〈引き立て役倶楽部〉の不快な事件

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〈引き立て役倶楽部〉の不快な事件』(原題:The Unpleasantness at the Stooges Club)は、1953年にW・ハイデンフェルトが発表した短編推理小説である。一発ネタバカトリックが有名であり、作品名そのものよりトリックのほうが知られている。

概要[編集]

ワトソン博士やヘイスティングズ大尉など、有名ミステリの「引き立て役(いわゆるワトソン役)」が集まる倶楽部での奇怪な事件を描いている。

非常に強固な密室が登場するが、これは(いちおう伏字)被害者が殺されたあと建物ごと新たに立てられたものである。しかも、被害者はかのヒトラーであり、密室の謎に目を向けさせることで被害者の素性から目を逸らさせる、というとんでもない動機がセットで付いている。

日本では、角川書店『有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー』で読むことができる。

タイトルについて[編集]

ドロシー・L・セイヤーズの第4長編 『ベローナ・クラブの不愉快な事件(The Unpleasantness at the Bellona Club)』(1928年)をパロディしたものである。

邦題[編集]

邦題には若干の表記ゆれがあり、「引き立て役」の部分が「引立役」「引立て役」で紹介されたりと、イマイチ呼称は統一されていない。

古い翻訳では『“わき役クラブ”の不快な事件』という題名で紹介されていることもある。

後継作[編集]

  • 津原泰水の短編「初めての密室」(2012年発表・短編集『ルピナス探偵団の憂愁』に収録)では、本作に近い発想のトリックが使われている。ただし、トリックそのものは前半で早々と明かされ、なぜそんな奇怪な工作をしたのかという「ホワイダニット」に焦点が当てられている。
  • 2012年発表の某国内作品(伏せ字)中山七里『要介護探偵の冒険』でも同じトリックが使われている。ミステリ評論家の千街晶之は「奇想天外な密室トリックそのものより、その実現可能性を綿密に検討した点こそが読みどころ」と評している。
  • 法月綸太郎の短編集『ノックス・マシン』には「引き立て役倶楽部の陰謀」(2013年)というパロディ作品が収録されている。元作品と同じく、ワトソンやヘイスティングなどが集う奇妙な倶楽部が登場する。伝統的なミステリの流儀に反して「引き立て役」の存在がないがしろにされているアガサ・クリスティの『アクロイド殺し』『そして誰もいなくなった』に対して、引き立て役たちが憤慨するという内容である。