千鳥停車

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千鳥停車または千鳥式運転とは、鉄道ダイヤにおける停車パターンの一種であり、複数の列車種別が同一路線上で異なるに停車するように設定される運行方式である。

概要[編集]

主に都市部の混雑緩和や速達性の確保を目的として採用される。列車種別の優劣に関係なく、停車駅が互い違いになることが特徴である。例えば急行列車がA駅とC駅に停車し、快速列車がB駅とD駅に停車するような形態を指す。これにより、各列車が異なる駅に停車することで、特定の駅に乗客が集中することを防ぎ、混雑の分散を図ることができる。従来の「主要駅停車」や「選択停車」とは異なり、停車駅が明確に分散されている点が特徴である。

1980年代以降、沿線人口が増加し、混雑が激化していく中で生まれた。特に複数の優等列車が存在する路線では、停車駅の重複による混雑が問題となり、それを解消する手段として千鳥式運転が導入された。阪神電鉄が先駆的に採用した例が知られており、以降は西武鉄道小田急電鉄などでも部分的に導入されている。

採用例[編集]

千鳥停車は広く採用されているわけではなく、むしろ全国的に稀な存在であるが、関東地方関西地方の一部路線で見られる。

西武池袋線[編集]

西武池袋線では、急行通勤急行通勤準急快速急行など複数の種別が存在し、それぞれ異なる駅に停車する。たとえば、急行が停車するひばりヶ丘駅を通勤急行は通過し、逆に通勤急行が停車する東久留米駅を急行は通過するなど、停車駅が複雑に分散されている。

阪神本線[編集]

詳細は「阪神本線」を参照

阪神本線では、快速急行区間急行区間特急が千鳥式に停車する。特に区間特急は、御影駅今津駅間において、西宮駅は通過してそれ以外の列車は一部を除き各駅に停車するという、最上位種別である直通特急とはほぼ真逆の停車駅となっており、異例ともいえる存在である。

快速急行は直通特急が停車する御影駅芦屋駅を通過するが、混雑緩和よりかは車両の長さやホーム設備での制約の理由が大きい。

メリットとデメリット[編集]

メリット[編集]

千鳥停車の最大の利点は、混雑の分散である。特定の優等列車に乗客が集中することを防ぎ、各列車に均等に乗客を分配することが可能となる。また、小規模駅の利用者にとっては、乗り換えなしでターミナル駅までアクセスできる機会が増えるという利点もある。さらに、停車駅を分散させることで、運転時隔(列車間隔)を狭めることができ、増発の余地を生み出すことも可能となる。これは特にラッシュ時の輸送力強化に有効である。

デメリット[編集]

一方で、千鳥停車には利用者の混乱を招くという欠点もある。停車駅が種別ごとに異なるため、初めて利用する乗客が誤って通過駅の列車に乗ってしまうケースが少なくない。また、停車駅が増えることで速達性が損なわれる場合もあり、列車種別の意味が曖昧になることもある。鉄道事業者にとっても、ダイヤ作成が複雑化し、運行管理の負担が増すという課題がある。そのため、千鳥停車は時間帯や種別を限定して採用される傾向が強い。

その他[編集]

千鳥停車は「選択停車」や「緩急接続」と混同されることがあるが、選択停車は複数の列車が主要駅に停車する一方で、千鳥停車は停車駅そのものが互い違いに設定される点で異なる。また、緩急接続は速達列車と各駅停車が同一駅で接続する方式であり、千鳥停車とは目的も構造も異なる。

関連項目[編集]