ウクライナ鉄道

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Укрзалізниця
Ukrainian Railways
Ukrzaliznytsya.png
略称 УЗ/UZ
本社所在地 ウクライナ国旗.png ウクライナ
キーウ
設立 1991年
業種 運輸業
事業内容 鉄道事業
代表者 イェウヘン・リャシュチェンコ
所有者 ウクライナ政府
外部リンク https://www.uz.gov.ua

ウクライナ鉄道(ウクライナ語:Укрзалізниця(ウクルザリズニチャ))とはウクライナで鉄道事業を行う国有鉄道会社である。インフラの管理と鉄道輸送を行う。

歴史[編集]

2020年まで[編集]

ウクライナ鉄道はソ連崩壊後、現在のウクライナ領土におけるソビエト鉄道の法的後継者として設立された。歴史的な理由から、輸送ネットワークは当初、主に南北または北東から南西の方向に向けられていた。2014年3月、ロシアクリミア占領し、併合した。ウクライナ東部での紛争と2014年のロシアによるクリミアの併合は、影響を受けた地域の鉄道交通に厳しい規制をもたらした。一部のインフラが破壊され、クリミアとウクライナ中核地域間の鉄道交通が分断された。スロバキアハンガリールーマニアなどの隣国との接続が重要になり、ベラルーシおよびロシアとの接続は重要性が低下し、場合によっては国境区間が廃止された。

ロシアの侵攻[編集]

2022年2月24日ロシア軍ウクライナ領内に侵攻を開始した。最初の2か月でウクライナの人口の約10%にあたる約400万人が東部から西部に移動した。戦争開始当初、難民が危険地帯から脱出しやすいように、移動に鉄道切符が必要なことを撤廃し運賃を無料にした。この運賃無料化は2022年3月末に廃止された。

ウクライナ鉄道は援助物資の輸送だけでなく、西側諸国との国際旅客輸送においても極めて重要である。訪問のためウクライナを訪れた西側の政治家の多くは特別列車を利用してきた。最初の特別列車の運行は2022年3月15日ポーランドチェコスロバキアの首相を乗せた。その後2022年4月7日イギリスボリス・ジョンソン2023年2月19日アメリカジョー・バイデンが続いた。

ロシア軍司令部は開戦から2か月後、攻撃の目的を変更した。鉄道インフラを攻撃しウクライナ軍の進撃と西側諸国からの武器輸送を妨害した。2022年4月8日にロシア軍がクラマトルスク駅への攻撃を行い、列車で非難する予定だった民間人57人が駅構内で死亡した。ウクライナ鉄道のインフラの被害は線路よりも駅舎などの構造物に影響が多い。ウクライナ西部の戦略的に重要なリヴィウ=ストルイ=チョプ線ベスキドトンネルに対するロシアの空爆では、精度が高いとされるロシアのミサイルが標的を外したため、鉄道交通はわずかに混乱したにとどまった。1週間に及ぶマリウポリ包囲戦ではインフラと多くの車両が被害を受けた。

2022年4月25日にウクライナ中部及び西部の駅のベルディチウコロステンコーヴェルクラースネジェメリンカズドルブニウを標的とした攻撃が行われた。開戦から約2か月のでウクライナ全体のインフラの30%が破壊され、1000億ユーロの損害が発生したといわれる。攻撃開始直後、ウクライナ軍はロシア軍が進撃に用いる可能性のある鉄道橋を爆破した。2023年5月3日ヘルソン州に対するロシア軍の攻撃で、準備されていたリヴィウ行きの列車の2両が大きな損害を受けた。しかし乗客はまだ列車に乗っていなかった。2023年5月初旬までに、この攻撃で鉄道職員381人が死亡し、929人が負傷したと言われている。

2022年8月22日にモルドバ国境間のバサラベアスカ-ベレシュネ-アルツィズ間の路線が1999年以来で欧州連合の輸送力増強のため運行を再開した。また2022年11月9日にはシゲトゥ・マルマツィエイ=フランキーウシク間で国境輸送が再開された。

2023年2月21日にウクライナ鉄道は鉄道におけるソ連時代の名残を全て撤去することを目的とした3年計画を実施すると発表した。これにはロシア語が描かれているものは全て削除(切符などは英語に置き換え)、ソビエト時代の機関や人物を記念する駅名などを全て置き換え、キロポストkm駅などはモスクワ基準からキーウ基準に置き換えることなどが含まれる。モスクワ視点からの南線はハリコフ線に変更され、南西線は中央線に変更された。

今後[編集]

ウクライナが今後EUに加盟することを目指していることを受けてウクライナの主要都市間を高速鉄道で、中央ヨーロッパ西ヨーロッパの鉄道網と接続する、あるいは全線で標準軌化することが計画される。しかし推定費用が1000億ユーロであることを加味すると後者は構想段階でとどまるか。主要路線や優先地域に限定される可能性が高い。そうであればスペインのような鉄道網が形成される可能性がある。

統計情報[編集]

  • 線路長:22,300km
  • 電化区間:9978km
  • 軌間 - 1520mm(一部狭軌750mm、標準軌網との国境付近では1435mmが混在。内陸まで拡張の予定)
  • 駅数:1648駅
  • 踏切数:約4000
  • 客車:174,939両
  • 電気機関車:1796両
  • ディーゼル機関車:2918両
  • 電車:1443編成
  • 気動車:186両
  • 従業員:375,900人
  • 旅客輸送量:年間5万人
  • 貨物輸送量:年間3億t

旅客列車は基本的に2地点間n運行であるため、乗客は乗り換えを待つ必要はほとんどない。車両の乗り換えが必要な場合は、余裕を持った接続時間が確保されており、時には数時間かかることもある。そのため、ウクライナ鉄道の定時運行率は極めて高く、平均速度が時速80kmを超えることはほとんない。

支社[編集]

ウクライナ鉄道はいくつかの支社に分かれて構成される。2014年以降に政治的理由により部分的にしか機能していない。その結果、いくつかの支社は再編された。

  • リヴィウ支社 - リヴィウに拠点を置く。
  • オデッサ支社 - オデッサに拠点を置く。
  • ピウデンナ支社 - ハルキウに拠点を置く。
  • 南西支社 - キーウに拠点を置く。
  • プリドニプロ支社 - ドニプロに拠点を置く。クリミアの鉄道はここから分離。
  • ドネツク支社 - 戦争により、ハルキウとドニプロに分割された。

国内輸送[編集]

旅客輸送において、キーウを中心とした各都市への接続が重要である。しかし、ウクライナ東部の戦闘で、これらの接続は一部失われ、一部では完全に廃止されている。

長距離列車は完全に予約制で、夜行列車であることが多い。最大4つのグレードがあり、主に寝台車とクシェット車で構成される。

国際交通[編集]

西へ向かう国際列車は、異なる軌間を使用しているため運行は複雑となっている。特に軌間という壁があり、ウクライナ側はロシア軌間(1520mm)、西側諸国は標準軌(1435mm)となっている。そのため国境駅では台車交換場が設けられている。この台車交換などの手間を省くためにウクライナ国内に1435mmの高速線を建設し交通を簡素化する計画がある。

国際列車は基本的に夜行列車で、予約が必要である。ポーランドへ向かう一部の接続をのぞき、その他の列車はUIC規格の寝台車を使用する。現在ではスロバキア、ハンガリー、ポーランドからの地域列車なども国境間を結ぶ列車がある。

車両[編集]

ウクライナ鉄道の車両

外部リンク[編集]

関連項目[編集]