自治体の観光開発
失敗の共通原因[編集]
地方自治体が企画した観光開発は、採算割れで失敗するケースが目立つ。それらの事例では、次のような問題が重なっていることが多い。
「作れば人が来る」という発想[編集]
- 大型施設や道の駅、博物館、温泉施設などを建設すること自体が目的化する。
- 開業時は話題になっても、リピーターが定着しない。
- 観光客数の予測が楽観的になりがち。
- 需要予測が甘い
- 年間来場者数や売上を過大評価する。
- 民間なら慎重に検討する市場調査が不十分なことがある。
- 人口減少や高齢化、競合施設の増加を十分に織り込めていない。
- 「観光資源」と「観光商品」は違う。美しい自然や歴史的建造物があっても、アクセスが悪い。
- 滞在時間が短い
- 消費につながる体験が少ない
このような場合、お金を落としてもらえない。例えば絶景だけでは「30分見て帰る」観光地になりがちである。
維持費を軽視する[編集]
建設費は補助金で賄えても、人件費、修繕費、光熱費、更新費は毎年発生する。特に大規模施設ほど固定費が重くなる。
行政と民間の得意分野の違い[編集]
行政は、公平性、地域振興、雇用維持、を重視する。一方、民間は、利益、顧客満足、リピーター獲得 を最優先する。行政主導では採算より公共性を優先するため、経営が甘くなることがある。
責任の所在が曖昧[編集]
プロジェクトは、首長、議会、コンサルタント、設計会社など多くの主体が関わるため、計画が外れても責任が分散しやすい構造がある。
補助金の影響[編集]
国や都道府県の補助金には「建設費には使えるが運営費には使えない」という制度が少なくない。 そのため、「補助金があるから建てよう」となりやすく、開業後の収益性が後回しになることがある。
地域全体の観光戦略が弱い[編集]
成功する観光地は、宿泊、飲食、交通、体験、イベントが一体になっている。 一方、失敗例では施設だけを作り、地域全体で観光客を回遊させる仕組みが不足していることがある。
成功している自治体との違い[編集]
成功例では、行政は「施設を運営する主体」というより、「民間が事業をしやすい環境を整える主体」として動く傾向がある。例えば、
- 規制緩和やインフラ整備
- 地域ブランドの発信
- 民間事業者との連携
- データに基づく観光マーケティング
- 小規模に始めて成果を見ながら拡大する段階的な投資
といった取り組みが見られる。
要するに、観光開発が失敗しやすい背景には、「建設」をゴールにしてしまい、「運営」「収益」「顧客体験」を十分に重視しない計画や制度設計がある。観光は施設そのものではなく、「何度も訪れたくなる体験」と、それを継続的に提供・改善できる経営体制があって初めて持続可能な事業になりやすいと言える。
失敗の例[編集]
国設最上川スキー場(山形県戸沢村)は、最終的には経営破綻して閉鎖されている。経緯をまとめると、
1980年に第三セクター方式で開業。開業当初はスキーブームもあり、一時は年間売上が1億円を超える時期もあった。しかし1990年代に入ると、全国的なスキー人口の減少、暖冬・少雪の影響、他の大型スキー場との競争などにより利用者が減少した。その結果、経営が悪化し、2000年に破綻・閉鎖した。
「赤字だったのか」という点については、公開資料では毎年度の損益額までは確認できないが、破綻に至った経緯からみて、閉鎖前には採算が取れない状態が続いていたと考えられる。少なくとも、最終的には資産不足のため原状回復工事も実施できず、国有林の復旧義務を果たせない状況だった。
このスキー場は、地方自治体主導の観光開発が抱える課題を示す事例として挙げられることがある。開業当初は需要があったものの、スキーブームの終息という市場環境の変化に対応できず、固定費の大きい施設を維持し続けることが難しくなった。これは必ずしも計画自体だけの問題ではなく、社会全体のレジャー需要の変化という外部要因も大きく影響したケースと言える。