ドラえもん のび太と銀河超特急
ドラえもん のび太と銀河超特急は、1996年3月2日に公開された『映画ドラえもん』シリーズ第17作目であり、大長編ドラえもんシリーズとしては第16作目にあたる作品。原作・脚本は藤子・F・不二雄、監督は芝山努。上映時間は97分。本作は、22世紀の宇宙を舞台にしたSF冒険ファンタジーで、銀河を走るミステリートレイン「銀河超特急」に乗って、のび太たちが宇宙の果てにあるテーマパーク「ドリーマーズランド」を訪れる物語。原案は短編「天の川鉄道の夜」であり、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』へのオマージュが随所に見られる。
概要[編集]
本作は、藤子・F・不二雄の趣味が色濃く反映された作品であり、鉄道、西部劇、中生代の恐竜、童話の世界など、ジャンルの垣根を越えた構成が特徴。各星に用意されたアトラクションは、子供たちが夢中になれる要素が満載。
あらすじ[編集]
物語は、のび太がいつものように退屈な日常を過ごしているところから始まる。最近ドラえもんが3日間も帰ってこず、のび太は不安を募らせていた。そんな中、スネ夫が「未来のミステリートレインの切符を手に入れた」と自慢し、ジャイアンとしずかを誘って自分だけの冒険に出ようとする。のび太は仲間外れにされたことにショックを受け、泣きながら帰宅する。そこへ、ようやくドラえもんが帰ってくる。彼は22世紀で大人気の「銀河超特急」の切符を手に入れていた。しかも、のび太たち全員分。スネ夫の切符は実は偽物で、ドラえもんの本物の切符によって、のび太たちは本物の銀河超特急に乗り込むことになる。列車は学校の裏山から発車し、宇宙空間へと突入する。銀河超特急は8両編成だが、内部は異空間とつながっており、無限に広がるような構造になっている。各自に豪華な個室が与えられ、シューティングゲームや宇宙食、重力調整など、未来技術が詰まった夢の列車である。数日間のワープを経て、列車は目的地「ドリーマーズランド」に到着する。そこはハテノハテ星群にあるテーマパークで、かつて鉱石資源で栄えたが、資源枯渇により衰退した星々を観光地として再生した場所だった。ドリーマーズランドには複数の星があり、それぞれ「西部の星」「恐竜の星」「メルヘンの星」「忍者の星」など、異なるテーマのアトラクションが展開されている。のび太とドラえもんは「西部の星」へ向かい、のび太は天才的な射撃の腕前を披露して保安官に任命される。未来人アストンたちに「昔もん」と馬鹿にされていたが、のび太の活躍により見返すことに成功する。ジャイアンとスネ夫は「忍者の星」へ。スネ夫は本当はメルヘンの星に行きたかったが、ジャイアンに強引に連れてこられる。二人は壁抜けの術、バッタの術、ネズミ変身の術がインプットされた巻物を手に入れるが、仮免許のため使い方に苦戦する。しずかは「メルヘンの星」へ。童話の世界を体験できる星で、白雪姫の王子に選ばれるシーンでは、順番待ちの女の子たちにブーイングされるなど、意外な展開も。翌日、全員で「恐竜の星」へ向かう。そこでは本物さながらの恐竜ロボットが登場し、のび太たちは恐竜と触れ合いながら楽しむ。しかし、突如として恐竜たちが暴走し、ジャイアンとスネ夫がティラノサウルスに襲われそうになる。間一髪で助かるが、異常事態が発生していることに気づく。中央惑星に戻ると、そこはすでに謎の寄生生命体「ヤドリ」によって支配されていた。ヤドリは人間に寄生して操る能力を持ち、未来人たちを次々と乗っ取っていた。ドラえもんの四次元ポケットも封じられ、のび太たちは絶体絶命の危機に陥る。車掌と再会したのび太たちは、列車型の宿舎を連結して脱出を試みるが、宇宙空間でヤドリに襲われ、禁断の星に不時着する。そこはかつて鉱山として栄えた星で、廃墟となった街や炭鉱が広がっていた。食料や武器は豊富に残されており、のび太たちはここで反撃の準備を整える。しかし、スネ夫に寄生されていたヤドリがのび太にも寄生し、のび太はしずかを襲いに行く。しずかは真空ソープでのび太を撃ち、正気に戻す。これにより、真空ソープがヤドリの弱点であることが判明する。列車が壊れて逃げ場がない中、ジャイアンは炭鉱に機関車があると聞き、危険を承知で探索に向かう。そこで行方不明だった未来人ドンとジェーンに遭遇するが、落盤で入口がふさがれてしまう。のび太たちはジャイアンの足跡を見つけ、彼が死んでしまったと絶望するが、壁抜けの術を使ってジャイアンたちが機関車とともに現れる。そして、ヤドリとの最終決戦。真空ソープで応戦するが、ヤドリ天帝が操る巨人には効かない。のび太は自ら囮となり、ヤドリ天帝を誘い出す。天帝がのび太に寄生しようとした瞬間、のび太は銃で天帝を撃ち抜く。天帝を失ったヤドリは宇宙へと退散し、危機は去る。未来人たちとも和解し、のび太たちは友情と成長を胸に、銀河超特急で地球へと帰還する。冒険の記憶は、彼らの心に深く刻まれたまま、物語は静かに幕を閉じる。