貨物自動車

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貨物自動車(かもつじどうしゃ)とは、トラックバンのような貨物の運搬を主な目的とする自動車である。貨物車と表記されることもある。本項においては主に日本における貨物自動車について記述する。

概要[編集]

貨物自動車は貨物の運送の用に供する自動車であり、貨物の積載に適した構造を有しているのが特徴である。具体的な要件は後述するものの、乗員スペースよりも貨物を積載するスペースの割合が長い、バンの場合は一定以上の開口部面積を有するなど、条件を満たしたうえで貨物の運送を目的として登録された自動車が貨物自動車である。なお、大日本帝国では自動貨物貨車と称した。

貨物自動車のうち、エンジンや車体サイズが小型自動車のサイズを満たしたものは小型貨物自動車となり、所謂4ナンバー登録となる。それ以上の大きさの場合、ほとんどは普通貨物自動車(1ナンバー登録)となる。また、軽自動車規格を満たした貨物自動車は軽貨物車となる。そのほかにミキサー車霊柩車のような特種用途自動車(8ナンバー登録)も存在する。普通貨物自動車はあらゆる貨物の運搬に使用されるほか、小型貨物自動車や軽貨物車は小口配送やラストワンマイル配送の他、事業者が自社の機材を運搬する機材車として使用されることも多い。軽トラックなどは農家でもよく使用されるものである。

事業用貨物自動車と自家用貨物自動車ではナンバーが異なっており、事業用貨物自動車は緑に白字、軽の場合は黒に黄色字のナンバープレートが交付される。自家用の場合は乗用自動車と同じ白に緑字、軽の場合は黄色に黒字である。

重い貨物を積載することもあり、車検が年1回(新規のみ2年。軽貨物車は2年に1回)であったり、装着できるタイヤの条件が厳しいなど、一般の乗用自動車と異なる点も多い。しかし、一部のステーションワゴンピックアップトラックSUVなどは税金の安さなどの維持費の低コスト化のために用途変更するユーザも少なくない。

事業[編集]

貨物自動車を用いて他人の貨物を輸送するためには貨物自動車運送事業法に定められた一般貨物自動車運送事業や軽貨物運送事業などの許認可等が必要になる。この中で不特定多数の荷物を取り扱う一般貨物自動車運送事業と特定の荷主の荷物を扱う特定貨物自動車運送事業は国の許可が必要であり、専任の運行管理者の配置や整備管理者、そして実際に貨物を運送するための車両を5台以上用意する(取得予定含む)必要があるなど、開業に至るハードルは高い。一方の軽貨物運送事業は運輸支局に対する届出でよく、1台の軽貨物車があれば開業できるものである。

これらの運送業は日本の物流を支える重要な産業であるが、拘束時間や仕事の負担に対する報酬が見合わない点など、働き手から魅力がない、もしくはデメリットを超えるメリットを見いだせないことなどから若年層から忌避されがちな職業でもある。政府なども労働時間の上限規制などを行うが、そもそもの根本的な原因(荷主問題など)を解決しないことにはドライバーの負荷が強まるだけという意見も多い。

なお、自動車の「事業用車」と鉄道車両の「事業用車」では意味が異なるので注意されたい。

詳細は「事業用車」を参照

免許[編集]

所持している運転免許証により運転できる貨物車もおのずと変わってくる。ライトバンであればほとんどの車種が2025年3月時点での普通運転免許証で運転できるが、トラックなどではその車両に合った運転免許証が必要となってくる。一見すると外見からはわかりにくいものもあるため、運転席に免許区分を示すステッカーが貼られていることもある。

トレーラーのように、大型自動車運転免許とけん引免許の両方が必要となるものや、ダブル連結トラックのように特殊な要件[注 1]を与えているものもある。

山口県にある宇部興産専用道路[1]は閉鎖された私道であるため、本来ならば無免許で自動車を運転できるが、公道でも運転するため社内規定ではここで運行されているダブルストレーラーを運転するには大型一種免許とけん引免許が必須要件となっているほか、社内講習を修了した者のみが乗務できることになっている。

2024年12月時点において、普通自動車運転免許で運転できるトラック(軽トラックやピックアップを除く)はいすゞ・エルフミオのみであった。また、2017年の法改正によりフォード・Fなどの一部のピックアップトラックが改正後に取得した普通自動車運転免許で運転することが出来なくなった。

要件[編集]

国土交通省による通達[2]によれば、貨物自動車として登録する場合は以下の条件を満たす必要がある 。

  • 荷室の床面積が1㎡以上であること[注 2]
  • 定員まで乗車した場合において、残った荷室部分の床面積が乗車スペースの床面積よりも大きいこと。
  • 定員まで乗車した場合において、その時の乗員の重量(55kg×人数)よりも重い荷物を荷室に積めること。
  • 平ボディ(幌付き含む)以外において、有効長が800mm×800mm以上[注 3]の開口部が側面か後方にあること。
  • 座席と荷室の間に隔壁や保護のための仕切りを備えて乗員が保護される構造になっていること(最大積載量が500kg以下の場合は座席で乗員が保護できる構造になっていること)。

この条件を満たし、かつサイズやエンジンが小型自動車の要件を満たせば小型貨物自動車(4ナンバー)となり、それ以外の場合は普通貨物自動車(1ナンバー)となる。

また、トレーラーヘッドの場合はセミトレーラーをけん引できる連結装置を備えていることも必要と定義されている。

特殊用途自動車においても特定の貨物の運搬を目的としたものが定義されており、霊柩車現金輸送車などが定義されている。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. かつては採掘場からセメント製造工場まで美祢線経由による石灰石輸送の貨物列車が頻発運転していたが日本国有鉄道の頻発する運賃値上げとストライキによって建設された経緯がある。この道路は会社の専用道路であるが、近年、産業観光のために見学者によるバス運行が行われている。
  2. https://www.jidoushatouroku-portal.mlit.go.jp/assets/pdf/youtokubun.pdf 自動車の用途等の区分について(依命通達)

注釈[編集]

  1. 大型自動車運転免許とけん引免許5年以上保有していること、大型貨物自動車を使用した運送業務に直近5年以上従事していること、2時間以上の訓練を受けていることが必要
  2. 軽自動車の場合は0.6㎡以上
  3. 軽自動車の場合は縦600mm×横800mm