M151 MUTT
M151は、フォードによって開発され、アメリカ陸軍をはじめとするアメリカの軍隊で1960年代から1990年代にかけて運用された四輪駆動の軍用車両である。通称として「MUTT」(Military Utility Tactical Truck の頭文字)と呼ばれる。
概要[編集]
M151は、第二次世界大戦から朝鮮戦争にかけて使用されたウィリス製のMBやM38、M38A1といったジープの後継として開発された。1950年代にフォード・モーターが開発を担当し、1959年から生産が開始された。
M151は、それまでのジープとは異なるモノコック構造(ユニボディ構造)を採用しており、独立懸架方式のサスペンションを備えている点が大きな特徴である。これにより、オフロード走行時の安定性と乗り心地が大幅に向上した。また、ステアリングの操作性も改善された。
生産はフォードに加えてAMゼネラルでも行われ、ベトナム戦争中に大量に投入された。その後も改良が加えられ、湾岸戦争に至るまで使用され続けた。しかし、M151は横転事故の危険性が指摘されることがあり、特に後期のモデルではこの問題に対処するための改良が施された。
派生型[編集]
M151には、その運用期間中にいくつかの派生型が開発された。
- M151A1:初期生産型であるM151の改良型。主に電気系統の改善が行われた。
- M151A2:最も extensively に生産された型で、後輪の独立懸架の改良により、安定性が向上した。これまでの「ピボット・スプリング」式から「セミ・トレーリング・アーム」式に変更された。横転事故の問題への対策が施された。このモデルは1970年代から運用が開始された。
- M151A2 TOW Carrier:BGM-71 TOW対戦車ミサイルを搭載するために改造されたM151A2。
- M718 Ambulance:M151をベースにした野戦救急車型。後部を延長し、担架を収容できるようにした。
- M825 TOW Carrier:M151の派生型で、TOWミサイルランチャーを搭載するために特化されたモデル。
運用国[編集]
M151は、アメリカ合衆国以外にも多くの国で運用された。
後継[編集]
M151の後継としては、1980年代半ばからAMゼネラル製のHMMWV(ハンヴィー)が本格的に導入された。ハンヴィーはM151よりも大型で積載能力も高く、より汎用的なプラットフォームとして設計された。これにより、M151は徐々に第一線から退役していった。しかし、一部の国や特殊部隊などでは、2000年代以降も限定的に運用されている場合がある。
豆知識[編集]
M151は、その堅牢性と優れた悪路走破性から、民生用としても非常に人気が高く、退役車両が払い下げられ、オフロード愛好家やコレクターの間で取引されている。しかし、公道走行を目的として設計されていないため、特に初期モデルの横転特性には注意が必要である。また、アメリカ軍の払い下げ車両は、民間での使用を制限するために車体を切断されて販売されることが多く、完全な状態で払い下げられることは稀である。
関連項目[編集]
参考書籍[編集]
- 『世界の軍用車両』イカロス出版、2009年。
- 『ミリタリービークルズ』学習研究社、各号。
- Patrick H. Maas. M151 MUTT: The Military Utility Tactical Truck in Detail. Enthusiast Books, 2004. ISBN 978-1583881026.