板と格納庫が設置された。
艦歴[編集]
タイガー級巡洋艦は、就役後、主に本国艦隊に配属され、演習や海外展開に従事した。その高い対空能力は、冷戦初期のソ連空軍の脅威に対するイギリス海軍の防衛能力を象徴するものであった。
しかし、シー・スラッグなどの対空ミサイルの開発と実用化が進むにつれ、大口径の自動装填砲を主兵装とするタイガー級の役割は縮小していった。1970年代後半には全艦が退役し、スクラップとして処分された。
豆知識[編集]
- タイガー級巡洋艦は、イギリス海軍の伝統的な艦名を受け継いだ最後の巡洋艦でした。
- 当初計画されていた艦は、後にリアンダー級フリゲートの設計の基礎となりました。
- 「タイガー」と「ブレーク」は、後にコマンドー艦としてヘリコプターの運用能力が付与され、海軍の航空戦力の一翼を担うことになりました。
関連項目[編集]
参考文献[編集]
- 雑誌「丸」編集部 『究極の艦船モデルスペシャル』 潮書房光人新社、2011年。ISBN 978-4769814881。
- 世界の艦船編集部 『世界の艦船 増刊第100集 イギリス巡洋艦史』 海人社、2012年。ISBN 978-4796695270。
- 堀之内 芳郎 『イギリス海軍巡洋艦史』 大日本絵画、2006年。ISBN 978-4499229061。