マクドネル・ダグラス DC-9

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マクドネル・ダグラス DC-9（McDonnell Douglas DC-9）は、アメリカ合衆国のダグラス・エアクラフト（後にマクドネル・ダグラス）が開発した双発のジェット旅客機である。短・中距離路線向けに設計され、その経済性と信頼性の高さから世界中で広く使用された。

開発[編集]

ダグラス・エアクラフトは、ボーイング727の成功を受けて、より小型で経済的な短距離ジェット旅客機の需要が高まると予測した。1960年代初頭から開発が始まり、1963年4月に正式に計画が発表された。DC-9の設計思想は、シンプルさ、信頼性、そして運航コストの低減に重点が置かれた。

DC-9は、後部にエンジンを搭載するT字尾翼のレイアウトを採用した。これは、より短い滑走路での離着陸性能を向上させるとともに、主翼を簡素化し、整備性を向上させる利点があった。また、当時としては画期的な補助動力装置 (APU)を標準装備し、地上での外部電源やグランドスタート装置なしでのエンジン始動を可能にしたことで、運航の柔軟性を高めた。

初号機は1965年2月25日に初飛行し、同年12月8日にデルタ航空で商業運航を開始した。

機体の特徴[編集]

DC-9は、以下の特徴を持つ。

  • エンジン配置：胴体後部側面に2基のターボファンエンジンを装備。これにより、翼下をクリアに保ち、整備が容易になった。
  • T字尾翼：水平尾翼が垂直尾翼の上部に取り付けられたT字尾翼を採用。これは、後部胴体エンジン配置と相性が良く、低速時の操縦性を向上させた。
  • シンプルで堅牢な設計：短距離路線での頻繁な離着陸に耐えうるよう、構造が堅牢に設計された。また、システムの簡素化が図られ、整備時間の短縮に貢献した。
  • 客室：標準的な5列横並びの座席配置で、比較的小型の機体ながら効率的な客室空間を提供した。

バリエーション[編集]

DC-9は、様々な派生型が開発された。

  • DC-9-10シリーズ：初期生産型。短い胴体と低出力のエンジンを特徴とする。
  • DC-9-20シリーズ：DC-9-10シリーズの胴体に、より強力なエンジンと改善された翼を組み合わせたもの。
  • DC-9-30シリーズ：最も多く生産された主力モデル。胴体が延長され、主翼も大型化されたことで、航続距離と座席数が増加した。
  • DC-9-40シリーズ：DC-9-30シリーズよりもさらに胴体が延長されたモデル。
  • DC-9-50シリーズ：DC-9シリーズで最も胴体が長く、座席数が多いモデル。

これらの成功を受けて、DC-9の設計はさらに発展し、MD-80シリーズ、MD-90シリーズ、そしてボーイング717へと引き継がれていった。これらは、DC-9の基本設計を維持しつつ、新世代のエンジンやアビオニクスを搭載することで、性能と経済性を向上させた機体である。

運用史[編集]

DC-9は、その高い信頼性と経済性から、世界中の航空会社で広く採用された。特にアメリカ合衆国の国内線において、短距離から中距離路線を担う主力機として活躍した。デルタ航空やノースウエスト航空（現デルタ航空）など、多くの主要航空会社が大量に導入した。

貨物型やビジネスジェット型も開発され、多岐にわたる用途で運用された。軍用輸送機としても使用された例がある。

時代が進むにつれて、より静かで燃費の良い新型機が登場したため、多くのDC-9は退役していった。しかし、その堅牢な設計と整備のしやすさから、一部の機体は2020年代に入っても貨物機として運用されている。デルタ航空は、長年にわたりDC-9シリーズの最大の運航会社の一つであり、最後の旅客型DC-9を2014年に退役させた。

主要な事故[編集]

DC-9は堅牢な設計であったが、運用期間が長かったこともあり、いくつかの航空事故に見舞われた。

これらの事故は、その後の航空安全基準の改善に大きな影響を与えた。

豆知識[編集]

  • DC-9は、その堅牢性と信頼性の高さから「ダグラス・ディシジョン9（Douglas Decision 9）」と揶揄されることもあった。これは、その信頼性が高く、パイロットが特別な判断を下すことなく運航できることを意味していた。
  • マクドネル・ダグラスがボーイングに吸収合併された後も、DC-9の設計思想はボーイング717として引き継がれた。これは、DC-9の優れた基本設計がいかに評価されていたかを物語っている。

関連項目[編集]

参考書籍[編集]

  • 『世界の傑作機 No.155 マクドネル・ダグラス DC-9/MD-80/MD-90/717』文林堂、2013年。
  • 『旅客機型式シリーズ3 マクドネル・ダグラスDC-9&MD-80』イカロス出版、2003年。
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