キス&クライ~楽しい人生の滑り方~

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キス&クライ~楽しい人生の滑り方~』(キスアンドクライ~たのしいじんせいのすべりかた~、英語: Kiss & Cry - fun way of life -)は、みづき水脈によるフィギュアスケートを題材にしたオムニバス漫画作品集[1]

概要[編集]

競技スポーツとしてのフィギュアスケートではなく、日常と非日常という切り口にフィギュアスケートを用いた作品集である[1]

JOUR』(双葉社)で2021年から2023年にかけて連載された。season1からseason3まで『楽しい人生の滑り方』の表題で連載されており、電子単行本化にあたって改題された[1]。season4以降は雑誌掲載時のタイトルも単行本と同じになっている。単行本は全8巻で、分冊版も全18巻が販売されている。

各話[編集]

season1 「42歳、専業主婦がフィギュアスケートにハマったら」[編集]

2021年7月号(2021年6月2日発売)、同年年8月号(7月2日発売)に掲載された。前後編の全2話。単行本1巻。

登場人物
清水 亜希子(しみず あきこ)
42歳。夫、娘(中学2年生)と3人暮らしの平凡な専業主婦。
白石 涼真(しらいし りょうま)
23歳。フィギュアスケートクラブ・京浜FSCのインストラクター。スケート教室では上級者向けの教員を務める。自身も幼い頃からスケートに親しんでいた。一般企業に就職したが、スケートは仕事に貢献しないため、また氷上でしかドヤれないため、インストラクターに転職した。
あらすじ
清水亜希子は、娘が好きなケーキを販売店に予約して受け取り、クリスマスの夕食に挑んだものの、夫は仕事で、娘は友達と食べたので夕食もケーキも不要だという。家庭では自分は脇役になっていると感じる亜希子だったが、ショッピングモールに冬期限定で開設されたスケートリンクで若いイケメンのインストラクターに誘われ、スケートを初体験。壁伝いに立つのが精いっぱいだったが、インストラクターが自分を見てくれること、久しぶりに「亜希子さん」と下の名前で呼ばれたことで、週1でのスケートクラブに通い、レッスンを受けることにした。なお、クラブでは下の名前で呼び合うことになっていてインストラクターも「涼真先生」呼び。
2か月ほどが経ち、娘は(レッスンで疲労するため)亜希子が夕方に寝てるのが多くなったのを心配し、夫は亜希子が少し痩せて綺麗になったことから、亜希子の浮気を疑いだす。会社を休んで亜希子を尾行した夫が見たのは、スケートリンクで個人レッスンを受ける亜希子の姿だった。涼真が亜希子の腰に手を伸ばしたことから声を挙げてしまい、その声に驚いて亜希子は転倒し頭を打ってしまう。特に怪我とかは無かったが、夫の意向でスケート教室を辞めることになった。
高校受験となる年に備えて、通っている塾の変更を娘に勧めてみたが、今の塾には友達もいて楽しいからと反発される。亜希子と夫は娘の成長を認識すると共に、互いの意思疎通ができていなかったことを反省。亜希子は再びスケート教室へと戻る。
次の冬。1年前にスケートを始めたばかりの亜希子は上級クラスに移ると共に、発表会では群舞を披露し、ジャンプも行えるようになっていた。

season2 「15歳、美人JKは芸能界かスケートか選べない」[編集]

2021年11月号(2021年10月1日発売)、2022年1月号(2021年12月2日発売)、2022年2月号(2022年1月4日発売)に掲載された。前中後編の全3話。単行本2巻。

登場人物
茂木 絢香(もぎ あやか)
15歳。高校1年生。東京都内の裕福なほうに分類される家庭で育ち、幼い頃からいろいろな習い事をやらされてきた。フィギュアスケートは3歳から習っており、一番のお気に入りでもある。実力も同年代では高いほうで、スケートクラブでは注目され、3回転ジャンプも修得している。モデル業も行っている。
キツめな物言いもあって、クラブの男子からの人気はイマイチ。
加藤 七海(かとう ななみ)
小学生の絢香がアイスショーに出演していたのを見て、絢香に憧れてスケートを始める。中学3年生。
絢香に追いつくのが目標であるが、家庭の事情もあってスケートは中学生で辞めることにしている。クラブの男子からの人気は高い。
清水 安奈(しみず あんな)
season1にも登場している清水亜希子の娘。アイススケートの経験は無いが、高校入学後に亜希子に連れられてスケートクラブに来たところ、絢香がクラスメイトだったことを知り、仲良くなる。
あらすじ
茂木絢香は身体の成長による体重の増加や発育によるバランスの変化と練習不足とが相まって大会では不調。女優のオーディションを受けるも不合格と全面的に調子が悪かった。学校を休んでいるときに発表された校内模試の出題範囲の勉強をするためにクラスメイトの清水安奈の家に行って勉強していたが、安奈の父親からは1つのことに打ち込んだ際のリスクの高さを指摘され、逆に自分が1つのことに打ち込んでいなかったのではないかと思い至り、モデル活動を休止し、スケート1本に取り組む。
そのかいがあってか、スケートは調子を取り戻し、ジュニア枠の地方予選に挑むことに。しかし、前夜になって絢香は神経性の胃痛により嘔吐を繰り返す。それでも、後輩の加藤七海といっしょに出れる最後の予選会だからと出場し、多少のミスはあったものの、会場の観衆からの喝采をその身に集めるのだった。

season3 「44歳、女社長がフィギュアスケートを10年続けたら」[編集]

2022年4月号(2022年3月2日発売)から同年7月号(6月2日発売)まで連載された。ep.1からep.4までの全4話。単行本3、4巻。

登場人物
年齢はep1(2002年)時点。
観音崎 麗華(かんのんざき れいか)
44歳。父親から「1番を目指せ」と言われて育ったため、大学を首席卒業後、アメリカの大学へ留学し、証券会社に就職。しかし、証券会社では1番になれないと、1998年に独立し、当時は珍しかったインターネット通販の会社を興す。この会社が好調の波に乗って発展した。
「自分でやったほうが早い」と他者に任せず自分だけでやってしまう癖があり、夫の雅彦からも注意はされている。
season2にもスケートクラブに通う大人の1人としてチョイ出演している。
雅彦(まさひこ)
麗華の夫。会社起業時からのメンバーであり、会社役員をしている。公私に渡って麗華の良きパートナーであるが、自分がスケートをやることは拒否している。
麗華の母
夫に先立たれてからは、麗華、雅彦夫婦と同居中。麗華、雅彦の2人とも仕事で忙しいため、家事を一手に引き受けている。アルツハイマー型認知症を患い、要介護1認定される。
白石 孝子(しらいし たかこ)
京浜FSCのインストラクター。麗華の個人コーチ(有料)となる。
麗華からはコーチする際の言葉が分かりやすいとされるが、自分では子供相手のコーチは上手くいかないとボヤく。
一ノ瀬 美和(いちのせ みわ)
麗華より数年遅れてクラブに入った女性。家庭の経済事情で辞めたが、新体操の経験があり、スケートは未経験ながらも、最初からそこそこできた。
season2にもスケートクラブに通う大人の1人としてチョイ出演している。
聡子(さとこ)
クラブに通う女性の1人。大人の女性陣の中では巧いほう。2010年くらいに出産し、それを機にスケートを辞めている。
あらすじ
40歳で独立起業した観音崎麗華の会社は4年経っても成績好調。雑誌の取材でインタビューを受けたものの、自分にこれといった趣味が無く、「つまらない女」と思われるのではないかと考え、近くのスケート教室に体験入会する。自分用のスケートシューズやら買いそろえていたものの、初体験のスケートはぼろぼろ。生来の負けず嫌いもあって、正式に入会することに。1年後にはお得意様を招待して発表会……などと皮算用する。
しかし、上達は「雨垂れ石を穿つ」のごとく。目標は暫時下方修正され、発表会はいつになるやら。麗華の数年後から入会した一ノ瀬美和にも抜かれようという状態。美和の提案で、教室の大人女性有志数名による群舞の発表会を行うことが、コーチの白石孝子を巻き込んで決まる。しかし、麗華の母親が要治療の認知症を患っていることが明らかになり、スケートの練習時間も減り、会社の仕事も専任できなくなった。しかし、会社のほうは他の社員に仕事を任せたことが好結果につながり、自分がフィギュアスケートを趣味にしているということも初対面の取引相手との会談が巧く行くきっかけにもなった。
麗華は試合ではない発表会なのだから「(出演する自分たちが)楽しんだら勝ち」と他のメンバーを鼓舞するが、自分は転倒による複雑骨折で出演見送りになってしまった。発表会を見て、自分もスケートを辞めようと考えていた麗華であったが、孝子が個人用フリープログラムを作ることを提案。押し切られるように麗華も承諾し、個人の発表会を最後にすると決める。
時は流れて、2012年。スケートを始めて10年となった麗華の発表会。先にスケートを辞めた仲間たち、会社の社員たち、夫の雅彦に母親の前で、麗華は滑る。
さらに時は流れ。結局、スケートを辞めなかった麗華は気が付くと、京浜FSCの最高齢メンバー。孝子と2人で「今度の入会者は続くといいね」と笑い合うのだった。

season4 「36歳、スケート男子の母親は未来のスターを育てたい」[編集]

2023年1月号(2022年12月2日発売)[1]から同年5月号(4月1日発売)まで連載された。ep.1からep.5の全5話。単行本5、6巻。

登場人物
年齢はep1(2002年)時点。
白石 孝子(しらいし たかこ)
36歳。京浜FSCでフィギュアスケートのインストラクターを務めている。
2001年に夫の浮気で離婚したバツイチ、二児の母親でもある。
幼いころからフィギュアスケートをやっており、現役選手時代は全日本フィギュアスケート選手権への出場経験もある。
season1、season2にも「たかこ先生」としてチョイ出演している。
白石 真響(しらいし まゆら)
10歳。小学4年生。孝子の娘で、教え子でもある。
孝子の親のひいき目を抜いても、基礎技術は高いが、ジャンプに難がある。
中学になる頃には伸び悩むようになり、摂食障害を引き起こし、スケートを止めることになった。高校は全寮制の学校に進み、長野県の国立大学の栄養学科へと進学する。
大学でアイススケート部に所属したことでスケートを再開。都内の委託給食製造業者に就職が決まった後、孝子にフリープログラムの作成を依頼し、日本学生氷上競技選手権大会インカレ)に出場する。
白石 涼真(しらいし りょうま)
7歳。小学1年生。孝子の息子、真響の弟。当初はサッカー少年だったが、姉と同じく孝子の下でフィギュアをやるようになる。落ち着きの無さはあったが、逆にフィギュアを習うには功を奏し、上達は早かった。
スピードがあり、姉の真響とは逆にジャンプ大好き。フィギュアを始めて2か月半でダブルアクセルジャンプ(2回転半ジャンプ)を修得する。
高校は関西のスポーツ特待制度がある高校へ進学。
season1では京浜SFCのインストラクターとなっており、大人の上級者クラスを担当している。
孝子の元夫
自分はスケートに興味もなかったのに、大学時代から孝子の応援にスケートリンクを訪れていた。結婚したものの、仕事と子育てばかりの孝子とのすれ違いから、自分を必要としてくれる女性と浮気を行い、2001年に孝子に浮気の事実を述べると共に離婚を申し出た。
離婚後、不倫相手とは再婚しておらず、独身生活を続けている。真響、涼真の養育費は滞りなく継続しており、たまに孝子とも電話はしている。
孝子の父母
母親はフィギュアスケートのガチオタ(観るほう)で、孝子にフィギュアスケートを習わせた。
母、孝子、真響でアイスショー鑑賞、父と涼真とでプロ野球観戦の予定だったが、父がギックリ腰になり、孝子は父の看病、母、真響、涼真でアイスショー鑑賞となったところ、涼真が特にジャンプに魅せられたのが、涼真がアイススケートを始めるきっかけとなった。
涼真の発表会衣装は母が作成すると共に、涼真の髪型を整えたことで、イケメン少年スケーターとして注目を浴びる。もっともジャンプで転倒し、鼻血を流しながらの演技で、そっちのほうでも長らく語り草になった。
星香(せいか)
真響と同年齢の京浜FSCの生徒。小学4年時は真響より級も下で、母親からフィギュアスケートの才能の見込みがあるのか(無いなら他の習い事をやらせる)と孝子が詰められることになったが、その後も続けている。
口では厳しいことを言いつつも、年下の涼真に教えたり、練習相手をしている。最後の大会となる日本学生氷上競技選手権大会のフリープログラムはノーミスだった。真響からは涼真を好きなことを見抜かれている。
桐野 律(きりの りつ)
真響が14歳のときに公園で出会った音大志望の高校生。真響が好きなパガニーニの曲をバイオリン演奏をしていた。律に誘われパンケーキを食べ、その後に吐いたところ体重が増加していなかったことが、真響が摂食障害になった起因ともなった。
真響が日本学生氷上競技選手権大会でフリープログラムを演じた際に演奏を録音したCDを提供する。
孝子や星香からは、真響と付き合っていると思われているが、真響本人にはその気は全くない。誰にでも優しく、周囲から好かれているところが父親(孝子の元夫)と似た性格であり、付き合うと苦労すると判断しているため。なお、真響の評では、父親の血は涼真に色濃く継がれている。
岡田(おかだ)
京浜FSCの男性インストラクター。国際大会への出場経験もある。涼真のコーチとなる。
あらすじ
昨年離婚した白石孝子はスケートのインストラクターをしながら2人の子供を育てている。当初、フィギュアに興味のなかった涼真もスケートを始めるようになった。
4年が経ち、真響は伸び悩むようになり、摂食障害を引き起こして練習中に倒れてしまい、ついにはスケートを止めることになる。
真響は大学の部活動としてスケートを再開。練習を重ね、日本学生氷上競技選手権大会(インカレ)に出場し、昔は出来なかったジャンプも披露した。

season5 「26歳、あざとい系女子とオタク女子がスケートで親友になったら」[編集]

2023年9月号(2023年8月2日発売)から同年12月号(11月2日発売)連載までされた。ep1からep4までの全4話。単行本7、8巻。

登場人物
年齢はep1(2006年)時点。
樫木 由良(かしわぎ ゆら)
26歳。「社畜」を自称するWebデザイナー。多趣味であり男性アイドルグループのライヴにも参加している。高校までは共学だったが大学は女子大。共にアイドルを語る趣味の女子友はいるが、男っ気は無い。構想段階ではダメンズな彼氏の設定もあったがテーマがブレると登場を抹消されている。
由良に誘われる形で、週1のスケートスクールに通うようになり、17年後(2024年)には大人向けのフィギュアスケート大会に出場している。
MINTS(ミンツ)
由良が追っかけてる男性アイドルグループ。ライヴではローラースケートを使用するような曲もいくつかある。
2023年までには解散、活動停止している。
田口 桃子(たぐち ももこ)
由良と同期入社の同僚。大学時代にフィギュアスケートの経験があり、由良にもフィギュアスケートを勧める。それはスケートスクールに通っているような男性なら経済的にも時間的にも余裕があるとの判断からの出会い目的であったが、実際にはスクールに通っているのは女性ばかりだった。人数合わせで連れてこられた合コンにて同じく人数合わせで連れてこられた電力会社に勤める男性と2008年にデキ婚している。結婚後は石井姓。出産後、しばらくして復職している。
石井 健二(いしい けんじ)
桃子の結婚相手。結婚してみると、マザコン気味で育児を含めて家事はまったくできず、桃子に違和感を覚えさせることになる。
東日本大震災では何日も帰宅できず電力の復旧に尽力したが(桃子に電話はしている)、それによって桃子からの印象も良くなった。
石井 陽翔(いしい はると)
桃子と健二の息子。2009年生まれ。
あらすじ
樫木由良は男性アイドルグループを追いかける自称「社畜」。会社の皆で行ったアイススケートで、高校時代だったらいじめられていたと思うような同僚田口桃子と親しくなり、京浜FSCのスケートスクールに週1で通うようになる。桃子は合コンで知り合った男性と結婚。披露宴には由良も出席し、祝辞を述べた。
桃子は出産後、子供を保育園に預かってもらえるようになると勤務時間短縮で職場復帰する。
由良は高校の同窓会などでも未婚、未出産を恩師から指摘されるようになり、桃子をうらやむ。
桃子は自分の趣味と仕事に打ち込める由良をうらやむ。
由良と桃子は互いに反発したこともあったが、互いの本音を知ったことで、より深い友情をはぐくむ。2023年、由良と桃子はフィギュアの大人向け大会で演技するまでになっていた。

脚注[編集]

  1. a b c d みづき水脈のフィギュアスケートオムニバス「楽しい人生の滑り方」が電子単行本化”. コミックナタリー (2022年11月5日). 2025年10月22日確認。