ゾンビタバコ

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ゾンビタバコゾンビ煙草ゾンビ・タバコとは、違法薬物を添加した電子タバコ用リキッドの通称で[1]、危険ドラッグ(脱法ドラッグ)の1種である[2]

概要[編集]

麻酔薬である「エトミデート」を混入させたリキッドを、電子タバコで吸入する危険ドラッグである[2]

「ゾンビタバコ」と通称されており、日本では2025年2月ごろから沖縄県の若年層での乱用が確認されており、同年5月26日より指定薬物指定の省令が施行されるに至っている。

後述のように「エトミデート」そのものは、覚醒剤の類ではなく医薬品であり、ゾンビタバコの場合も「笑気麻酔」として麻酔薬として流通させたことで、犯罪に対する意識を薄れさせているのも、広まった大きな要因とされる[2]

効能[編集]

  • 多幸感を得られる[2]
  • 筋弛緩が起きることで、自分の身体をコントロールできなくなり、「ゾンビ」のような状態になる[2]。ソンビタバコの名前の由来でもある[2]
  • 呼吸が困難になる[2]
  • 転倒しやすくなる[2]
    • 筋弛緩状態で転倒するため、大きな事故につながる可能性が高い[2]

法的背景[編集]

日本では電子タバコには原則的にコチンが含まれておらず、喫煙者が電子タバコを好まない理由の1つともなっている。このため、日本においては電子タバコの利用者は多くはない[1]

日本たばこ事業法では、ニコチンを含む葉タバコを使用したもが「タバコ製品」と定義されている[1]。そのため、葉タバコを使用しない電子タバコは「タバコ製品」ではない[1]。そのため、施設や行政の独自ルールや規制を除いては、受動喫煙対策を主眼とする改正健康増進法では電子タバコは規制の対象には含まれない[1]

電子タバコには、電気的に加熱することで使用リキッドを蒸気にし、その蒸気を吸い込む「ヴェイパー型」の製品がある[1]。日本以外では、ヴェイパー型電子タバコの使用リキッドに葉タバコではなく、化学的に合成したニコチンを使うニコチン・リキッドが販売れている[1]。このニコチン・リキッドを用いる電子タバコも葉タバコを用いていないため、日本の法律上ではタバコ製品ではないことから、財務省はニコチン・リキッドを使った電子タバコの日本国内での製造販売を許可してはいない[1]。日本では医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法、旧薬事法)により、ニコチンは医薬品とみなされているため、ニコチン・リキッドを使用する器具は医療機器扱いとなり、製造販売などには薬機法にもとづく許認可が必要である[1]

自己使用の範囲でニコチン・リキッドを少量個人輸入することは例外的に認められているのだが、日本国内での販売、譲渡、共同購入による分配、広告などは薬機法違反となり、ニコチン・リキッドを使う電子タバコは、ニコチンの吸入装置として医療機器扱いであるため、許認可のない販売は違法行為となるる[1]

以上のように、日本で電子タバコ用のニコチン・リキッドは正規の販売ルートでは流通していない[1]。しかし、日本に輸入されたものがVAPE店やインターネットなどでは「ニコリキ」の略称で販売されていることがあるが、これは違法行為であり摘発される例が散見される[1]

また、電子タバコのリキッドにニコチンが入っているか否かは、一見するだけでは不明である[1]。ニコチンではなく、リキッドに違法薬物を入れる事例も出始めており、これが本項の「ゾンビタバコ」となる[1]

エトミデート[編集]

ゾンビタバコのリキッドに用いられる違法薬物の1つに「エトミデート」が挙げられる[1]。エトミデートとは「エチル=1-(1-フェニルエチル)-1H-イミダゾール-5-カルボキシラート」の通称で、これは短時間作用性の鎮静剤である[1]。日本以外には、医療分野において内視鏡検査全身麻酔手術などの際の導入に使われることもあるが、日本では未承認の薬剤となる[1]。日本で承認されていない理由として、エトミデートに代わる導入剤が既に認可済みであり、エトミデートの有害性が十分に払拭されていことが挙げられる[1]

2025年5月16日厚生労働省の省令が出され、エトミデートが指定薬物として規制対象となった[1]。省令は同年5月26日に施行され、エトミデートとエトミデートを含む製品の製造、輸入、販売、所持、使用などが禁止されることになった[1]

規制薬物になった理由として、エトミデートを使用することによって、中枢神経系の興奮もしくは抑制、または幻覚の作用、および、これら作用の維持または強化の作用を持つ危険性が高く、かつ人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがあると認められたことが挙げられる[1]

各国の対応[編集]

医療用途でないエトミデートの乱用が問題となっているのは日本だけではない[1]

韓国
乱用が懸念される指定医薬品としてエトミデートが規制されるよう2020年6月に法改正された[1]
シンガポール
エトミデートを含んだ電子タバコ用リキッドの所持、販売、輸入をした者に最長2年の懲役および1万シンガポールドルの罰金が科せられるが、今後は使用についても懲役1年以上、販売、流通、輸入では最長20年の懲役などの罰則を施行する予定となっている[1]
香港
香港政府は、エトミデートを含んだ電子タバコ用リキッドを吸うと精神錯乱、意識喪失、痙攣、震え、皮膚の潰瘍、身体制御の喪失、自傷行為など「ゾンビのような」症状が出て健康に深刻な悪影響をおよぼすと啓発し始めており、香港でのエトミデートを含んだ電子タバコ用リキッドの使用や所持には、最長7年の懲役と100万香港ドルの罰金が科せられる[1]

日本の状況[編集]

日本においては、台湾、シンガポール、香港などから違法薬物を入れた電子タバコ用リキッドが沖縄県へ流入し、那覇市繁華街などで出回っている[1]。こういった電子タバコ用リキッドを使用したことで、倒れて頭部を強打する事故や救急搬送される事例が沖縄県では相次いでいる[1]

脚注[編集]