民事崩れ
民事崩れ(みんじくずれ)とは、俗語で民事的な事件の被害者が自らの民事事件の解決に利用するために起こす刑事告訴。
概容[編集]
例えば詐欺などの経済犯罪においては、刑事事件・民事事件ともに成立するが、もっぱら被害者が加害者から被害を取り戻すことや被害を回収できなかった場合の復讐を主な目的として刑事告訴を行う場合がある。この場合は、加害者が刑事罰を恐れ和解に持ち込み、結果後に刑事告訴が取り下げられることがある。警察、検察などの捜査機関は被害者がこうした民事的な事件を解決、補佐する手段として刑事告訴を行っているのではないかと疑い、捜査に及び腰になることが多い。
特に、刑事告訴に先駆けて民事裁判を行った場合などは、被害金額が余りにも巨額だったり他にも複数被害者がいたりするような大きな事件でもない限り、滅多に事件として取り上げないのが実情である。警察が事件として取り上げても、検察が起訴便宜主義をもって不起訴処分にすることもある。起訴されないため、多くの被害者が泣き寝入りをし、犯罪者が放置されている現状がある。また、民事裁判の結果、差し押さえができなかった場合などに債権取立てに暴力団を介入させる余地を与えており、社会問題化している。
被害届・告訴状・告発状の不受理[編集]
被害届や告訴状や告発状の不受理が全国的に問題になっている。被害届や告訴状や告発状は記載必須事項が全て記載されていれば必ず受理しなければいけない(犯罪捜査規範第61条1項・第63条)のだが、「民事不介入」などの難癖をつけて受理しないケースは多い。大津市中2いじめ自殺事件などはその代表例である。警察に捜査義務が発生する告訴状や告発状は被害届以上に受理しない傾向がある。
警察が被害届や告訴状や告発状を受理しない理由の1つとして、加害者の逮捕を目的としない、加害者との示談交渉や和解交渉のカードとしての提出が多いことが挙げられる。要は、「被害届(もしくは告訴状や告発状)を提出した。取り下げて欲しかったら○○円で示談(もしくは和解)しろ」「被害届(もしくは告訴状や告発状)を提出する予定である。提出されたくなかったら○○円で示談(もしくは和解)しろ」「逮捕されたら会社を懲戒解雇になり、以後ブラック企業しか勤められなくなるぞ」などと加害者を脅し、被害者側の有利な内容で示談や和解を迫るのである。このような手法を民事崩れと呼び、被害者側の弁護士が行ってくる事が多い。このような民事崩れは全国的に見られ、警察はこういった示談交渉や和解交渉目的での被害届や告訴状や告発状を非常に嫌っている。
なお、警察組織内部では民事崩れは恐喝罪にあたると判断されており、民事崩れを行うと逆に被害者が加害者から訴えられたり、警察に逮捕される可能性を孕んでいる[要出典]。
被害者の対応[編集]
現行の日本では刑事犯罪が増加しているため、小さな事案にまで手が回らない実情が、こうした理不尽な扱いを後押ししている。捜査機関が被害届や告訴状や告発状を出しても動かないときは、定期的に捜査の進捗状況を確認する、定期的に捜査を催促する、担当者の名前を正しく聞いておくなどの対応を取るとよい。警察は人事異動が多いため、移動の際は必ず新しい担当者から連絡をもらえるよう依頼しておく(人事異動があった際には、引継ぎがなされず、調書を一から作り直すケースが多い)。
警察から被害届や告訴状や告発状を受理してもらえない場合は、検察への告訴状や告発状の提出を検討する、都道府県の公安委員会や警察本部や警察組織内部の監査部署や都道府県庁(都道府県知事)や主要政党などへ通報する、地方議会議員(特に革新系議員)や新聞記者やテレビ局の報道部などのマスコミや弁護士同伴で提出するなどの対策が考えられる。検察で不起訴となった場合は、検察審査会に相談する。
加害者の対応[編集]
一般的に民事崩れを行うのは被害者側の弁護士がほとんどであり、加害者側は弁護士をつけていないことがほとんどである。加害者側が弁護士をつければ、対応を弁護士に一任できるので、民事崩れは止むことがほとんどである。ただし、特に検挙の可能性の高い犯罪の場合、民事崩れは止んでも、刑事事件化は逃れられない事も多い。