終止
終止とは、音楽用語で、コード進行における、段落の終わりのことである。楽節で、おおむね4小節から8小節の長さ、偶数小節の範囲内の終わりには、この終止が置かれている。終止の種類はいくつかの種類があり、終止感はさまざまなものがある。終止における言葉のニュアンスもつけて説明している。
全終止[編集]
ダイアトニックコードの5番目の三和音(V)またはその四和音(V7)から1番目の三和音(I)に進行して終止するもの。ドミナントコードからトニックコードに移行すること。両方のコードはいずれも基本形で、転回形でなく、代理和音は含まない。完全な終止感が得られ、古典的な楽曲の最後に用いられる。偶数小節の範囲内の終わりに用いられる。
例えば、ハ長調ならG〔G7〕→C、イ短調ならE〔E7〕→Amというコード進行となる。コード進行の中で特に重要なもので、最も多く使われる終止で、解決感・安定感があり、調性がはっきりしていて、目立ちやすく、刺激的でインパクトのある強い終止感を得ることができる。全終止は、長調と短調の比較をしたときに、明暗対比(コントラスト)が大きいのが特徴。これにより、調性感をはっきりさせる。楽曲の部分や全体を締めくくる印象を与える。「ドミナント終止」、「完全終止」とも呼ばれる。全終止のうち、ドミナントが7thを含んだ四和音形の場合は、「ドミナントモーション」と呼ぶ。
ハ長調のドミナント終止で、G7→Cの場合については、G7の部分は、基本形が全終止になる。ドミナントだけは第1転回形でも全終止になりうる。G7の第1転回形〔G7/B〕はハ長調の導音が最低音・ベースに置かれているので、これも同じドミナント終止の機能になり、全終止になりうる。しかし、G7の第2転回形〔G7/D〕や第3転回形〔G7/F〕にすると、全終止にはならない。それは、G7の第2転回形 〔G7/D〕の場合、ハ長調のV(ソ)とVII(シ)を省くと、Dmのコードに聴こえ、次にCへ行くとDm→Cのコード進行で、代理和音を含んだ変終止=サブドミナント終止になり、ハ長調で終わった感じがしないからである。全終止になるのは、ドミナントコードの最低音は、音階のⅤ音(属音)とⅦ音(導音)の2種類のみである。ドミナントコードはどちらかと言えば、基本形の方が、よりストレートなドミナント終止が得られる。Vの和音→Iの和音のコード進行のように、バスが4度上行、及び5度下行して平行移動することを、強進行ともいう。バスが4度上行、5度下行する働きがコードの変化を力強く感じさせる。強進行は、コード進行で一番安定する進行である。
強進行及び全終止は、曲のあちこちでどこにでも出てくる。
8小節や16小節といった、偶数小節の範囲内のうち、曲の途中はもとより、全終止を最後に用いることにより、コード進行に区切りがあり、安定したまとまりが可能となる。
半終止[編集]
楽曲にまとまりや区切りをつけるために、和音の進行がドミナントに落ち着き、ドミナントで一時停止されるもの。フレーズがドミナントで終結する箇所。半終止では、Vは基本形のみを用い、転回形は不可能である。主に16小節を用いた、偶数小節の範囲内のうち、曲の途中、前半の終わりの8小節で用いられる。半終止後のコードの連結は、ドミナントの次のコードは、トニック以外のコードに行く場合もある。
変終止[編集]
ダイアトニックコードの4番目の三和音から1番目の三和音(I)に移行して終止するもの。サブドミナントコードからトニックコードに移行するもの。サブドミナントは、代理和音を含むこともある。全終止の終止感を持たず、一時的な終止、柔らかく落ち着いた終止の印象を与える。変格終止。曲の終わり、サビの終わりに用いられる。
偽終止[編集]
ドミナントの次のコードが、主和音以外であるトニックの代理和音へ進行すること。全終止ほどの安定感が無く、終止をはぐらかされたような印象を与える。ドミナントの次に、ダイアトニックコードの6番目のコードに移行するもの。中途半端な終わり方を感じさせる。