L-410 ターボレット
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L-410 ターボレット(Let L-410 Turbolet)は、チェコスロバキアの航空機メーカーであるレト・クノヴィツェ(現: レト・エアクラフト)が開発・製造した双発ターボプロップの汎用機である。短距離離着陸(STOL)性能に優れ、未舗装の飛行場でも運用できる堅牢な設計が特徴であり、主に旅客輸送、貨物輸送、軍事輸送、空撮などの幅広い用途で世界中で使用されている。
開発[編集]
L-410 ターボレットの開発は、1960年代半ばにソビエト連邦のアエロフロートが、既存のAn-2型機を代替する小型旅客機の需要を提示したことに端を発する。アエロフロートは、短距離路線の輸送能力向上と、運用コストの削減を目的としていた。これに対し、チェコスロバキアのレト社は、M-601 ターボプロップエンジンを搭載する新たな機体の開発に着手した。
最初の試作機であるXL-410は、1969年4月16日に初飛行を行った。開発当初から、厳しい環境下での運用を想定しており、堅牢な降着装置と高い揚力を生み出す主翼設計が特徴であった。初期生産型はL-410Aとして知られ、主にソビエト連邦および東側諸国へ輸出された。
設計[編集]
L-410 ターボレットは、高翼配置の主翼を持つ双発ターボプロップ機である。機体構造は主に軽合金製で、高い信頼性と整備性を兼ね備えている。
- 主翼: 高アスペクト比の直線翼で、高い揚力効率と低速時の安定性を提供する。翼には大面積のフラップが装備されており、短距離離着陸性能に寄与している。
- エンジン: 初期型はウォルター M601ターボプロップエンジンを搭載。後期の改良型では、より高出力で信頼性の高いゼネラル・エレクトリック GE H80エンジンなどが採用されている。各エンジンは3枚または5枚羽根のプロペラを駆動する。
- 降着装置: 引き込み式の首輪式降着装置を採用しており、荒れた滑走路での運用を考慮した頑丈な設計となっている。
- 胴体: 円形断面の胴体は、最大19名の乗客または最大約1,800kgの貨物を収容できる。後部には大型の貨物ドアが設けられているモデルもあり、貨物積載時の利便性が高い。
バリエーション[編集]
L-410 ターボレットは、長年にわたり様々な改良型や派生型が開発されてきた。
- L-410A: 初期生産型。ウォルター M601Aエンジンを搭載。
- L-410M: M601Bエンジンを搭載した改良型。ソビエト連邦軍向けに開発された。
- L-410UVPA: 短距離離着陸性能を向上させたモデル。胴体後部にスタビライザーが追加された。
- L-410UVP-E: 最も広く普及したモデルの一つ。M601Eエンジンを搭載し、性能と信頼性が向上した。機首の形状が変更され、プロペラは5枚羽根となった。最大離陸重量が増加し、航続距離も延長された。
- L-410NG: 最新の派生型。ゼネラル・エレクトリック GE H80-200エンジンを搭載し、燃料容量の増加、アビオニクスの近代化、コックピットのデジタル化が図られている。航続距離と積載能力が大幅に向上している。
運用[編集]
L-410 ターボレットは、その堅牢な設計と運用コストの低さから、世界中の様々な組織で広く運用されてきた。
- 民間航空: アエロフロートをはじめとする多くの航空会社で短距離旅客輸送や貨物輸送に利用されている。特に、インフラが未整備な地域での運用に適しているため、発展途上国での需要が高い。
- 軍事: 多くの国の空軍で軽輸送機、空挺部隊の降下訓練、偵察機、電子戦機などとして使用されている。その汎用性の高さから、様々な特殊任務にも対応できる。
- 特殊用途: 空中撮影、測量、医療搬送、パラシュート降下訓練など、多岐にわたる特殊用途に改造されて使用されている。
現在でも、多くのL-410 ターボレットが世界中で現役で飛行しており、その耐久性と信頼性は高く評価されている。
仕様 (L-410UVP-E)[編集]
- 乗員: 2名
- 乗客: 19名
- 全長: 14.42 m (47 ft 4 in)
- 全幅: 19.47 m (63 ft 11 in)
- 全高: 5.83 m (19 ft 2 in)
- 翼面積: 35.1 m² (378 sq ft)
- 空虚重量: 4,200 kg (9,259 lb)
- 最大離陸重量: 6,600 kg (14,550 lb)
- エンジン: ウォルター M601E ターボプロップエンジン × 2基
- 出力: 各 560 kW (750 hp)
- 最大速度: 365 km/h (227 mph, 197 kn)
- 巡航速度: 310 km/h (190 mph, 170 kn)
- 航続距離: 1,500 km (930 mi, 810 nmi)
- 実用上昇限度: 6,300 m (20,700 ft)
- 上昇率: 7.5 m/s (1,480 ft/min)
豆知識[編集]
- L-410 ターボレットは、かつて東欧諸国の航空輸送を支えた「空のトラック」とも呼ばれていました。
- 雪上や氷上での運用を可能にするスキー型降着装置を装着したタイプも存在します。
- レト社は、L-410の成功を受けて、より大型のL-610を開発しましたが、こちらはL-410ほどの成功を収めることはできませんでした。
関連項目[編集]
参考書籍[編集]
- 『世界の航空機年鑑』イカロス出版
- 『航空ファン』文林堂