シュリーファー=ウォルフ変換
シュリーファー=ウォルフ変換とは、弱く相互作用する部分空間を分離することによって、有効なハミルトニアンを決定するために使用されるユニタリー変換である。摂動論を用いると、2つの部分空間間の相互作用が摂動の所望の次数まで消滅するように変換を構築できる。この変換はまた、系のハミルトニアンを相互作用の1次まで摂動的に対角化する。この点でシュリーファー=ウォルフ変換は2次摂動論の演算子版である。シュリーファー=ウォルフ変換は、有効な低エネルギーモデルを得るために、与えられた量子多体ハミルトニアンの高エネルギー励起を射影するためによく使われる。したがって、シュリーファー=ウォルフ変換は、量子多体ハミルトニアンの強結合領域を研究するための制御された摂動法を与える。
この変換の最初の導入は、一般的にロバート・シュリーファーとピーター・A・ウォルフによる1966年の論文に帰せられており、そのため彼らの名前が付けられいている。しかし、それ以前の使用例は1955年の論文にみられる。
導出[編集]
時間に依存しないハミルトニアン演算子の形式の量子系を考える。その形は以下の通り、
ここで、と既知の固有状態とそれに対応する固有値を持つ摂動のないハミルトニアンであり、は小さな摂動である。さらに、一般性を失うことなく、がの固有ベクトル基底に対して対角外であると仮定する。すなわち、全てのについてである。実際、これは常にの対角要素をに吸収することで得られ、それによってその固有値はとなる。
シュリーファー=ウォルフ変換は、摂動における1次近似の対角基底、すなわちを含む、いわゆる「装われた」基底においてハミルトニアンを表すユニタリー変換である。このユニタリー変換は、慣例的に次のように表される。
が小さい場合、変換の生成子も同様に小さくなる。よって、この変換はベイカー=キャンベル=ハウスドルフの公式を用いてに展開が可能である。
とを用いて表すと、この変換は次のようになる。
におけるハミルトニアンを1次対角化するのは、次のような生成元を選ぶことで実現できる。
がの固有ベクトル基底に対して対角外であるという仮定の下では、この方程式には常に一意な解が存在する。この過程を前述の変換に代入すると、次のようになる。
この式は、シュリーファー=ウォルフ変換はの標準型である。右辺の全ての演算子が、現在、1次相互作用によって「装われた」新しい基底で表されていることに注意されたい。