与那原町立軽便与那原駅舎

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与那原町立軽便与那原駅舎は、沖縄県島尻郡与那原町に位置する歴史資料館であり、かつて沖縄を走っていた軽便鉄道の終着駅であった旧与那原駅舎を復元・保存した施設である。2015年に開館し、2017年には国の登録記念物に指定された。沖縄の鉄道史を伝える貴重な文化遺産として、当時の駅舎の構造や鉄道関連資料を展示しており、地域の歴史教育や観光資源として活用されている。ここでは与那原駅についても解説する。

歴史的背景[編集]

軽便鉄道の誕生と与那原駅の設置[編集]

1914年(大正3年)、沖縄県営鉄道によって与那原線(那覇〜与那原間)が開通。与那原駅はその終着駅として設置された。北部から船で運ばれてきた物資を鉄道で那覇首里へ運ぶ物流の拠点として機能。与那原は港町として栄え、鉄道によって地域経済が活性化した。1921年(大正10年)には、昭和天皇(当時皇太子)が沖縄を訪れた際、与那原港からこの駅舎を経由して軽便鉄道に乗車した記録が残っている。

駅舎[編集]

初期の駅舎は木造であったが、1931年(昭和6年)にコンクリート造に建て替えられた。これにより、沖縄戦の戦火にも耐え、駅舎の一部が残存することとなる。

戦争と衰退[編集]

沖縄戦による破壊[編集]

1945年(昭和20年)、沖縄戦によって鉄道施設は壊滅的な被害を受け、与那原駅も焼失。残ったのは駅舎裏の9本の柱と一部の線路のみ。鉄道そのものも運行停止となり、沖縄の鉄道史は約30年で幕を閉じることとなった。

戦後の再利用[編集]

1957年(昭和32年)、残された駅舎の骨組みを活用して改修され、旧役場や消防署、農協など町の公共施設として再利用された。駅舎は地域の生活に溶け込み、鉄道の記憶は静かに残されていった。

資料館[編集]

復元プロジェクトの始動[編集]

2013年、駅舎跡地にあった農協の移転が決定。奇しくも軽便鉄道開通100周年を目前に控えていた。地元住民、歴史研究者、建築専門家が協力し、当時の写真資料や聞き取り調査をもとに駅舎の復元が進められた。

開館と登録記念物指定[編集]

2015年12月1日、「軽便与那原駅舎展示資料館」として開館。2017年6月16日、国の登録記念物に指定され、文化財としての価値が正式に認められた。

展示内容と施設構成[編集]

常設展示[編集]

  • 鉄道の歴史を伝える写真、映像、実物資料(切符、制服、工具など)
  • 軽便鉄道の模型やジオラマ
  • 駅舎の構造を再現した内部空間
  • 焼け残った9本の柱を保存・公開

特別展示・企画展示[編集]

  • 与那原大綱曳に関する展示
  • 地元の伝統文化や祭事の紹介
  • 季節ごとのミニ企画展(例:夏休みイベント、鉄道の日特集)

体験型コンテンツ[編集]

  • 駅員体験コーナー(制服着用、切符発行)
  • AR体験:タブレットを使って100年前の駅舎風景や列車の再現を楽しめる

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