アメリカ陸軍航空軍
アメリカ陸軍航空軍(アメリカりくぐんこうくうぐん、英語: United States Army Air Forces, 略称: USAAF)は、第二次世界大戦中のアメリカ合衆国の主要な航空戦力である。1941年6月20日にアメリカ陸軍航空隊(United States Army Air Corps)を拡充・改編する形で設立され、1947年9月18日にアメリカ空軍(United States Air Force)として独立するまで存在した。
概要[編集]
アメリカ陸軍航空軍は、第二次世界大戦における連合国側の勝利に大きく貢献した。その任務は、戦略爆撃、戦術航空支援、輸送、偵察など多岐にわたり、ヨーロッパ戦線と太平洋戦線の双方で重要な役割を果たした。特にドイツ本土への戦略爆撃や、日本本土への空襲、原爆投下は、その後の戦争の展開に決定的な影響を与えた。
歴史[編集]
前身[編集]
アメリカ陸軍の航空部隊は、1907年に設立されたアメリカ陸軍通信隊の航空部門にルーツを持つ。その後、航空セクション、航空サービス、陸軍航空隊と改称され、徐々にその規模と重要性を増していった。特に1930年代後半には、欧州における戦争の危機感が高まる中で、航空戦力の拡充が急務と認識された。
設立と拡大[編集]
1941年6月20日、大統領令によりアメリカ陸軍航空隊と陸軍総司令部の航空関連部門が統合され、アメリカ陸軍航空軍が正式に設立された。初代司令官にはヘンリー・H・アーノルド陸軍大将が就任した。設立当初は約26,000人であった人員は、第二次世界大戦末期には240万人以上にも達し、約8万機の航空機を保有する世界最大の空軍組織へと成長した。
第二次世界大戦における活動[編集]
第二次世界大戦中、アメリカ陸軍航空軍は世界中の戦域で活動した。
- ヨーロッパ・アフリカ・中東戦域:イギリスを拠点にドイツ本土への昼間戦略爆撃を実施。イギリス空軍の夜間爆撃と連携し、ドイツの工業生産力と士気を低下させた。ノルマンディー上陸作戦では、地上部隊への航空支援において重要な役割を果たした。
- 太平洋戦域:日本との間で激しい航空戦を展開。初期はフィリピンや中国を拠点とし、その後はマリアナ諸島に進出し、B-29爆撃機による日本本土への大規模な戦略爆撃を行った。硫黄島や沖縄戦においては、上陸部隊への近接航空支援を行った。1945年8月には、広島市への原子爆弾投下および長崎市への原子爆弾投下を実行し、戦争終結に大きく貢献した。
終戦と解体[編集]
第二次世界大戦終結後、アメリカ陸軍航空軍は急速に規模を縮小した。しかし、航空戦力の重要性は依然として認識されており、陸軍から独立した空軍の創設が提唱された。
アメリカ空軍への独立[編集]
1947年9月18日、国家安全保障法 (1947年)の成立により、アメリカ陸軍航空軍は陸軍から独立し、アメリカ空軍(United States Air Force)として新たな道を歩み始めた。これにより、アメリカ合衆国は陸軍、海軍、空軍の三軍体制を確立した。
豆知識[編集]
- アメリカ陸軍航空軍は、その短期間の歴史の中で、数多くの航空機を運用した。代表的な機種としては、P-51 マスタング、P-47 サンダーボルト、B-17 フライングフォートレス、B-24 リベレーター、そしてB-29 スーパーフォートレスなどが挙げられる。
- 日本本土への戦略爆撃で知られるカーチス・ルメイは、第二次世界大戦末期に太平洋陸軍航空軍の司令官を務めた。彼の指揮下で、日本の主要都市に対する焼夷弾爆撃が大規模に行われた。
- 第二次世界大戦中、アメリカ陸軍航空軍は多くの女性を従事させた。WASP (Women Airforce Service Pilots)として知られる女性パイロットたちは、航空機の輸送や試験飛行を行い、男性パイロットを前線に送る上で重要な役割を果たした。
関連項目[編集]
参考書籍[編集]
- Maurer, Maurer. Air Force Combat Units of World War II. Maxwell AFB, Alabama: Office of Air Force History, 1983. ISBN 0-89201-092-4.
- Copp, DeWitt S. Forged in Fire: Strategy and Decisions in the Air War over Europe, 1940-1945. New York: Doubleday, 1982. ISBN 0-385-17937-2.