北西鉄道事件 シャーロック・ホームズの未公開事件記録

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『北西鉄道事件 シャーロック・ホームズの未公開事件記録』(ほくせいてつどうじけん シャーロック・ホームズのみこうかいじけんきろく)は、池田邦彦による漫画作品。『シャーロック・ホームズシリーズ』(コナン・ドイル)のパスティーシュ作品である。

概要[編集]

新潮社のWeb漫画雑誌『コミックバンチKai』の開設2周年を記念する新連載の1つとして、2026年4月24日[1]から同年6月30日まで連載された。全7話。

シャーロック・ホームズシリーズでは、作中で起きた事件について言及されることがある。作品として発表されている事件もあれば、コナン・ドイルが作品として発表していない事件もある。後者は作品ファンの間では「語られざる事件(The Untold Tales)」と呼ばれている。作品によっては同じ事件を異なる表現で呼んでいることもあり「語られざる事件」の総数は確定し難いが70件程度から100件以上あるとされている(160件あるという見解もある)。こういった「語られざる事件」は、後世の作家たちによってパスティーシュ作品として創作された例も多く、本作もそういった「語られざる事件」=「未公開事件」を題材とした作品である。

あらすじ[編集]

1895年8月のイギリスでは、ロンドンを発しスコットランドのアバディーンへ向かう鉄道会社同士のスピード競争の話題で持ち切りであった。鉄道路線には東海岸ルートと西海岸ルートがあり、この1週間は東海岸ルートが勝っていた。

西海岸ルートを走らせているロンドン北西鉄道(London and North Western Railway)の社長サー・ロバート・カーンは、この競争で不正が行われていると考えシャーロック・ホームズに調査の依頼をしたが、興味を惹く事件ではないとホームズは断ってしまう。

続いて、ベーカー街221Bを訪れたのはヘレン・ロバート・カーン夫人を名乗る女性。夫が何の依頼をしにホームズを訪れたのか尋ねる夫人であったが、ホームズは時候の挨拶をするだけで取り合わない。諦めた夫人が退出すると、ホームズは後を付けた。夫人が贋者であると判断したホームズは、この事件に興味を抱いたのだった。

改めて、サー・ロバート・カーンから事件の調査を引き受けたホームズとワトソンは「ウォーター・トラフ[2]の技術者」と身分を偽って、不正が行われているというキンナバー・ジャンクションに向かった。

キンナバー・ジャンクションで信号手として働くウッズマンは実直な人間で、不正を働いているとはホームズたちには思えなかった。ホームズはアバディーンのパブでモズレイと出会う。その翌朝、ウッズマンの自宅付近でモズレイの死体が見つかり、ウッズマンが殺人犯としてアバディーン警察のマクファーソン警部 == 登場人物 ==に逮捕されてしまう。

モズレイの結婚指輪が黒変していたことに気付いたホームズは、キンナバー・ジャンクションより南の東海岸ルート沿いのウォーター・トラフ付近で、血痕の付いた石を発見。東海岸ルートの列車を遅延させようとウォーター・トラフに石を入れる工作を行うとして事故死したものと推理し、マクファーソン警部に告げた。

ロンドンへ帰る列車の中で、ホームズはワトソンに真相を話す。モズレイはキンナバー・ジャンクションでは気絶しただけで、夫人が撲殺したのだと。夫人はモズレイの仕打ちに愛想をつかしており、ウッズマンも夫人をかばう形で黙秘をしていたのだと。夫人の名誉を守るため、ホームズはワトソンにこの事件の発表を行うのは控えてもらうよう依頼した。

登場人物[編集]

シャーロック・ホームズ
ジョン・H・ワトスン
医者でホームズの友人兼伝記作家。ロンドン北西鉄道の株主でもある。
サー・ロバート・カーン
ロンドン北西鉄道の社長。現実には1895年時点の社長(チェアマン)を務めているのは初代スタールブリッジ男爵リチャード・グロスヴェナー(Richard Grosvenor, 1st Baron Stalbridge、1837年 – 1912年)である。
ハードウィック
サー・ロバート・カーンの秘書。サー・ロバート・カーンがベーカー街221Bを訪れた際に同道し、事件についての説明を行った。
ヘレン・ロバート・カーン(贋)
サー・ロバート・カーンの妻を名乗る女性。アルミニウム製の結婚指輪をしていたことで贋者であるとホームズに見破られる。かつては貴金属として取り扱われていたアルミニウムはだったが、1886年に電解精錬であるホール・エルー法が発明され、量産が可能になったことで市場価格が暴落した。1886年以前に結婚していれば、アルミニウム製の結婚指輪も可能性が無くはないが、サー・ロバート・カーンの結婚が報じられたのはここ3年以内(1886年以降)であり、有り得ない。
その正体は、モズレイの妻である。ウッズマンがモズレイに不正の報奨金値上げを要求し、これがもめたことで殺害したと証言を行った。
モズレイから不正のために身体を提供するように命じられたことも多々ある。
バリアント・モズレイ
有名なブックメーカー。ヘレン・ロバート・カーンを名乗った女性はベーカー街221Bを後にするとモズレイが巣くっているパブへと向かった。女性を尾行したホームズはそれを見て、東海岸ルートと西海岸ルートの掛けを仕切っているモズレイが、ホームズが事件解決に乗り出すかどうかを見極めるため、女性を遣わしたのだと推測した。
ホームズとは互いに面識があり、アバディーンへ捜査に訪れたホームズと出会うが、ホームズのほうは「(ホームズに)似ているとよく言われる」とすっとぼけていた。その翌朝、死体となって発見される。遺体はアルミニウム製の結婚指輪をしていたが、黒変していた。
不正工作により東海岸ルートが連勝し、次の賭け金が東海岸ルートに集まっていたため、西海岸ルートが勝てば大儲けできると、さらなる不正を働こうとたくらんでいる。
ウッズマン
東海岸ルートと西海岸ルートの合流地点であるキンナバー・ジャンクションで信号手をしている。キンナバー・ジャンクションより北側は同一線路で追い抜きが不可能なため、実質的にキンナバー・ジャンクションを早く出発したほうの車輛が早着する。車輛はキンナバー・ジャンクションで信号が変わるのを待つため、ウッズマンが不正に東海岸ルート有利に働いているのではないかとサー・ロバート・カーンからは疑われている。
ハードウィックの母方の義伯父(ハードウィックの母の姉の夫)であるが、縁戚にあることをハードウィックはサー・ロバート・カーンには知らせていない。幼いころの体験からハードウィックはウッズマンが不正を行う人となりではないと信じたいのだが、確証は持てずにいる。
モズレイと言い争っていたところを目撃されていたこともあり、モズレイ殺害犯として逮捕される。逮捕されて以降は黙秘を続ける。
マクファーソン警部
アバディーン警察所属。モズレイ殺人事件を担当する。ホームズを「素人探偵」と呼び、下に見ている。
モズレイ夫人がウッズマンを殺害犯と名指ししたこと、モズレイの遺体の下の地面が雨で濡れていたことから、殺害時刻が雨が降り出した朝7時以降であり、ウッズマンが夜勤明けに犯行に及んだものと判断している。
サイナス・ジャイルズ
キンナバー・ジャンクションより南、東海岸ルートのサウス・ヒルサイドで信号手をしている。
モズレイから金銭で依頼され不正(実際にサウス・ヒルサイドを通過するよりも早く、キンナバー・ジャンクションに通過の信号を送る)を行っていた。
不正に手を貸したのは、妻を亡くし、病に伏せった娘の治療費のため。今までと逆に東海岸ルートを負けさせるような不正は愛社精神にも反することから断ったため、モズレイ本人が遅延工作を行うはめになった。
ウッズマンは通過信号と実際の東海岸ルート車両の通過時刻とのズレからうすうすジャイルズが不正を働いていることには勘付いていたが、事情も知っていたため、訴えることはしなかった。
ホームズから事情を聞かされたサー・ロバート・カーンは、今後は不正をしないと言っていることと、ジャイルズが自社の社員ではないことから、不問とした。

脚注[編集]

  1. ↑ “コミックバンチKaiが2周年!新連載も続々 コースケの「GANGSTA.」が7月に連載再開”. コミックナタリー (2026年4月24日). 2026年4月25日確認。
  2. ↑ 走行中の蒸気機関車に給水する設備。

外部リンク[編集]