AH-1 コブラ

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AH-1 コブラ(AH-1 Cobra)は、アメリカベル・ヘリコプター(現在のベル・テキストロン)社が開発した攻撃ヘリコプターである。世界初の本格的な攻撃ヘリコプターとして知られ、ベトナム戦争から現代に至るまで多くの紛争で使用されてきた。

開発経緯[編集]

AH-1の開発は、ベトナム戦争におけるヘリボーン戦術の導入と深く関連している。UH-1 イロコイなどの輸送ヘリコプターが兵員輸送に活躍する一方で、それらを護衛し、敵の対空砲火を制圧するための武装ヘリコプターの必要性が高まっていた。

1962年、アメリカ陸軍は「空中火力支援システム(Aerial Fire Support System, AFSS)」の研究を開始し、武装ヘリコプターの概念を検討した。これを受けてベル社は、自社の汎用ヘリコプターであるベル 204(軍用型はUH-1)のコンポーネントを流用し、機体をスリム化して攻撃に特化した「モデル 209」を開発した。

モデル 209の試作機は1965年9月7日に初飛行し、その優れた性能が評価された。同年、アメリカ陸軍はAH-1Gとして正式採用を決定。1967年6月には最初の量産型が部隊配備された。

特徴[編集]

AH-1 コブラの最大の特徴は、その細身の胴体とタンデム配置のコックピットにある。パイロットと射撃手が前後に座ることで、機体前面投影面積を最小限に抑え、被弾率の低下と高速化を実現した。武装は機首のターレットに搭載され、機関砲や機関銃、ロケット弾、対戦車ミサイルなどを運用できる。

当初はUH-1と同じライカミング T53エンジンを搭載していたが、後には双発化やより強力なエンジンへの換装が進められ、派生型が多数登場した。

派生型[編集]

AH-1 コブラには、様々な派生型が存在する。

  • AH-1G ヒューイコブラ:初期生産型。単発エンジン。主にベトナム戦争で運用された。
  • AH-1J シーコブラ:アメリカ海兵隊向けの初期型。双発エンジンを搭載し、海上での運用能力を向上させた。
  • AH-1Q/S コブラ:対戦車ミサイルBGM-71 TOWの運用能力を付与した型。
  • AH-1W スーパーコブラ:より強力なゼネラル・エレクトリック T700エンジンを搭載し、性能を大幅に向上させた型。海兵隊の主力攻撃ヘリコプターとして長く運用された。
  • AH-1Z ヴァイパー:AH-1Wの近代化改修型で、ローターブレードを4枚に、電子機器を大幅に更新した最新型。アメリカ海兵隊で運用されている。
  • AH-1S コブラ(陸上自衛隊)陸上自衛隊が運用する型で、AH-1Sに相当する。ライセンス生産された。
  • AH-1S(海上自衛隊)海上自衛隊第21航空群で、標的曳航機として運用された経歴を持つ。

運用国[編集]

AH-1は、アメリカ合衆国以外にも多くの国で運用されている。

実戦での活躍[編集]

AH-1は、ベトナム戦争においてその真価を発揮した。武装輸送ヘリコプターの護衛や地上部隊への近接航空支援に投入され、多大な戦果を挙げた。その後もイラン・イラク戦争湾岸戦争イラク戦争アフガニスタン紛争など、様々な紛争地域で活躍した。

性能諸元(AH-1W スーパーコブラ)[編集]

  • 乗員: 2名(パイロット、副操縦士/射撃手)
  • 全長: 17.7 m(ローター含む)
  • ローター直径: 14.6 m
  • 全高: 4.3 m
  • 空虚重量: 5,100 kg
  • 最大離陸重量: 6,690 kg
  • 発動機: ゼネラル・エレクトリック T700-GE-401C ターボシャフトエンジン × 2基
  • 出力: 各1,723 shp (1,285 kW)
  • 最大速度: 352 km/h
  • 巡航速度: 278 km/h
  • 航続距離: 648 km
  • 実用上昇限度: 3,720 m
  • 武装:

豆知識[編集]

  • AH-1 コブラは、映画『地獄の黙示録』や『ランボー/怒りの脱出』など、多くの映画に登場している。
  • その独特なシルエットから、「スネーク」(蛇)の愛称で親しまれている。
  • AH-1の設計は、その後の攻撃ヘリコプターの設計に大きな影響を与えた。

関連項目[編集]

参考書籍[編集]

  • 『世界の軍用ヘリコプター』 イカロス出版, 2011年
  • 『軍用機ファイル AH-1 コブラ』 秀和システム, 2010年