東方幻想郷 〜 Lotus Land Story.
『東方幻想郷 〜 Lotus Land Story.』(とうほうげんそうきょう-)とは、ZUNによって制作された弾幕系シューティングゲームであり、東方Projectの第4弾にあたる作品である。1998年8月のコミックマーケット54にて発表された。
本項では、以降は『東方幻想郷』と称することとする。その他の本項で使用されている東方Project関連の略称については、東方Project#凡例を参照。
概要[編集]
PC-98用ゲームとして発表された東方Project4作目。メディアはフロッピーディスク2枚組で単価700円[1]。2002年9月19日まで続いた「Amusement Makers」の通販では、フロッピーディスク8枚での東方5作品セットより200円安い、CD1枚に5作品が収録されたCD-R版のセットも販売された[2]。前作『夢時空』とは異なり、前々作『封魔録』と同様の縦スクロール弾幕系シューティングゲームのスタイルを取るようになった。選択可能な自機は「博麗靈夢(巫女)」と「霧雨魔理沙(魔法使い)」の二種類で、さらに二種類のタイプ(装備)の内一方を選択後、全6ステージをクリアしていく(EASYモードは全5ステージ)。
1画面あたり440以上表示される弾(弾幕)を売りにしている[※ 1]。
収録されているテキストファイルには、1998年8月当時ZUNが大学4年生であり、次の冬コミが「Amusement Makers」のメンバーとして最後の参加となるが、12月まで4ヶ月しかないことや卒業研究などもあり、本作が最終作になるかもしれない旨が書かれ、サークルの公式サイトでも「ついに完結か?!」と書かれた。なお結局、5作目の『東方怪綺談』が開発され1998年12月に頒布、それが一旦の最終作となった。
あらすじ[編集]
- 博麗神社の巫女、博麗靈夢が退屈していたところ、突然、大量の化け物が神社に沸いてきてしまう。神社裏の山の中の湖が怪しいと踏んだ靈夢は、早速山へ向かった。
- 魔法使いの少女、霧雨魔理沙は強大な魔力を感じ取った。自身も強大な魔力の持ち主である魔理沙は、この力を自分の物にしようと、靈夢に内緒で力の発信源である湖へ向かうのだった。
こうして、二人は別の用事で湖へ行ったのだった。
システム[編集]
詳細は「東方Project#基本システム」を参照
自機選択 | 有り |
---|---|
武器選択 | 有り |
低速移動 | 有り |
低速移動時のショット変化 | 無し |
ボム形式 | ボムゲージ消費(霊撃) |
エクステンド形式 | 得点 |
コンテニュー形式 | その場で復活 |
Windows版の東方Projectにおいて重要なスペルカードシステムは、この時点では存在していない。
『東方幻想郷』初出のシステム[編集]
以下のシステムは『東方幻想郷』が初出で、Windows版を含む後の東方Project作品の多くにも導入されている。
- 高速移動と低速移動の使い分け。
- 敵弾かすりボーナス。
- ボス、中ボスを倒した時、画面上の弾が全て得点になる。
- 被弾後に数フレーム分のボム受付時間がある(食らいボム)。
- エキストラボスに対して、ボム発動中の攻撃が通用しない。
『東方幻想郷』固有のシステム[編集]
以下のシステムは『東方幻想郷』が初出であるが、後のシリーズには継続的に引き継がれていない。
- ボムを使用して引き寄せた得点アイテムは、二倍の得点になる。
- 各ステージをクリアした時に、ボムのストックが1つ増える。
- 『永夜抄』の一部の登場人物に同様のシステムがある。
- 得点アイテムによるボーナスが増加するドリームボーナスがある。「夢アイテム」を取ることにより増加し、残機を失うと減少する。ステージクリアをすると0に戻る。
- 『怪綺談』にも「ドリームボーナス」があり、効果は同じだが条件が異なる。
- ステージボス戦には、タイムカウントはないが時間切れはあり、倒せないと「悪霊ボス退治失敗」になり、ボーナスを得られない。
- 『怪綺談』でも同様のシステムである。『紅魔郷』以降は、ボス戦時にタイムカウントが表示されるようになった。
- Easyモードでは、6面まで行けず、5面をクリアするとエンディングとなる。
- 『紅魔郷』でも同様のシステムである。
- 一定以上ミスすることなく進めるとプレイランクが上がり、敵の弾が速くなるなどして難しくなる。
- 『妖々夢』までは存在している[3]。
- フルパワーアップ時、エクステンド時に敵弾をすべて打ち消す。
- フルパワーアップ時の敵弾打ち消しは『永夜抄』まで存在する。
自機解説[編集]
- 博麗 靈夢
- 広範囲攻撃型。「サーチショット」と「ワイドショット」の2種類のショットがある。
- 霧雨 魔理沙
- 攻撃力重視型。「イリュージョンレーザー」と「ラピッドショット」の2種類のショットがある。
登場人物[編集]
「東方Projectの登場人物」、「幻想郷」も参照
オレンジ[編集]
名前 | オレンジ |
---|---|
英字 | Orange |
テーマ曲 | 装飾戦 〜 Decoration Battle |
二つ名 |
|
出演作品 | 『幻』1面ボス |
備考 | ゲーム本編では名前が表示されない。 |
『東方幻想郷』1面に登場する妖怪。
『東方幻想郷』に付属するtxtファイルや、『怪綺談』Extraエンディングには名前が明記されているが、ゲーム中では他のボスと違い自己紹介しないため名前は「??」のままになっている。
くるみ[編集]
名前 | くるみ |
---|---|
テーマ曲 | 紅響曲 〜 Scarlet Phoneme |
二つ名 |
|
出演作品 | 『幻』2面中ボス・2面ボス |
吸血少女。湖内部への入り口を守る門番。『東方幻想郷』魔理沙ルートの2面での台詞によれば、人間ではない。
エリー[編集]
名前 | エリー |
---|---|
英字 | Elliy |
テーマ曲 | 霊戦 〜 Perdition crisis |
二つ名 |
|
出演作品 | 『幻』3面ボス |
現実世界と夢幻世界の境にある館「夢幻館」の門番[4]。刃が外を向いている大鎌を使う。戦うのが久々だったため、館に訪れた二人の人間(博麗靈夢と霧雨魔理沙)にあえなく敗れる。
幽香[編集]
名前 | 幽香 |
---|---|
読み | ゆうか |
種族 | 妖怪 |
テーマ曲 |
|
二つ名 |
|
出演作品 |
|
備考 |
|
現実世界と夢幻世界の境にある館「夢幻館」の主人。 人間や魔界人相手の大量虐殺も遊びとする[5]妖怪だが、妖怪扱いされると憮然とし[6]、人間扱いされれば反発する[7]。弱い者苛めが好きで、たとえ神であろうと力こそが全てと考えている[7][8]。
博麗神社周辺に住む、数多の妖怪の中では最上級の力を持つ。常時何を考えているのか分からない性格であり、カリスマの欠片も無いが、実際はかなり頭が切れる[9]。
『東方幻想郷』では睡眠中に博麗靈夢や霧雨魔理沙に館を襲撃され、ネグリジェにナイトキャップ姿のままで戦う。次のステージでは着替えて日傘を持って再登場する。
日傘を差していることが多く、『東方幻想郷』6面ではこの傘から弾幕を張りステージをほぼ占める極太レーザーを発射するが、『東方幻想郷』5面では傘が無くても発射している。
『怪綺談』で魔界を訪れ、魔法を使えるようになれば一層最強になれるかもしれないと思い、同作エンディングでは透明化して魔法使いの霧雨魔理沙の後を付きまとって魔法も使えるようになり、ますます厄介者になる。更にExtraの後、魔界に帰ったアリスに付きまとって「究極の魔法」を拾得したが、それが何なのかは作者のZUNも知らないと言う[10]。
「瞬殺サレ道?」の「西方Project」作品『稀翁玉』に登場する「幽香」は、『東方幻想郷』『怪綺談』と同一人物である[10]。東方Project第9弾『花映塚』には「風見幽香」という人物が登場する。
夢月[編集]
名前 | 夢月 |
---|---|
読み | むげつ |
テーマ曲 | メイド幻想 〜 Icemilk Magic |
二つ名 | Maid[※ 2] |
出演作品 | 『幻』Extraボス |
「最凶極悪の双子姉妹」[11]の妹で、夢幻世界の主。[12]メイドのような格好をしている。非常に邪悪な力を発しており[12]、人間の命にも無頓着[13]。
敗れると即座に姉に相手を押し付ける。
幻月[編集]
名前 | 幻月 |
---|---|
読み | げんげつ |
テーマ曲 | かわいい悪魔 〜 Innocence |
二つ名 | Demon[※ 2] |
出演作品 | 『幻』Extraボス |
「最凶極悪の双子姉妹」[11]の姉。天使のような白い翼がある。1人で戦うが、夢月と2人で一人前だと言う[12]。
敗れた妹に任されたという理由で、挑んでくる。
その他の登場人物[編集]
1面、3面、4面、Extraステージに、合計4体の中ボスキャラクターが登場する。名前や設定は無い。一部はグラフィックが使いまわされているが、同一人物であるかは不明。
既存の登場人物[編集]
詳細は「東方Projectの登場人物」を参照
ここでは、『東方幻想郷』が初登場ではない登場人物を解説する。
- 博麗 靈夢
- 自機だが、魔理沙使用時は4面ボスとして登場。
- 博麗神社の巫女、主人公。楽天家で、生まれつき霊力はあるが修行不足。魔理沙によくからかわれている。PC-9801シリーズでは空を飛べないため、亀に乗って戦う。
- 霧雨 魔理沙
- 自機だが、靈夢使用時は4面ボスとして登場。
- 魔法使いだが、普通の少女。子供っぽい靈夢より外見が子供っぽいが、年は靈夢と同程度。
ステージ[編集]
ステージ | ステージタイトル | 中ボス | ボス |
---|---|---|---|
STAGE 1 | 幻野 〜 Phantom Land | 1面中ボス | オレンジ |
幻夜 〜 Phantom Night | |||
STAGE 2 | 枯渇 〜 Lake of Blood | くるみ | |
STAGE 3 | 冥幽 〜 Darkness | 3面中ボス | エリー |
STAGE 4 | 夢幻 〜 Dream of Frail Girl | 4面中ボス | 霧雨 魔理沙 |
博麗 靈夢 | |||
STAGE 5 | 幻想 〜 Phantasmagoria | (なし) | 幽香 |
FINAL STAGE | 追撃 〜 Raspberry Trap | ||
EXTRA STAGE | すばらしい君に静かな瞑りを 〜 Puckish Angel | Extra中ボス | 夢月 → 幻月 |
備考[編集]
- STAGE 1
- 靈夢が自機の場合はサブタイトルが「幻野 〜 Phantom Land」となり、フィールドは昼になる。魔理沙の場合は「幻夜 〜 Phantom Night」となり、フィールドは夜になる。フィールド色が異なる以外は同じ。
- STAGE 4
- 4面ボスとして、靈夢が自機の場合は魔理沙が、魔理沙が自機の場合は靈夢が登場する。いずれの場合もステージ名は「夢幻 〜 Dream of Frail Girl」で共通。
- EXTRA STAGE
- 初めにボスとして夢月のみ登場し、夢月を倒すと入れ替わりで幻月が登場する。夢月と幻月が同時に登場することはない。
曲目リスト[編集]
- 幻想郷 〜 Lotus Land Story - タイトル画面テーマ
- Witching Dream - 靈夢の1面テーマ
- Selene's light - 魔理沙の1面テーマ
- 装飾戦 〜 Decoration Battle - オレンジのテーマ
- Break the Sabbath - 2面テーマ
- 紅響曲 〜 Scarlet Phoneme - くるみのテーマ
- Bad Apple!! - 3面テーマ
- 霊戦 〜 Perdition crisis - エリーのテーマ
- アリスマエステラ - 4面テーマ
- 少女綺想曲 〜 Capriccio - 靈夢のテーマ
- 星の器 〜 Casket of Star - 魔理沙のテーマ
- Lotus Love - 5面テーマ
- 眠れる恐怖 〜 Sleeping Terror - 幽香のテーマ1
- Dream Land - 最終面テーマ
- 幽夢 〜 Inanimate Dream - 幽香のテーマ2
- 禁じざるをえない遊戯 - エキストラステージテーマ
- メイド幻想 〜 Icemilk Magic - 夢月のテーマ
- かわいい悪魔 〜 Innocence - 幻月のテーマ
- Days - バッドエンドのテーマ
- Peaceful - グッドエンドのテーマ
- Arcadian Dream - スタッフロールのテーマ
- 幻想の住人 - ネームレジストのテーマ
『怪綺談』には上記の曲に加え、『東方幻想郷』用に作成されたものの使用・収録されなかった一部の曲が、「未使用曲」として収録されている。
- Lotus Road - 未使用曲(1面テーマ)
- Dreamy pilot - 未使用曲(4面テーマ)
- Incomplete Plot - 未使用曲(5面テーマ)
- Border Land - 未使用曲(6面テーマ)
- Magic Shop of Raspberry - 未使用曲(エキストラステージテーマ)
- Crescent Dream - 未使用曲(スタッフロールテーマ)
『東方幻想郷』のサウンドトラックである『幺樂団の歴史1 〜 Akyu's Untouched Score vol.1』には、上記の曲に加え、「未使用バージョン」と称した曲が2曲収録されている。
- 装飾戦 〜 Decoration Battle(未使用バージョン) - 未使用曲
- 幽夢 〜 Inanimate Dream(未使用バージョン) - 未使用曲
関連項目[編集]
- 幻想郷 - Windows版以降の作品で、東方Project作品の舞台となる地名。『東方幻想郷 〜 Lotus Land Story.』では舞台が「幻想郷」であるという明言は無い。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ↑ 『ゲームラボ』1999年1月号の同人ソフト紹介コーナーの記事[1]には「1画面440以上の超美麗な弾幕を、秒間60フレームで楽しめるゲームです。」とある。
- ↑ a b c d e f 『怪綺談』のExtraエンディングでは、『靈異伝』から『怪綺談』までの5作品に登場するオールキャストの名前と二つ名が英字で表記されている。ただし『靈異伝』からは靈夢のみ。『封魔録』以降でも、玄爺と名無しのボスキャラクターは表記されていない。
- ↑ ZUNは「幻想掲示板」2003年5月の投稿では、一応『紅魔郷』から全体の設定を一掃したため、一種の新シリーズと思われることを望んでいる(「まよひがねっと」によるアーカイブ - ウェイバックマシン(2005年9月9日アーカイブ分))。同掲示板同年8月の投稿では、旧作の設定は生きているのかという問いに対して、もちろん特に変化は無いと答えている(「まよひがねっと」によるアーカイブ - ウェイバックマシン(2005年9月11日アーカイブ分))。
出典[編集]
- ↑ a b 「同人グッズ スペシャルセレクション」、『ゲームラボ』(1999年1月号)、三才ブックス p. 194
- ↑ Amusement Makers(旧)公式サイト - ウェイバックマシン(2002年8月3日アーカイブ分)
- ↑ http://www6.big.or.jp/~zun/html/th07man/
- ↑ 『東方幻想郷』靈夢ルートの3面。
- ↑ 『怪綺談』幽香ルートの5面。
- ↑ 『東方幻想郷』靈夢ルートの5面。
- ↑ a b 『怪綺談』幽香ルートの6面。
- ↑ 『怪綺談』幽香ルートのエンディング。
- ↑ 『怪綺談』同梱の「怪綺談.TXT」。
- ↑ a b 「西方Project」第2弾『稀翁玉』同梱の『ZUN「創曲幻想」.txt』。
- ↑ a b 『東方幻想郷』同梱の「README.TXT」。
- ↑ a b c 『東方幻想郷』靈夢ルートのExtraステージ。
- ↑ 『東方幻想郷』魔理沙ルートのExtraステージ。