天鈿女命
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天鈿女命（あまのうずめのみこと）は、日本神話に登場する女神である。記紀神話においては、天岩戸神話におけるその活躍が特筆され、また天孫降臨の際には猿田彦命を先導した神としても知られる。
概要[編集]
天鈿女命は、その名に「鈿女」（うずめ）とあるように、顔をしかめたり、顔に墨を塗ったりする奇妙な行動をとり、人々を笑わせる芸を司る神とされている。
天岩戸神話[編集]
天照大御神が天岩戸に隠れてしまい、高天原が闇に包まれた際、八百万の神々は天照大御神を岩戸から出す方法を模索した。その中で天鈿女命は、高天原の広場に伏せ桶（うつぶせおけ）を伏せてその上に乗り、神がかりして舞を舞った。この舞は乳房を露わにし、裳（も）を陰部まで垂らすという滑稽なものであったため、八百万の神々はどっと笑った。この笑い声を聞きつけた天照大御神が「なぜ神々は笑っているのか」と岩戸を少し開けた際、天手力男神が岩戸を開け放ち、高天原に再び光が戻ったとされる。この神話において、天鈿女命の舞は鎮魂や芸能の起源とされている。
天孫降臨[編集]
天孫瓊瓊杵尊が高天原から葦原中国へ降臨する際、天の八衢（あめのやちまた）において、鼻の長さ七咫、背の高さ七尺という異様な姿の神が立ち塞がっていた。そこで天鈿女命は、その神が何者であるか問い質すために進み出た。天鈿女命がその神に「お前は何者か」と問いかけると、その神は「私は猿田彦命である。天孫降臨の道案内をするためにここに現れた」と答えた。天鈿女命は猿田彦命の正体を見極め、後に猿田彦命と結婚したとされ、夫婦和合の神としても信仰されている。
信仰[編集]
天鈿女命は、その神話的役割から、主に芸能の神、鎮魂の神、夫婦和合の神として信仰されている。
- 芸能の神: 天岩戸神話における舞の起源とされることから、舞踊、音楽、演劇など芸能全般の守護神とされる。
- 鎮魂の神: 神がかりして舞を舞う姿から、魂を鎮める力を持つとされ、鎮魂祭などで祀られることがある。
- 夫婦和合の神: 猿田彦命との結婚譚から、縁結びや夫婦円満の神として崇敬される。
祀る神社[編集]
天鈿女命を祀る主な神社は以下の通り。
- 戸隠神社（奥社） - 長野県長野市。天岩戸神話ゆかりの地として知られる。
- 伊勢神宮（内宮別宮瀧原宮摂社若宮神社） - 三重県多気郡大紀町。猿田彦命と共に祀られる。
- 椿大神社（別宮椿岸神社） - 三重県鈴鹿市。猿田彦命を主祭神とする神社の別宮。