「よみもの:解析力学」の版間の差分

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* よくわかる解析力学(前野昌弘 著)
* よくわかる解析力学(前野昌弘 著)
* [http://homepage2.nifty.com/eman/analytic/contents.html EMANの解析力学](広江克彦 著)
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2015-05-05T16:50:15時点における版

解析力学(かいせきりきがく、analytical mechanics)は、主に直交座標を用いて記述されたニュートン力学数学的に洗練し、様々な状況を簡単に数式で表すためにオイラー、ラグランジュ、ハミルトン等によって作られた力学の体系である。古典力学の集大成であり、解析力学的な考え方は統計力学量子力学相対性理論などの現代物理学に引き継がれている。

ここはそんな解析力学を一から導出してしまおう、という趣旨で書いてみた記事である。最終的には、ここにわかりやすい教科書のようなものが出来上がればいいな。

序論

一般化座標と一般化速度の定義

ある座標系に存在する全ての質点の位置座標をずらーっと並べて書いた集合をと表し、これを一般化座標と呼ぶ(たとえば、3次元直交座標系にN個の質点がある場合の成分の数は3N個となる)。

一般化座標の各成分を時間で微分したものの集合、すなわち一般化速度と呼ぶ。

このとき、各およびはそれぞれ時刻の関数であるから、それぞれ

と表せる。

とりあえず、ある時刻の状態と呼び、の関数形を過程と呼ぶことにする。

保存力とポテンシャル

直交座標系において、位置と時刻の関数を用いて、力と表せるとき、この力を保存力と呼び、

そしてこのときのポテンシャルと呼ぶ。

また、保存力でない力非保存力と呼ぶ

ラグランジュ形式

解析力学の基礎には、物理学に様々な形で登場する変分原理の一つであるハミルトンの原理が登場する。変分原理は他にも、光に適用できるフェルマーの原理や、電磁気学におけるディリクレの原理などがある。このような考え方は量子力学の基礎にもなっている。ここでは、ニュートン力学とハミルトンの原理から、ニュートンの運動方程式よりも適用範囲の広いラグランジュ方程式を導出する。

ハミルトンの原理

非保存力が存在しない系が状態A(時刻:)から状態B(時刻:)に変化するとき、

とおき、いまのところ謎の関数に含まれるの各成分を、微小なだけ変化させるとき、の各成分も微小にだけ変化することになる。

ただし、状態A、状態Bそれぞれのときのはすでに決めたため、である。

このとき、の変化量は

である。さらに、このときのの変化量は

である。以上の2つの式より

である。 このとき、"となるような過程のみが実現する"と仮定する。

そして、この仮定をハミルトンの原理と呼び、作用と呼び、

ハミルトンの原理をみたすラグランジアンと呼ぶ。

ラグランジュ方程式

さて、のある1成分のみをだけ微小変化させるとき、も微小にだけ微小変化することになる。よって、このときは、

だけ変化することになる。よって、

となる。よって、

である。ここで第2項にのみ部分積分を用いると、

となる。第1項と第3項をまとめ、第2項を展開すると、

となる。ここでだったから、後半部分が0となり、

となる。ここで、がどんな関数形だったとしてもとなるためには

となっていればよい。この式をラグランジュ方程式と呼ぶ。

ラグランジュ方程式は、ハミルトンの原理と同じことを言っている式である。

ラグランジアンの具体的な形

直交座標を用いてある系の運動エネルギーの合計を表すと、

となる。ここでは、各に対応する質量である。この式から、

である。また、と表せることから、

である。また、と表せることから、

である。よって

となる。以上のことから、

である。ここで、とおき、これを一般化運動量と呼ぶ。すると、

となる。両辺を時間で微分すると、

となる。ここで、各は時間変化しないから、

となる。ここで、時間微分の部分を展開してシグマを2つに分けると、

また、ニュートン力学の運動方程式より、

である。以上のことから、

である。よって

である。ここで、とおき、これを一般化力と呼ぶ。すると、

となる。ここで、力が保存力と非保存力で構成されているとき、

構文解析に失敗 (SVG(ブラウザのプラグインで MathML を有効にすることができます): サーバー「https://ja.wikipedia.org/api/rest_v1/」から無効な応答 ("Math extension cannot connect to Restbase."):): F_{i}=\sum _{{j}}{\frac {\partial {x}_{j}}{\partial {q}_{i}}}(-{\frac {\partial U}{\partial x_{j}}}+s_{j})

であるから

となり

となる。ここで、非保存力による一般化力と表すと、

となる。以上のことから、

である。第1項と第3項をまとめると、

となる。ここで、一般化運動量の定義から

である。また、と表せるから、

である。以上のことから、

となり、よって

である。ここで、非保存力がすべて0のとき、非保存力の一般化力もすべて0であるから、

となる。これはラグランジュ方程式そのものであるから、はラグランジアンであるといえる。

そこで、とおくと、

であり、であったから、

であり、

であることがわかる。

ハミルトン形式

ニュートン力学の適用範囲を広げたラグランジュ形式であったが、ここでは、ラグランジュ方程式からさらに適用範囲を広げたハミルトンの正準方程式を導出する。その際、ルジャンドル変換という数学的テクニックが暗に用いられているが、そんなものは知らなくても理解できる。

ハミルトンの正準方程式

以下では、非保存力による一般化力がない場合について考える。このとき、

とおき、このハミルトニアンと呼ぶ。すると、の微小変化は、

であり、よって

となる。ここで、前節より

だったから、

であり、

である。よって

である。

また、ハミルトニアンの定義より、

であり、また

であったから

となる。以上で



の2式が導けた。この2式をハミルトンの正準方程式と呼ぶ。

参考文献