カーエアコン

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カーエアコンとは自動車に装備される空調機器である。室内の調温の他、フロントガラスの曇りや霜取り機能も備えている。

概要[編集]

カーエアコンはエンジンの動力を利用してコンプレッサを駆動し、冷媒を循環させることで冷却効果を得る冷房機構と、エンジン冷却水の熱を用いた暖房機構とが組み合わされている。最もシンプルなマニュアルエアコンは風量と温度をすべて手動で設定するものであるが、設定した温度になるように風量や温度を自動で調整するオートエアコンや、吹き出し口まで自動で制御するフルオートエアコンも一般的である。一部の自動車では運転席と助手席の独立制御が可能なデュアルゾーン式も普及している。

かつては快適装備の一種とされていたが、高温多湿環境によるガラス内面の曇りや寒冷地における霜取り機能(デフォッガ・デフロスタ)など安全装備としての一面も持つ。また、近年の猛暑日や豪雪においては室内を適温に保ち、熱中症や低体温症を防ぐ重要な装備でもある。

その他[編集]

ガソリンエンジン車の場合、エンジン回転からコンプレッサを駆動する都合上馬力のロスが発生するため、燃費が悪くなる傾向がある。また、エンジンの負荷が高まることからエンスト防止のためにアイドリング回転数を上げる制御がされることもあり、トルクコンバータを使用したオートマチックトランスミッションCVTの場合はクリープ現象が強化される。これらは小排気量の車ほど顕著になる。なお、コンプレッサを駆動しない温風のみ(除湿しない場合)はエンジンからの排熱を利用するため、燃費への影響は僅かである。

電気自動車の場合は電動コンプレッサを使用するため、直接的にバッテリーの電力を使用するためダイレクトに影響する。また、ガソリンエンジンのようにエンジンの排熱を利用できないため、電力を消費して空気を温めることもあり、カーエアコンの使用による影響はガソリンエンジン車より大きいという一面もある[1]

冷媒について、初期の頃はR-12と呼ばれるフロン類ジクロロジフルオロメタン)が使用されていたが、フロン類のオゾン層への影響が確認されると代替フロンとしてHFC-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)が登場。CFC-12と同様不燃性であることから広く使用された。しかし、今度は地球温暖化係数が高いという理由でHFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)へ切り替えられるようになった。一方HFO-1234yfは環境にはいいものの、劣化しやすい上に冷えない、その上価格が高いなどかなり不評である。特に値段に対してはガス単価にして15倍の差があるともいわれている[2]。また、可燃性を有することから不燃性であったHFC-134aと異なり、高圧ガス保安法による対応が必要となるなど勝手がかなり異なる冷媒である[3]

モータースポーツ[編集]

モータースポーツにおいて、エアコンの作動による馬力ロスと搭載重量の都合上、そのほとんどがエアコンレスの自動車が用いられることが多い。それでも近年の猛暑などの影響は無視できるものではなく、ただでさえレーシングカーの車内は高温になりやすいため、WECなどの耐久レースSUPER GTなどではエアコンの搭載が義務化・推奨されているカテゴリも増えている[注 1][4]

なお、カーエアコンが一般的となった現代においてもモータースポーツへの参加を前提としたモデルの場合、エアコンレスモデルが設定されていることがある。

脚注[編集]

  1. https://www.webcartop.jp/2023/03/1073331/エンジンという熱源がないから暖房すると電費がキツイEV! そもそもヒーターの温風を生み出す「2つの方法」とは - WEB CARTOP
  2. https://motor-fan.jp/article/252202/ そのお値段15倍! だーれも知らない、カーエアコン冷媒「HFO-1234yf」への変更とその高額ぶり【MFクルマなんでもラウンジ】 No.6 - MotorFan
  3. HFO-1234yf をカーエアコン用冷媒として使用する自動車の取扱いについて (周知・注意喚起) - 経済産業省 自動車課
  4. https://www.jsports.co.jp/motor/supergt/explanation/race/23/ ドライバーを冷やせ! - J SPORTS

注釈[編集]

  1. SUPER GTの場合はヘルメットやシートにピンポイントで冷風を送る小型のものである