TEMPEST (浅野いにおの漫画)

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TEMPEST」(テンペスト)は、浅野いにおによる短編漫画。

ビッグコミックスペリオール』(小学館)の2018年17号(2018年8月10日発売)に読み切り掲載された。単行本『浅野いにお短編集 ばけものれっちゃん/きのこたけのこ』に収録されている。

高齢者社会問題を描いた藤子・F・不二雄のSF短編「定年退食」をリスペクトした作品であり、単行本あとがきにて、浅野自身も「定年退食」に触れている。また、浅野自身は、問題警鐘として執筆した意識はなく、ごく自然に「こういうのありそう」という感じで描いたと述べている。

あらすじ[編集]

歯止めの効かない日本の高齢化・少子化への対策として、時の総理大臣・角田は若年層への手当を厚くすると共に85歳以上の「最後期高齢者」に対し以下のような政策を実施した。

  • 日本各地に「高齢者特区」を建設し、介護医療の合理化を促進。
  • 85歳以上の「最後期高齢者」は「人権カード」を国に返還した上に、高齢者特区に入居しなければならない。これは任意ではなく強制である。
  • 高齢者特区に居住することでかかる生活費や医療費は無償(国から支払われる)。

高齢者特区入居者は満90歳の誕生日までに以下のいずれかを選択せねばならない。

  • 「老人検定」に合格する。満90歳の日に実施される筆記試験。これに500問中500問正解して合格した者は、社会復帰後、社会の規範として生活を送る。
  • 「自死サービス」を受ける。入居後は満90歳の日の前日までいつでも受けられる。薬剤により無痛で死ぬ。遺族への相続税免除など相続が有利になることもあり、入居者の9割が選択している。
  • 上記の2つのどちらも選ばなかった場合、老人検定に不合格の場合は、全ての人権を失った状態で高齢者特区を放逐される。一切の行政サービスを受けられず、金銭の所持や公共交通機関の使用も一切認められない。

施行から20年ほどが経ち、日本社会は出産率も向上、若年による多産が一般となっていた。

元・新聞記者は85歳の誕生日を機会に高齢者特区へ入居。老人検定合格を目指す。特区には元総理の角田も入居しており、角田は自分の政策を正しい物だったと確信していた。

検定模試は何度も満点で合格を疑われなかった橘であったが、90歳誕生日の老人検定において「85歳以降の高齢者は原則人間ではない」、「最後期高齢者特区制度に賛成である」という類の設問に、模試の正答通りの「YES」を答えず、不合格となる。

衣類もない全裸で特区を放逐された橘。公園のベンチに座っていると、人権カードを持たない橘のベンチ利用は許可されないと、警邏中の搭乗型ロボットに警告を受けたが、橘は動かなかった。ロボットは橘を射殺する。

その搭乗型ロボットに乗っていたのは、かつて老人検定を合格し、社会復帰した女性であった。

外部リンク[編集]