オルタナ右翼
オルタナ右翼(オルタナうよく、英: Alt-right)は、主にインターネット上で発展した政治思想・運動であり、アメリカの右派思想の一部に位置づけられる。名称は「Alternative Right(代替的右派)」の略である。主に4chanなどの匿名掲示板文化と結びついて拡散した。
従来の保守主義とは異なり、反移民、ナショナリズム、反リベラリズムなどを強く主張する傾向がある。また、インターネットミームや皮肉、風刺を多用する文化的特徴でも知られる。
概要[編集]
オルタナ右翼は2010年代に4chanの/pol/を中心に広まった政治運動である。
主に4chanや8chanなどの掲示板文化と結びつきながら拡散し、ネットミームやジョークを通じて政治的主張を広める特徴を持つ。
この言葉は2010年ごろにアメリカの政治評論家リチャード・スペンサーによって広められた。
オルタナ右翼はドナルド・トランプを支持する傾向が多くい。
またQアノンはオルタナ右翼の思想が軸となっている。
歴史[編集]
起源(2000年代後半まで)[編集]
オルタナ右翼の直接的な源流は、2000年代中盤から後半にかけてインターネット上に存在していた極右思想サークルに求められる。
特に影響が大きい思想として以下が挙げられる。
- 新反動主義(NRx / Dark Enlightenment)ニック・ランドらが提唱した思想で、民主主義や平等主義を批判し、技術資本主義や権威主義的秩序を志向する。
- 白人ナショナリズム 白人至上主義団体やクー・クラックス・クランなどに見られる古い白人ナショナリズムの系譜、およびパレオコンサーバティズムの急進的な派閥。
- ヨーロッパ新右翼 アラン・ド・ブノワなどが提唱したヌーヴェル・ドロワ(Nouvelle Droite)の思想で、「文化的差異の権利」などの概念を主張した。
これらの思想は、4chanや初期の極右ブログなどのインターネットコミュニティにおいて混合・再解釈され、後のオルタナ右翼の思想的土壌となった。
誕生と命名(2008年〜2010年頃)[編集]
2008年、アメリカの政治活動家リチャード・B・スペンサーが雑誌「Taki's Magazine」への寄稿において「Alternative Right」という言葉を使用したとされる。
この言葉は、ネオコンや宗教右派、自由市場至上主義などの主流保守主義に対抗する「もう一つの右翼」を意味する概念として提示された。
当初の運動は比較的小規模なオンラインコミュニティであり、白人アイデンティティ政治などを主張する知識人系ブログ文化の側面が強かった。
2010年頃には、スペンサーがNational Policy Instituteやオンライン雑誌Radix Journalなどを運営し始め、「Alt-Right」という名称が運動のブランドとして定着していった。
拡大(2013年〜2016年)[編集]
2013年から2015年にかけて、オルタナ右翼はインターネット上で急速に拡大した。 特に4chan、8chan、Reddit、Twitterなどのオンラインコミュニティが重要な拡散拠点となった。
この時期の特徴として、インターネット・ミームを政治的プロパガンダとして利用する手法が挙げられる。 カエルのキャラクター「Pepe the Frog」や「KEK」などのミームが象徴として使用された。
また、以下のような主張が共通のテーマとして広まった。
反フェミニズム
反多文化主義
反移民
「政治的正しさ(ポリティカル・コレクトネス)」への反対
この時期にはゲーマーゲート集団嫌がらせ事件も影響を与え、オンライン上の右派コミュニティの結束を強めたと指摘されている。
2015年から2016年の2016年アメリカ合衆国大統領選挙では、ドナルド・トランプの選挙運動と並行する形でオルタナ右翼の存在が広く知られるようになった。
さらにスティーブ・バノンが率いるニュースサイトBreitbart Newsがオルタナ右翼と関係の深い媒体として注目された。
2016年8月にはヒラリー・クリントンが演説の中で「オルタナ右翼」を名指しで批判し、結果的にこの言葉が一般メディアでも広く知られることとなった。
ピークとイメージの固定(2017年)[編集]
2017年8月、アメリカ・バージニア州シャーロッツビルで「Unite the Right rally」と呼ばれる集会が開催された。
この集会には白人至上主義者、ネオナチ、オルタナ右翼などが参加したが、デモの最中に車両突入事件が発生し、1名が死亡したことで世界的な非難を受けた。
この事件以降、メディアにおいて「オルタナ右翼=ネオナチと近い存在」というイメージが強く定着したとされる。
また、同時期にリチャード・B・スペンサーが行った「Hail Trump! Hail victory!」とする演説とナチス式敬礼の映像が拡散され、運動の評判に大きな影響を与えた。
衰退と変容(2018年以降)[編集]
2018年以降、主要なインターネットプラットフォーム(Twitter、YouTube、PayPalなど)によるアカウント停止や資金決済の遮断など、いわゆるデプラットフォーム化が進んだ。
その結果、オルタナ右翼は組織的な運動としては大きく弱体化したとされる。
リチャード・B・スペンサー自身も影響力を大きく失い、2020年にはジョー・バイデン支持を示す発言を行うなど、以前とは異なる姿勢を見せた。
一方で、Andrew Anglinが運営するサイトThe Daily Stormerなど、一部のコミュニティはTorなどの匿名ネットワークを利用しながら活動を続けている。
批判[編集]
オルタナ右翼は極右思想や白人至上主義との関連を指摘されることが多く、多くの政治家や研究者から批判されている。