アーバンベア
アーバンベア(英語: urban bear)とは、山から下りて市街地周辺に生息するようになり、住宅街などに繰り返し出没する熊のこと[1]。
概要[編集]
従来、熊の生息地は山であるが、山から下りて人間の居住する市街地周辺に生息するようになっただけではなく、山の熊が基本的には人間を恐れ、人間の気配を警戒し熊のほうから山に入った人間を避けていたのに対し、アーバンベアと呼ばれるような熊は、人間を恐れず、人間の気配に対し警戒することもなく、熊のほうから人間に近寄り、襲いかかってくる[1]。時には、より積極的に人間を「動きが遅くて、狩りやすい獲物」として認識しているのではないかと考えられるような事例もある[1]。
これは、極端な例というわけではなく、毎日新聞の集計によると2025年4月から同年10月22日までに日本国内で熊により死傷した172人の中で、66%になる114人が市街地などの人里で被害にあっている[1]。
2025年日本での被害[編集]
2025年に日本国内で起きたアーバンベアによるものと思われる被害を以下に例示する。
- 7月12日 - 未明に北海道福島町の町役場から700メートルのところで新聞配達をしていた52歳の男性が熊に襲われて死亡[1]。
- 10月25日 - 午前9時半ごろに宮城県大崎市古川北宮沢の住宅に熊が出没し、住宅の庭で飼われていた柴犬を熊が咥えて逃げた[1]。
- 10月27日 - 午前10時43分に岩手県一関市厳美町で、自宅の庭で死亡している67歳男性の遺体が発見される[2]。
- 10月27日 - 秋田県秋田市雄和萱ヶ沢の田んぼ近くの側溝で損傷の激しい女性の遺体が見つかる[2]。後に近くに住む81歳女性と判明。
対策[編集]
アーバンベア化してしまった熊は駆除する以外に対策は存在しない[2]。
予防対策[編集]
山に棲む熊がアーバンベア化しないための対策としては、以下のようなものが検討されている。いずれも効果のほうははっきりとはしていない。
- ゾーニング - 人里と熊の生息地の間に「緩衝地帯」を設ける[2]。「緩衝地帯」では、見通し確保のために草刈りを行ったり、熊の餌となるようなゴミを収集する、離農などにより放棄された果樹を伐採するといった対策を行う[3]。
- 「モンスターウルフ」の導入 - 眼を赤く光らせ、鳴き声で威嚇を行うオオカミ型のロボットを設置する[2]。
ノンフィクションライターの窪田順生は、熊が人里に下りてくるようになった要因のひとつとして、鹿の爆発的な急激な増加を挙げている[2]。鹿の急増によって、これまで熊が冬眠前の栄養として食べていた木の実が鹿に食べられているため、山に熊の餌となるが無くなっているのである[4]。さらに鹿は木の実以外も餌とするため、樹木を皮を食して枯らしたり、背の低いササやシダを食べて消滅させ、山の土壌を壊す[4]。その結果、日本の山のいたるところでハゲ山を作っていることにもなっている[4]。
したがって、窪田は鹿を適当な数まで駆除することで、山に暮らす熊がアーバンベア化するのを予防できるとしている[4]。
なお、鹿の増加の原因は、鹿の捕食者であるニホンオオカミやエゾオオカミを人間が絶滅させたことによる[5]。
脚注[編集]
- ↑ a b c d e f 窪田順生 (2025年10月30日). “「人を食べるクマ」を山から街に追い出している“意外な動物”の正体とは?”. Yahoo!ニュース. DIAMOND online. p. 2. 2025年11月7日確認。
- ↑ a b c d e f 窪田順生 (2025年10月30日). “「人を食べるクマ」を山から街に追い出している“意外な動物”の正体とは?”. Yahoo!ニュース. DIAMOND online. p. 3. 2025年11月7日確認。
- ↑ “人は街で、ヒグマは森で。~すみ分けによる安全・安心な暮らしを目指して~ さっぽろヒグマ基本計画2023(PDF)”. 札幌市 (2023年). 2025年11月7日確認。
- ↑ a b c d 窪田順生 (2025年10月30日). “「人を食べるクマ」を山から街に追い出している“意外な動物”の正体とは?”. Yahoo!ニュース. DIAMOND online. p. 4. 2025年11月7日確認。
- ↑ 窪田順生 (2025年10月30日). “「人を食べるクマ」を山から街に追い出している“意外な動物”の正体とは?”. Yahoo!ニュース. DIAMOND online. p. 5. 2025年11月7日確認。
外部リンク[編集]
- 「人を食べるクマ」を山から街に追い出している“意外な動物”の正体とは? - DIAMOND online(脚注にしたYahoo!ニュースと同じだが、こちらは有料記事)