VF-1 バルキリー
VF-1 バルキリーは、スタジオぬえがデザインし、主にテレビアニメ『超時空要塞マクロス』および関連作品に登場する架空の可変戦闘機である。劇中では、異星人との戦争において人類側の主力兵器として活躍する。
概要[編集]
VF-1 バルキリーは、地球統合政府がオーバーテクノロジーの解析によって開発した初の量産型可変戦闘機である。従来の航空機の概念を覆す三段変形機構を持ち、戦闘機形態の「ファイター」、鳥人形態の「ガウォーク」、人型ロボット形態の「バトロイド」へと瞬時に変形する能力を持つ。これにより、宇宙空間から大気圏内、さらには地上戦まで、あらゆる戦域に対応できる汎用性を実現した。
その開発は、20世紀末に地球に落下した異星文明の宇宙戦艦「ASS-1」(のちのSDF-1 マクロス)の解析によって得られた「反応炉」や「可変機構」といった画期的な技術が基になっている。特に、ピンポイントバリアや全方位バリアといった防御システム、そして小型化された熱核反応タービンエンジンは、VF-1の高性能を支える重要な要素となった。
VF-1の愛称である「バルキリー」は、北欧神話に登場するワルキューレに由来する。これは、戦場を駆けるその姿が、まるで戦乙女のようであることから名付けられたとされる。
開発経緯[編集]
西暦1999年、地球に落下した巨大宇宙船ASS-1の残骸から、地球統合政府は未知のテクノロジー「オーバーテクノロジー」を発見する。この技術を解析・応用することで、人類は飛躍的な科学技術の発展を遂げる。異星文明との遭遇に備え、地球統合軍は新たな兵器体系の構築に着手。その中で、敵の大型兵器に対抗しうる画期的な人型兵器の開発が急務とされた。
当初、デストロイドと呼ばれる地上戦用人型兵器が開発されたが、これらは航空能力に乏しく、宇宙空間での運用も困難であった。そこで、航空機としての能力と人型兵器としての汎用性を兼ね備えた「可変戦闘機」の概念が浮上する。新中州重工とストーンウェル社が共同で開発を請け負い、河森正治(当時スタジオぬえ所属)らを中心にデザインが進められた。
試作機YF-1は、2008年に初飛行に成功。その後、数々の試験と改良を経て、2009年には量産型であるVF-1がロールアウトする。しかし、本格的な運用が開始された直後に第一次星間大戦が勃発し、VF-1は実戦においてその真価を発揮することとなる。
機体諸元[編集]
VF-1は、一般的な戦闘機をはるかに凌駕する性能を持つ。その最大の特徴は、大気圏内から宇宙空間まで対応可能な汎用性と、単機で複数の形態に変形できることである。
- 全長(ファイター時):約14.2m
- 全幅(ファイター時):約14.7m
- 全高(ファイター時):約3.8m
- 最大速度(大気圏内):マッハ5以上
- 最大速度(宇宙空間):不明(亜光速に近い速度での巡航が可能とされる)
- 武装:
- GU-11 55mmガトリングガンポッド:主武装。毎分1200発の55mm弾を発射可能。
- AIM-200A アムラーム級長射程空対空ミサイル:主翼下ハードポイントに搭載。
- AMM-1 ミサイル:小型ミサイル。
- 各種オプション装備:スーパーパック、ストライクパック、アーマードパックなど。
バリエーション[編集]
VF-1には、性能や役割に応じて複数のバリエーションが存在する。
- VF-1A:最も基本的な量産型。頭部には単眼式の光学センサーを持つ。
- VF-1J:VF-1Aの改良型で、主に部隊指揮官機として運用される。頭部に2門のレーザー機銃が追加され、火力が向上している。
- VF-1S:VF-1シリーズの最高性能機。生産数が少なく、熟練のエースパイロットに優先的に配備される。頭部に4門のレーザー機銃を持ち、エンジン出力も強化されている。
- VF-1D:複座型の練習機。教官と訓練生が搭乗し、操縦訓練に使用される。
- VE-1 エリントシーカー:早期警戒・電子戦機。背部に大型のレドームを装備し、情報収集能力に優れる。
- VT-1 オストリッチ:非武装の複座型練習機。大型の増槽を装備している。
- VA-1 インターセプター:攻撃機型。機首下面にビーム砲を装備し、対地攻撃能力を強化している。
劇中での活躍[編集]
VF-1は、『超時空要塞マクロス』本編において、主人公一条輝をはじめとする統合宇宙軍のパイロットたちが搭乗し、ゼントラーディ軍との激戦を戦い抜く。その画期的な変形機構と高い戦闘能力は、幾度となく人類を危機から救ってきた。特に、宇宙空間でのドッグファイトや、市街地でのバトロイド形態による肉弾戦など、その多様な運用形態が描かれ、多くの視聴者を魅了した。
また、劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』では、より洗練されたメカニックデザインと、圧倒的な映像美で描かれ、VF-1の魅力を再確認させた。その後も、『マクロスプラス』や『マクロスF』など、後続のマクロスシリーズ作品にも、その系譜を受け継ぐ可変戦闘機が登場しており、VF-1がシリーズの基礎を築いた存在であることが示されている。
影響[編集]
VF-1 バルキリーは、SFメカデザインの歴史においてエポックメイキングな存在である。それまでのロボットアニメに登場するロボットとは一線を画し、「リアルロボット」というジャンルを確立する上で大きな影響を与えた。可変機構を持つ戦闘機というアイデアは、その後の様々なアニメ作品やSF作品に影響を与え、トランスフォーマーなどの玩具展開にも影響を及ぼした。
また、その精密な変形機構は、数多くのプラモデルやフィギュアとして商品化され、コレクターアイテムとしても高い人気を誇る。VF-1のデザインは、単なるアニメのメカデザインに留まらず、後の航空機やロボットのデザインにも少なからず影響を与えたと言われている。
豆知識[編集]
- VF-1のデザインは、F-14 トムキャットをモチーフにしていると言われている。主翼の可変翼機構などにその名残が見られる。
- 劇中では、一条輝のVF-1Jのパーソナルカラーは白と赤だが、これは彼の性格や成長を反映していると言われることがある。
- VF-1は、アニメ作品以外にも、ゲームや小説など、多数のメディアミックス作品に登場している。
関連項目[編集]
参考書籍[編集]
- 『マクロス・パーフェクトメモリー』(みのり書房、1983年)
- 『THIS IS ANIMATION ザ・マクロス』(小学館、1983年)
- 『メカニックデザイナー 大河原邦男展 図録』(角川書店、2015年)