鬼丸大将
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『鬼丸大将』(おにまるたいしょう)は、手塚治虫による時代劇漫画。
『週刊少年キング』(少年画報社)において、1969年1月1日号から同年6月29日号まで連載された。単行本は1974年に双葉社パヴァコミックスから全2巻で刊行されたのが初となる。
酒呑童子、茨木童子、羅生門の鬼、平将門の乱あたりを題材にした漫画作品。
あらすじ[編集]
- 序章《鬼しばり》
- 奴隷ローマ人だった男はシルクロードを東へ渡り歩き、日本へと流れ着いた。
- 第1章《鬼っ子》
- ローマ人を父に持つ鬼丸は母親思いのやさしい子だったが、周囲からは鬼の親子と呼ばれ、比良の山奥に隠れ住んでいた。藤原良範、渡辺綱に率いられた兵団に親子は捕らえられてしまう。
- 第2章《鬼の念仏》
- 親子は六波羅に連れていかれ,さらし者にされる。母親の機転で鬼丸だけは脱出できたが、父母は磔の刑に処された。
- 父母を助けようとした鬼丸は再び捕らえられるが、鬼丸が風聞のような「鬼」でないと見抜いた相馬小次郎によって助け出される。
- 第3章《鬼が棲むか蛇が棲むか》
- 良範の娘・春菜を人質として鬼丸は羅生門へと立てこもった。春菜は鬼丸のことが憎めずに、小次郎ともども鬼丸が逃げる手助けをする。
- 第4章《鬼の目にも涙》
- 良範が鬼丸の両親を処刑しようとし、鬼丸は馬の大群を引き連れて阻止しようとする。しかし、両親は命を落とし,鬼丸は三度捕らえられる。
- 鬼丸は拷問を受け続ける。
- 第5章《鬼に金棒》
- 鬼丸が拷問を受け続け、365日が経過。この間も鬼丸の身体は異常とまでに大きく成長していた。
- 小次郎が牢屋に潜入し、鬼丸を東国へと誘うが、両親の仇である良範を殺すために鬼丸は断った。
- 春菜から、鬼丸の両親のどちらかが生きており,東国へつれられたと聞かされた鬼丸は牢を脱走する。
- 第6章《鬼を欺く》
- 小次郎たちと東国へ向かう鬼丸であったが、途中、肌の黒い別の鬼と出会う。その肌の黒い鬼が小次郎を殺そうとしたため、鬼丸は肌の黒い鬼は殺してしまう。
- 第7章《鬼を酢にして食う》
- 鬼丸は、東国への旅の途中、だいだら坊という男に出会った。だいだら坊は鬼丸の母を匿っており、鬼丸ともども気に入っていた。鬼丸とだいだら坊は戦い、母親を返そうとしたが、だいだら坊の気持ちを知った鬼丸は、母親を残し、小次郎たちとの旅を続けた。
- 第8章《鬼の居ぬ間》
- 丹沢砦には、良範の密書が保管されており、その中には都をのっとるための連判状が含まれていた。鬼丸は密書を入手する。
- 第9章《鬼も十八番茶も出花》
- 東国で組む小次郎、鬼丸たちは砦を組み、だいだら坊の一党が手助けした。
- 東国の砦を渡辺綱の軍勢が取り囲み、春菜が鬼丸を追って砦に入り込む。
- 第10章《鬼をもひしぐ》
- 良範の密書を見せられた渡辺綱は撤退を考えるが、だいだら坊の部下が放った矢によって戦は再開。小次郎たちの旗色が悪くなる。
- 第11章《鬼の首をとる》
- 旗色の悪くなった戦いに嫌気を覚えた小次郎たちの配下の農民たちは砦を立ち退いていく。
- 鬼丸は良範の密書を持って都へ行くように春菜に話して、砦の外に出した。
- 渡辺綱の軍勢の攻勢によって、砦は陥落。小次郎、だいだら坊は命を落とす。鬼丸は渡辺綱と一騎打ちをするが、右腕を失うことになる。
- 第12章《鬼が笑う》
- 鬼丸は島流しとなり、引き廻しの途中で母親と再会する。母親は巫女になりすまし、綱の元にあった鬼丸の右腕を奪い返したが、斬られて、鬼丸の右腕と共に海へと落ちた。
- 第13章《鬼やらい》
- 島へ流された鬼丸のもとに春菜がやって来た。密書の件で裁きが下り、良範がこの島へ流されてくる。
- 鬼丸は島を出る決心をし、春菜も鬼丸についていくのだった。
登場人物[編集]
- 鬼丸(おにまる)
- ローマ人を父に、日本人を母に持つ金髪碧眼の少年。
- 山奥に隠れ住んでいたときも、しばしば人里に下りて暴れていたこともある。母親が病衣になった際には山を3つ越えて薬草を取ってくるといった親思いの一面もある。
- 成長して、通常の人間の倍近い身の丈、巨体にふさわしい怪力、屈強な肉体を持ち、不屈の精神を宿す。その一報で純粋さも残しており、両親の仇・藤原良範の娘でありながら自分を助けてくれる春菜に、淡い想いを抱く。
- パーちゃん
- パーちゃんは鬼丸からの呼称。
- 鬼丸の父親。もともとはローマの軍人で、サラセン人の捕虜となり、奴隷としてシルクロードを東へ連れてこられたが、船に乗せられた際に海へ飛び込んで逃げ、日本へたどり着いた。
- 比良の山奥にローマ風の岩屋を建て、妻のぬい、息子の鬼丸と一緒に暮らしていた。
- マーちゃん
- マーちゃんは鬼丸からの呼称。
- 鬼丸の母親。里に住む「ぬい」という名の娘だったが、パーちゃんにさらわれる形で夫婦となった。そういう始まりではあったが、息子ともども夫も深く愛している
- 穏やかで優しい性格をしているが、芯は強く、藤原良範に生け捕りにされた際には、夫と鬼丸を助けるため、牛に毒草を食わせて暴れさせるなどもしている。
- 相馬 小二郎(そうま こじろう)
- 常陸国相馬領を治めていた相馬一族の跡取り。父親の
相馬良将 ()の代に、政府により領地を取り上げられていた。左大臣・藤原仲平に領地復興のとりなしを願い出てるため、京都にやって来ていたが、地領の担当官が藤原良範だったため、領地が返されないどころか、良範からは「流刑者の一族」と侮辱されてしまう。 - 自分同様に「鬼」と呼ばれる鬼丸に共感を覚え、手助けを行うようになり、友情を育む。相馬領再興を願う小二郎に、鬼丸は都の政府を敵に回して最後まで戦うこと誓い合う。
詳細は「平将門」を参照
- 藤原 良範(ふじわら よしのり)
- 宮廷で権力を握る貴族の1人。出世欲旺盛で、「都を騒がす鬼」を退治して英雄になろうと鬼丸たちの隠れ住む家を急襲する。
- 狡猾で残忍な性格をしており、大勢と謀って、政府を転覆の陰謀を企てている。陰謀を知ることになった鬼丸と小二郎を始末しようと兵を送った。
- 藤原良範(藤原純友の乱で知られる藤原純友の父親)は実在の人物であるが、人物像はかなり変更されている。酒呑童子の討伐は源頼光である。
- 渡辺 綱(わたなべの つな)
- 「都一の弓の達人」と名高い武将。剣の腕も達人。
- 藤原良範に従って鬼丸一家を襲撃したが、義に篤い実直な人物であり、良範の卑劣な行いを諫めることもある。
- 鬼丸の父親の処刑した際に、鬼ではなく人間であることを悟っており、東国で鬼丸と小二郎たちが率いる軍と対峙した際には、降伏を勧めている。
- 藤原 春菜(ふじわら はるな)
- 藤原良範の娘。逃亡した鬼丸が羅生門に立てこもった時に偶然通りかかったことで、鬼丸にさらわれて人質となったが、鬼丸と接するうちに心を通わせるようになり、羅生門からの脱出にも力を貸した。
- 父親を慕ってはいるが、鬼丸にも心惹かれており、最終的には鬼丸を選択する。
- だいだら坊 (だいだらぼう)
- 富士山の近辺に根城を構え、ならず者たちの軍団を率いる男性で「ばけものの親玉」と評される。
- 鬼丸の父親と同様に遠い国から流されて日本にたどり着いており、故郷の妻子とは10年も会っていない。
- 見た目と違い、情に厚い人物で、秘かに鬼丸の母親・マーちゃんをかくまっていて、鬼丸が訪ねてきた際には仲間になるよう誘った。マーちゃんが別れた妻と生き写しだったこともあり、マーちゃんに妻になってほしいと頼んだ。
- 都の軍勢と戦う際には、鬼丸にからマーちゃんのことを託されたが、だいだら坊は小次郎、鬼丸に加勢して共に砦に立てこもって戦うことを選んだ。
- アブアボ
- 葛城山の山中に隠れ住んでいた肌の黒い「鬼」。
- 身体が大きく、ブーメランを得意とする。鬼丸と相馬小二郎が東国へ向かう途中に出会った。
- 言葉が通じず、絵やジェスチャーでコミュニケーションを取り、鬼丸には心を開いたが、小二郎に対しては強い敵意を示した。小次郎に襲いかかったため、鬼丸はアブアボと戦わざるを得なくなった。
外部リンク[編集]
- 鬼丸大将 - 手塚治虫公式サイト