海上保安庁 巡視船 PLH-33 れいめい
れいめい(英語: Reimei)は、海上保安庁のヘリコプター2機搭載型巡視船(PLH)である。分類上はれいめい型巡視船の1番船にあたる。船番はPLH-33。
概要[編集]
れいめいは、尖閣諸島周辺海域における中国公船の常態的な領海侵入や、漁船に対する妨害行動の増加に対応するため、海上保安体制強化に関する方針に基づき建造された。特に、従来のヘリコプター搭載巡視船(PLH)よりも高速性、航続距離、洋上でのヘリコプター運用能力、指揮・管制能力を向上させることを目指して設計された。本船は、海上保安庁初の電気推進船として注目され、燃費効率の向上と静粛性の確保に寄与している。
設計[編集]
れいめい型巡視船は、既存のしきしま型巡視船(PLH-31、PLH-32)の運用実績を踏まえつつ、最新の技術を導入して建造された。船型は長船首楼型を採用し、高い凌波性と広大なヘリコプター甲板を確保している。
船体[編集]
船体は高張力鋼を多用することで軽量化を図り、高速性能と安定性を両立させている。全長は約150メートル、最大幅は約20メートル、総トン数は約7,200トン。これは海上保安庁の巡視船としては最大級である。船尾にはヘリコプター2機を同時に運用可能な広大なヘリコプター甲板と、格納庫が設けられている。格納庫には、SH-60Kなどの大型ヘリコプター2機を収容可能である。
機関[編集]
主機関は、ガスタービンエンジンと電気モーターを組み合わせた電気推進方式を採用している。ガスタービンエンジンは高速航行時に使用され、低速域や停泊時には電気モーターを使用することで、燃料消費量を抑え、静粛性を高めている。この方式により、従来の巡視船と比較して環境負荷の低減にも貢献している。最大速力は25ノット以上とされ、広大な海域を迅速に移動することが可能である。
搭載航空機[編集]
搭載航空機は、通常、AW139またはS-76D型ヘリコプターを2機搭載する。これらのヘリコプターは、広範囲な捜索救助活動、不審船への立ち入り検査、物資輸送など多岐にわたる任務に対応する。
装備[編集]
武装として、ボフォースMk.4 57mm機関砲 1基、JM61-RFS 20mm多銃身機関砲 2基を装備する。これらは、不審船への警告射撃や、必要に応じた制圧射撃に用いられる。また、遠隔操作可能な放水銃も搭載しており、火災発生時の消火活動や、他船への威嚇・制圧にも使用される。
その他、高性能なレーダーシステム、ソナー、赤外線暗視装置などの監視・情報収集機器を多数搭載しており、広範囲な海域の状況を詳細に把握することが可能である。さらに、最新の衛星通信システムを装備し、陸上とのリアルタイムの情報共有や、他の巡視船艇、航空機との連携を強化している。
能力[編集]
れいめいは、長期間の洋上活動が可能な高い航続距離と居住性を有している。これにより、遠隔地の海域における警備救難活動や、災害発生時の緊急支援活動など、多様な任務に対応できる。また、医療施設や通信施設も充実しており、乗組員の健康管理や、緊急時の情報連絡体制も整備されている。
艦歴[編集]
れいめいは、2017年度計画で建造が決定された。 2018年2月15日にジャパン マリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で起工。 2019年3月8日に進水し、命名される。 2020年2月19日に海上保安庁に引き渡され、就役した。 就役後、第十管区海上保安本部鹿児島海上保安部に配属され、主に東シナ海及び南西諸島周辺海域の警備救難任務に従事している。
同型艦[編集]
れいめい型巡視船は、れいめいを含め、複数の同型艦が建造されている。
- PLH-34 あかつき
- PLH-35 わかば
豆知識[編集]
- 「れいめい」という船名は、「夜明け」や「新しい時代の始まり」を意味する「黎明」に由来しており、海上保安庁の新たな時代を切り拓く旗艦としての期待が込められている。
- 本船の建造には、最新の環境技術が多数導入されており、従来の同規模の巡視船と比較して、燃料消費量や温室効果ガス排出量の削減に貢献している。
- 洋上でのヘリコプター運用能力は非常に高く、悪天候下でも安定した離着艦が可能であり、海上保安庁の航空能力を大幅に向上させている。
関連項目[編集]
参考書籍[編集]
- 海人社『世界の艦船』
- 日本船舶技術研究協会『船舶技術研究』
- 海上保安庁『海上保安庁の概要』