P-47 サンダーボルト
P-47 サンダーボルト(英語: P-47 Thunderbolt)は、第二次世界大戦中にアメリカ合衆国のリパブリック社が開発し、アメリカ陸軍航空軍などで運用された単座の戦闘機である。その堅牢な構造と強力な武装、優れた急降下性能から、「ジャーグノート(Juggernaut、圧倒的な力を持つもの)」の愛称で親しまれた。
開発[編集]
P-47の開発は、リパブリック社がP-43 ランサーの後継機として開発していたP-44 ロケット計画に端を発する。しかし、欧州戦線の状況から、より重武装で高高度性能に優れた戦闘機が求められるようになり、P-44の計画は中止された。
リパブリック社の主任設計者であるアレクサンダー・カートヴェリは、液冷エンジンを搭載した高高度戦闘機「AP-4」案を提示したが、供給の不安定さから空冷エンジンの搭載が決定された。これに伴い、設計は大幅に変更され、強力なR-2800 ダブルワスプエンジンを搭載する機体として、XP-47Bが誕生した。XP-47Bの初飛行は1941年5月6日に行われた。
特徴[編集]
P-47の最大の特徴は、その巨大な機体と大出力エンジン、そして頑丈な構造である。空冷エンジンを搭載するために胴体は太く、大量の弾薬を搭載可能であった。武装は、当初は機首に2丁のM2重機関銃を装備していたが、後に片翼に4丁ずつ、合計8丁のM2重機関銃を装備するようになった。この重武装は、敵機を短時間で撃破する能力を与えた。
また、排気タービンを搭載し、高高度性能に優れていたことも特筆される。排気タービンは胴体後部に配置され、長大な排気ダクトが機体下面を通っていた。これにより、高高度でもエンジンの出力低下を抑え、安定した性能を発揮できた。
初期生産型であるP-47BからP-47Dにかけて改良が加えられた。特にP-47Dの生産数は多く、バブルキャノピーの採用による後方視界の改善、外部燃料タンクや爆弾の搭載能力の向上など、様々な改修が施された。これにより、P-47は単なる戦闘機としてだけでなく、戦闘爆撃機としても大きな威力を発揮することとなる。
戦歴[編集]
P-47は、1942年から部隊配備が開始され、1943年初頭にはヨーロッパ戦線に投入された。当初は、航続距離の短さからB-17などの爆撃機の護衛任務には不向きとされたが、増槽の装備によって航続距離の問題は解消されていった。
ヨーロッパ戦線では、主にドイツ空軍機との空中戦や、地上目標への機銃掃射、爆撃任務に従事した。P-47は頑丈な機体と強力な武装から、ドイツ空軍のBf109やFw190に対しても有利に戦うことができた。特に急降下性能に優れ、一撃離脱戦法を得意とした。
太平洋戦線でも、ビルマや中国などで運用され、日本軍の航空機や地上目標に対して活躍した。特に、爆弾搭載能力の高さから、地上支援任務においてその真価を発揮した。
総生産数は15,686機に達し、これはアメリカの戦闘機としてはP-51 マスタングに次ぐ生産数である。P-47は、第二次世界大戦における連合国軍の勝利に大きく貢献した機体の一つと言える。
バリエーション[編集]
- XP-47B: 試作機。
- P-47B: 初期生産型。
- P-47C: 生産型。胴体の延長などの改修。
- P-47D: 主力生産型。バブルキャノピーの採用、外部搭載能力の強化など多数のバリエーションが存在する。
- P-47E: 写真偵察型(計画のみ)。
- P-47F: 水冷エンジン搭載型(計画のみ)。
- P-47G: ノース・アメリカン社でのライセンス生産機。
- XP-47H: スキンナーエンジン搭載試験機。
- XP-47J: 軽量化、高出力エンジン搭載の試作機。最高速度700km/h以上を記録。
- P-47M: 高速迎撃機型。ドイツのジェット機に対抗するために開発された。
- P-47N: 長距離護衛戦闘機型。翼面積の拡大、追加燃料タンクの搭載など。
豆知識[編集]
P-47は、その巨体と頑丈さから「ボトル(瓶)」というニックネームでも呼ばれていました。これは、コカ・コーラの瓶に似ていることからつけられたと言われています。また、頑丈な構造から、多少の被弾では平気で帰還し、パイロットからは「タンク(戦車)」とも呼ばれていました。
関連項目[編集]
参考書籍[編集]
- 航空ファン別冊 傑作機シリーズ No.3 「P-47 サンダーボルト」 文林堂
- 世界の傑作機 No.108 「P-47 サンダーボルト」 文林堂
- 図解 P-47 サンダーボルト (メカニックブックス) 飯塚 竜哉 グループ・アイランド
- 第2次大戦のアメリカ軍用機 (世界の軍用機メカニズム図鑑) 野原 茂 文林堂