小型軍用車両 Kfz 15

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Kfz 15は、第二次世界大戦中にドイツ国防軍で運用された小型軍用車両の一種である。主に伝令偵察連絡、人員輸送などに使用された多目的車両であった。

概要[編集]

Kfz 15は、ドイツ国防軍の標準化された車両体系において、中型乗用車に分類される車両に付与された型番である。この型番の下には、複数の自動車メーカーが製造した異なる車種が含まれていたが、特に有名なのはホルヒ社製の車両である。

1930年代、ドイツ国防軍は急速な機械化を進める中で、様々な用途に対応できる統一規格の軍用車両を求めていた。これにより、従来の民間車両の改造ではなく、軍事的な要求を満たすための専用車両が開発されることになった。Kfz 15もその一環として開発され、不整地での高い走破性と信頼性が求められた。

開発と生産[編集]

Kfz 15の制式名称は「mittlerer geländegängiger Personenkraftwagen」(中型不整地走行乗用車)であり、様々なメーカーがこの要件を満たす車両を生産した。主要な生産メーカーは以下の通りである。

これらのメーカーはそれぞれ独自のデザインを持っていたが、共通して四輪駆動(4x4)を採用し、悪路での高い機動性を確保していた。生産は1937年から開始され、戦争中期まで継続された。総生産台数は約12,000両以上と推測されている。

バリエーション[編集]

Kfz 15は、基本的な人員輸送型の他に、様々な派生型が存在した。

  • 指揮連絡車:無線機などを搭載し、指揮官の移動や部隊間の連絡に使用された。
  • 偵察車:前方偵察任務に用いられ、一部には機関銃MG34など)が搭載可能なリングマウントが装備された車両も存在した。
  • 無線車:大型の無線機を搭載し、通信拠点として運用された。
  • 救急車:軽度の負傷兵の輸送にも使用された。

これらのバリエーションは、基本的なシャーシを共有しながら、任務に応じて様々な装備が追加された。

戦歴[編集]

Kfz 15は、第二次世界大戦の開戦から終戦まで、ドイツ国防軍の全ての戦線で運用された。ポーランド侵攻フランス侵攻バルカン戦線東部戦線北アフリカ戦線など、あらゆる戦場でその姿を見ることができた。

その高い走破性と信頼性は、前線の兵士や指揮官にとって不可欠な存在であった。特に、悪路の多い東部戦線や砂漠地帯の北アフリカ戦線では、その性能が遺憾なく発揮された。伝令任務、偵察任務、部隊間の連絡、負傷兵の搬送など、多岐にわたる任務に従事し、ドイツ軍の作戦遂行を支えた。

しかし、戦争後期になると、連合国軍の空襲や物資不足により、新たな車両の生産は減少していった。また、より大型で装甲化された車両が求められるようになるにつれ、Kfz 15のような非装甲車両は、危険度の高い任務からは徐々に姿を消していった。それでも終戦まで、後方支援や連絡任務において重要な役割を果たし続けた。

現存車両[編集]

現在でも、いくつかのKfz 15が世界中の博物館や個人コレクターによって保存されている。レストアされた車両がイベントなどで走行する様子も見られる。これらは、第二次世界大戦におけるドイツ国防軍の車両技術の一端を示す貴重な文化遺産となっている。

豆知識[編集]

  • Kfz 15の「Kfz」はドイツ語の「Kraftfahrzeug」の略で、「自動車」を意味する言葉である。
  • ホルヒ 901は、映画やドキュメンタリーなどでドイツ軍車両として頻繁に登場する。
  • 不整地での走破性を高めるため、多くのKfz 15は前後輪だけでなく、車体中央にも予備タイヤが取り付けられていた。これにより、車体が地面に乗り上げるのを防ぎ、障害物を乗り越える際に役立った。

関連項目[編集]

参考書籍[編集]

  • Spielberger, Walter J. 『Die deutschen Militärfahrzeuge: 1900-1945』 Motorbuch Verlag、1982年(de)。ISBN 978-3879436449
  • Milsom, John 『German Military Vehicles of World War II』 Arms and Armour Press、1970年(en)。ISBN 978-0853681284