ゲーマーゲート集団嫌がらせ事件
ゲーマーゲート集団嫌がらせ事件(ゲーマーゲートしゅうだんいやがらせじけん、英語: Gamergate harassment campaign または GamerGate controversy)は、2014年8月から主に2015年にかけて発生した、ビデオゲーム業界におけるオンライン上の大規模な論争および嫌がらせ運動である。
ハッシュタグ「#Gamergate」を用いて展開され、ゲーム業界の女性やフェミニズム寄りの批評家を標的としたハラスメントが特徴とされる。一方で、支持者側は「ゲームジャーナリズムの倫理問題」を主張した。
明確な組織や指導者を持たない緩やかな運動であったため、その性質や評価については現在でも大きく意見が分かれている。
背景[編集]
ビデオゲーム業界は伝統的に男性中心の文化が強かったが、2010年代に入り、女性開発者や批評家の増加、LGBTQ+をテーマとしたインディーゲームの登場、多様性(diversity)を重視する動きが進展した。
これに対し、一部のゲーマーからは「従来のゲーム文化への干渉」や「ポリティカル・コレクトネスの押しつけ」とする反発が生じていた。
特に、2013年にゾーイ・クィンが開発したテキストベースのゲーム『Depression Quest』が批評家から高評価を受けたことに対し、「ゲームとしての正統性」を巡る議論が起き、後の論争の一因となった。
発端(2014年8月)[編集]
2014年8月、ゾーイ・クィンの元交際相手であるエロン・ジョニが公開したブログ記事(通称「The Zoe Post」)が直接の契機となった。
この投稿では、クィンが複数のゲームジャーナリストと関係を持ち、自身の作品の評価に影響を与えたとする疑惑が提示された。
しかし、この疑惑については後に、該当記者によるレビューは存在しなかった、主張を裏付ける明確な証拠は確認されなかったとされている。
それにもかかわらず、この情報は4chanやRedditなどで急速に拡散され、「Quinnspiracy」と呼ばれる陰謀論的言説が形成された。
その結果、クィンに対して、ドクシング(個人情報の公開)、レイプ脅迫、殺害予告
などの深刻な嫌がらせが行われ、本人は自宅を離れることを余儀なくされた。
運動の拡大[編集]
2014年8月27日、俳優のアダム・ボールドウィンがTwitter上でこの一連の動きを「#Gamergate」と呼称したことで、運動としての枠組みが形成された。
これにより、個人攻撃を含む一連の活動は「ゲームジャーナリズムの倫理を問う運動」として再定義されるようになった。
支持者(いわゆる「ゲーマーゲーター」)は主に以下を主張した。
- ゲームメディアと開発者の癒着(クローニズム)
- レビューの透明性および倫理性の欠如
- 「ゲーマー」アイデンティティの防衛
特に「Gamers are dead」と題された複数のメディア記事に対する反発が、運動の結束を強めたとされる。
一方で、多くのメディアや批評家は、この運動を女性嫌悪(ミソジニー)を伴う集団的ハラスメントと位置付けた。
主な標的と被害[編集]
本事件では複数の人物が標的となり、深刻な被害を受けた。
- ゾーイ・クィン - 事件の発端となった人物。継続的な嫌がらせや脅迫を受け、FBIが捜査を行った。
- アニータ・サーキージアン - フェミニスト批評家。講演に対する銃乱射予告などを受け、一部イベントが中止された。
- ブリアナ・ウー - ゲーム開発者。殺害予告により自宅を離れることを余儀なくされた。
また、これらに加えて
swatting(虚偽通報によるSAT出動)
組織的なSNS攻撃
などが確認されている。
これらの活動は4chan、8chan(現8kun)、Twitterなどを通じて拡散された。
両陣営の主張[編集]
支持者側[編集]
- ゲームジャーナリズムの倫理改善(Ethics in Games Journalism)
- メディアの偏向や利益相反の是正
- ハラスメントは一部の過激派によるものであるとの主張
- また、「NotYourShield」というハッシュタグを用い、女性や少数派の支持者の存在を強調した。
批判側[編集]
- 女性や少数派を標的とした組織的嫌がらせ
- 倫理問題は口実であり、実態は反フェミニズム運動であるとの指摘
- 企業への圧力や広告撤退(例:Intel)なども問題視された。
影響と余波[編集]
業界への影響[編集]
一部のゲームメディアにおいて倫理ガイドラインの見直しが行われ、利益相反の開示などが強化された。
同時に、ゲーム業界における多様性推進の動きが加速したとの見方もある。
社会・政治的影響[編集]
本事件は、後のインターネット政治運動に影響を与えたとされ、オルタナ右翼の台頭やオンライン上の文化戦争の前段階として位置付けられることがある。
また、スティーブ・バノンやミロ・ヤノポロスなどが関与したことも指摘されている。
法的対応[編集]
FBIが脅迫行為について捜査を行ったが、匿名性の高さから起訴に至る事例は限定的であった。
現在[編集]
事件から10年以上が経過した現在でも、DEI(多様性・公平性・包摂)を巡る議論や「wokeゲーム」論争として類似の対立が繰り返されている。
これらはしばしば「ゲーマーゲートの再来」と呼ばれることがある。