河宮信郎

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河宮 信郎(かわみや のぶお、1939年 - )は、物理学者、経済学者。中京大学名誉教授。専門は環境経済学・科学技術論[1][注 1]

経歴[編集]

広島県呉市生まれ。大阪府立三国丘高等学校[2]。1963年東京大学工学部金属工学科卒。1965年同大学大学院化学研究科金属物性専攻修士課程修了[3][4]。1965年名古屋大学工学部助手となり[4]、金属物理学、固体物理学史、科学技術論の研究に従事[2]。1985年「FE~GA系合金および金属間化合物の磁性と電子状態」で工学博士(名古屋大学)[5]。1986年中京大学教養部助教授[4]、1988年教授[6]。のち経済学部教授(科学技術論、環境科学、環境経済学)。2009年退職、中京大学名誉教授[2]エントロピー学会世話人、日本物理学会物理学史資料検討委員を務めた[7]

人物[編集]

1960年6・15の後、東京大学教養学部自治会委員長を務めた[2]。当時、共産主義者同盟(ブント)のメンバーだった。西部邁は1959年11月の教養学部自治会委員長選挙の際、ブントは劣勢で第1候補の加藤尚武、第2候補の河宮信郎がクラスの自治委員選挙で落選したが、西部は自分のクラスに共産党員がいなかったため、自治委員になることができ、自治会委員長選挙に立候補することになったと述べている[8]柄谷行人安保闘争敗北後に駒場寮に移ったきっかけについて「これも自分にとって謎です。10月くらいに移ったんだけど、本郷のブントの幹部、坂野潤治(後に東大教授、歴史学)とか河宮信郎(後に中京大教授、環境科学・科学技術論)に、ぜひ駒場寮に行ってくれと頼まれたから、そうしたのです。彼らは、安保闘争以後のブント再建のために動いていた。だけど、なぜ僕だったのか、今でもわからない。」と述べている[9]

科学技術の環境負荷を主題とする技術論的・経済学的研究に従事している[3]。1976年に槌田敦が提起したエントロピー代謝という観点から様々な実在システムを考察するアプローチを敷衍し、技術史的考察および地表システムのエントロピー代謝論を展開している[10]。1983年9月のエントロピー学会創設に参加した[2]。エントロピー学会名古屋懇談会で中心的役割を果たした[11]。80年代にエントロピー学会の内外でエントロピーをめぐる論争があり、物理学者の槌田敦、河宮信郎、藤田祐幸勝木渥、経済学者の室田武玉野井芳郎は地球に備わったエントロピー廃棄機構として水循環を重視する立場をとった。物理学者の安孫子誠也杉本大一郎小出昭一郎は水の低エントロピー性を認めず、太陽光の「ネゲントロピー」を重視する立場をとった[12][13]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『エントロピーと工業社会の選択』(海鳴社[Monad books]、1983年)
  • 『地球環境問題と人類のエネルギー消費』(愛知県教育サービスセンター編、第一法規出版東海支社[県民大学叢書]、1994年)
  • 『必然の選択――地球環境と工業社会』(海鳴社、1995年)
  • 『日本「国家更生法」(試案)――「小泉改革」を超えてⅠ』(太田出版、2001年)

共著[編集]

  • 『材料テクノロジー 第1巻 未来社会と材料工学』(久松敬弘、古谷圭一、高倉毅、青木陽二、西岡秀三共著、東京大学出版会、1984年)
  • 『現代社会の倫理を考える 第4巻 公共政策の倫理学』(青木秀和共著、丸善出版事業部、2002年)

編著[編集]

  • 『エントロピー』(小野周、玉野井芳郎、槌田敦、室田武共編、朝倉書店、1985年)
  • 『成長停滞から定常経済へ――持続可能性を失った成長主義を超えて』(編著、中京大学経済学部附属経済研究所[中京大学経済学部付属経済研究所研究叢書]、2010年/勁草書房[中京大学経済学部付属経済研究所研究叢書]、2010年)

訳書[編集]

  • ジョン・W・ゴフマン、アーサー・R・タンプリン『新版 原子力公害――人類の未来を脅かす核汚染と科学者の倫理・社会的責任』(明石書店、2016年)

脚注[編集]

[編集]

  1. 『農業協同組合』第35巻10号(通巻416号)(1989年10月)によると、専攻は固体物理学・科学技術論。『必然の選択』(海鳴社、1995年)によると、専攻は科学技術論、資源物理学、金属物理学。

出典[編集]

  1. 現代社会の倫理を考える〈4〉公共政策の倫理学 紀伊國屋書店
  2. a b c d e 河宮 信郎 明石書店
  3. a b 河宮信郎 勁草書房
  4. a b c 日外アソシエーツ編『現代日本科学技術者大事典 第2巻 か~す』日外アソシエーツ、1986年、1314頁
  5. FE~GA系合金および金属間化合物の磁性と電子状態 CiNii Research
  6. 河宮信郎『地球環境問題と人類のエネルギー消費』第一法規出版東海支社、1994年
  7. researchmap
  8. 西部邁『六〇年安保――センチメンタル・ジャーニー』文藝春秋、1986年、36-37頁
  9. 学生運動と年上の友人たち:私の謎 柄谷行人回想録④ じんぶん堂、2023年5月23日
  10. 河宮信郎「エントロピー代謝系としての一般システム」『中京大学教養論叢』第31巻第1号、1990年9月
  11. 【4月例会】河宮信郎さん退職記念講演会(中京大学八事キャンパス0号館0605教室) エントロピー学会
  12. 勝木渥「エントロピー論争・私の見方」『エントロピー読本Ⅲ エコロジーとエントロピー』日本評論社、1986年、65-74頁
  13. 三村晴夫「エントロピー雑考(補遺その2〔続〕)――金属屋のたわごとPDF」『日本鑛業會誌』第103巻(通巻1193号)、1987年6月

関連文献[編集]

  • 『エントロピー読本』(日本評論社[別冊経済セミナー]、1984年)
  • 『エントロピー読本Ⅱ』(日本評論社[別冊経済セミナー]、1985年)
  • 菅孝行編『モグラ叩き時代のマルキシズム』(現代企画室[PQ books]、1985年)
  • 『エントロピー読本Ⅲ エコロジーとエントロピー』(日本評論社[別冊経済セミナー]、1986年)
  • 『エントロピー読本Ⅳ ガボロジーとエントロピー』(日本評論社[別冊経済セミナー]、1987年)
  • 『エントロピー読本Ⅴ 地域自立を考える』(日本評論社[別冊経済セミナー]、1988年)
  • 『エントロピー読本Ⅵ 地球汚染を止めるために』(日本評論社[別冊経済セミナー]、1988年)
  • 小野周、槌田敦、室田武、八木江里編『熱学第二法則の展開』(朝倉書店、1990年)
  • 石弘之、沼田眞編『講座文明と環境 第11巻 環境危機と現代文明』(朝倉書店、1996年)
  • 情況出版編集部編『科学・環境・生命を読む』(情況出版、2002年)
  • 水幡正蔵『新今西進化論――ダーウィン理論への挑戦から勝利へ 種社会選択による種社会の分岐』(地球社会基金、発売:星雲社、2002年)

外部リンク[編集]