隷書

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

隷書(れいしょ)は、漢字書体の一つであり、古代中国において篆書を簡略化した実用的な筆記体として誕生した。主に秦代から漢代にかけて使用され、後の楷書行書の基礎となった。現代の書道においても、古典的な美しさを持つ書体として高く評価されている。

概要[編集]

隷書は、篆書の複雑な筆画を簡略化し、より速く書けるように工夫された書体である。字形は横長で、角張った線と独特の筆遣いが特徴。特に「波磔」と呼ばれる横画の終筆の装飾的な払いが隷書の象徴的な技法とされる。

歴史[編集]

隷書の起源は戦国時代末期から秦代にかけて登場した「古隷」にさかのぼる。これは篆書の複雑な筆画を簡略化したもので、主に役所や軍事の文書に用いられた。前漢から後漢にかけて、隷書は正式な書体として確立され、「八分隷」と呼ばれる形式が主流となった。これは碑文や公文書に広く使用され、均整の取れた美しい字形が特徴である。後漢末期以降、隷書は楷書や草書へと発展し、日常筆記の主流からは退いたが、芸術的価値を持つ書体として書道の中で継承されている。

特徴[編集]

隷書の字形は横長で扁平、左右対称の構造を持つ。筆画は角張っており、縦画と横画が明確に区別される。最大の特徴は「波磔(はたく)」と呼ばれる横画の終筆の払いで、三角形状の装飾的な筆遣いが見られる。これは隷書の美的要素として重視される。筆遣いは「中鋒」で線の中心を通すように書かれ、起筆には「逆筆」や「蔵鋒」が用いられる。運筆は一定の速度で行われ、線に強弱が少ないのも特徴である。