軽油
軽油(けいゆ、英:Diesel)とは、原油を蒸留して作られる石油製品のうち、セ氏約250℃~350℃で加熱して取り出したもの。 自動車、トラック、バス、気動車などの燃料に使われている。
概要[編集]
ディーゼルエンジンの燃料として使用され、ガソリンや灯油などと同様の第4類危険物として取り扱われる可燃性の液体である[注 1]。
軽油の引火点は45℃前後であり、常温では燃焼するのに必要な蒸気を出さないことからガソリンに比べて引火性が低いとされている。しかし、霧状になると表面積が急増することで引火しやすくなるほか、自己発火を始める発火点がガソリンよりも低い250度前後である。ディーゼルエンジンはその性質を利用し、圧縮して高温になった空気に霧状で軽油を噴射することでスパークプラグによらない燃焼が可能となっている。
ガソリンが無鉛化したように、軽油に関しても環境保護のために硫黄分を減らす脱硫化という措置が取られている。これにより、特に自動車向けの軽油については硫黄分が軽油の質量比0.001%(10ppm)以下になるように処理がされている[注 2]。一方で燃料系の潤滑として硫黄分が必要とされていたため、代替として軽油には潤滑剤が添加されるようになった[注 3]。
なお、ガソリンにおけるオクタン価に相当する指標としてセタン価というものが用いられる。オクタン価が高いほど着火しにくいのに対し、セタン価は高いほうが着火しやすいという違いがある。一方でどちらも高いほうがノッキングを起こしにくいことには変わりがない。
「軽油」の語源は、比重の重い重油に対して、「軽い」という意味でつけられた。決して軽自動車用のための燃料ではない。
種類[編集]
日本においては主に5種類の軽油が販売されており、用途・環境により使い分けがなされている。これらはJIS規格により定められており、主に流動点[注 4]や目詰まり点[注 5]を元とした分類となっている。
JIS K 2204において特1号、1号、2号、3号、特3号に分類され、特1号が最も流動点や目詰まり点が高く(5℃以下/規定なし)、特3号が最も低くなっている(-30℃以下/-19℃以下)。一般的には夏季は特1号から1号が、冬季には2号が、豪雪地帯などの寒冷地の冬季には3号か特3号が販売されるとされている。これらは販売時期に合わせてガソリンスタンドなどが切り換えており、一般ユーザが意識的に使い分けることは一部を除いてあまりない。
その他[編集]
軽油より安価な灯油や重油を経由に混ぜ、燃料費を安くしようとする脱税行為がある。単に混ぜるだけではなく灯油や重油に手を加える密造軽油や灯油をそのまま使うような例もあり、これらはすべて不正軽油とされて摘発の対象となるものである。特に密造軽油の場合はその処理の過程で硫酸ピッチと呼ばれる産業廃棄物が生成され、その処分に困った事業者が不法投棄をする例も多いことから社会問題化している。